遠征3日目はイキウメから。この再演も楽しみだったんですよね。
イキウメの再演は以前の公演を再現するのではなくて、物語が
成長・成熟したって思う事が多いので。

獣の柱「獣の柱」シアタートラム C列(2列目)
14:00開演、16:15終演
作・演出:前川知大
出演:浜田信也、安井順平、盛隆二、森下創、大窪人衛、村川絵梨、松岡依都美、薬丸翔、東野絢香、市川しんぺー
【あらすじ】
あらゆる都市に降り注いだ巨大な柱。柱は人々にあきれるほどの祝福を与え、静寂のうちに支配した。世界は大きく変わった_。
ある日、アマチュア天文家の二階堂は、小さな隕石を拾います。その隕石は、見る者に恐ろしいほどの幸福感をもたらしました。夢中にし、思考を奪い、自分で目をそらすことはできません。一人で見たら最後、死んでしまうまで見続けることになるのです。そして、隕石が落ちた後、空からは巨大な柱が降り注ぎました。それは人々にあきれるほどの祝福を与え、静寂のうちに人々を支配しました。柱は人間に何を課し、何から解放したのか_。
 


この公演を前回観たのは2013年。「獣の柱」は私の中では
随分最近の作品だと思っていたけど、もう6年も前ですか。
イキウメとの付き合いも、今年で10周年でした。
ここで改めて、前回の上演時の感想を読み返してみました。
(「獣の柱」は2008年の「瞬きさせない宇宙の幸福」に加筆
したものなのでどれを「初演」と言っていいのか悩む・・)
面白かったけど、宗教論など理解しづらい部分があったのも確か
だったのですが、頑張って感想書いてたんだな、私・・と
当時の自分を褒めたい(←最近の自分の体たらくぶりと言ったら!)。




今回は、前回観た時と基本は同じなのですが、かなり内容が変わった
という印象です。厳密に言うと「変わった」というよりも「練られた」
だと思うし、フォーカスする部分が変わったという感じでしょうか。

退団してしまった伊勢さん、岩本さん、加茂さんは別として
それ以外については、キャストは概ね前回の公演と同じです。
そして「瞬きさせない宇宙の幸福」の部分もあまり変わっては
いなかったと思います。

そもそも今回は設定の時代が違う。前回は「柱が落ちて約90年後」
だったけど、今回は「柱が落ちて50年後」のお話です。
「柱を見ないように気を付けて生活」しているようで、(ここにも
落ちたんだ・・)前回のように「柱」を「御柱様」として宗教の
ご本尊のようにして扱い、生活の一部になってしまってる状態には
至っていないらしい。
また、大窪一衛クンが50年後の世界では山田輝夫(安井順平)の
「孫」になっていました。(前回は、安井さん自身が山田輝夫の
「ひ孫」を演じていた)

今回の変更点の1つは、佐久間一郎(市川しんぺー)とその相棒の
堀田蘭(松岡依都美)の存在です。前回なら、成志さんが演じていた
ポジションですが、設定が全然違う。
堀田蘭は不治の病でもないし、柱を見て自殺したりもしない。
二人に何かの意思がある訳でもなく、指示されたことに従うだけの
ただのふてぶてしい小悪党の二人になっていました。
この二人にはあまりストーリー性を持たせないようにしている感じ。
(成志さんと岩本さんの夫婦のエピソード、好きだったんだけどな)
しかしこの二人のふてぶてしさったら・・・!←褒め言葉。
松岡さんなんて、母親役を演じる時とは雰囲気が全然違っていて
凄い!!って思いますね。

前回は柱を落としたのは誰か、は全く分からなかったし、
「柱の大使」も「で、何者?」はあまり語られなかったのですが
今回は二階堂望(浜田信也)が消えたのは「ラプチャー」であり
その後出現したのは「受肉の存在」と明示されていますので、かなり
キリスト教系に寄った回答が提示されているような気がします。
ただ、地球には意思があり、その意思を「神様」と呼ぶ、と
二階堂桜が言っていたりするので、必ずしも「キリスト教」の事を
言いたいわけではなく、もっと大きな「意思」みたいなものを
現したいんだろうな。

でも、山田和夫の話す、彼の祖父母(山田輝夫と二階堂桜)の
最後が切なくてねぇ・・。認知症の症状が出てきた妻を連れて
一緒に柱を見て、そのまま亡くなって(安楽死というか自殺と言うか)
鳥や獣に亡骸を荒らされたまま、というのがね・・。
柱に屈せず、自分の力で生きて行けるようなコミュニティづくりと
そのノウハウの展開で多くの人を救ってきた人の最後が、柱による
自殺だなんて、皮肉すぎる(涙)。

「見える」子たちを権力者が利用しようとするのは前回と同じだけど
前回ほど、その事にフォーカスされてはいません。
山田輝夫が新しいコミュニティを作るために、どんどん新しい土地に
出向いて行ったのと、孫である「見える」山田和夫が街を出る
という対比がより分かりやすくなっていた気がしますね。

あと、何度か出てきたのは「コミュニケーション」と言う単語。
コミュニケーションを取るためのツールだったとか?
オープニングも、エンディングも、「受肉の存在」となった
二階堂望達が、人々に語りかけていますしね。

前回には居なかった新キャラ登場、補足になるエピソードが追加され
(山田輝夫が天文部に入った理由や、二階堂桜が「7人の天使」の
エピソードを知っている=キリスト教に詳しい理由など)人物背景の設定、
キャラ変などがあって、更に整ったお話になった、より希望が感じられる
作品になったと思います。
前回が「袋入りの銘菓」だとしたら、今回は「化粧箱に入った菓子」って
感じの違いかな、とも思います(すみません、下手な例えで)。

村川さんは何となく伊勢さんと雰囲気の似ている方で、違和感なく
観る事が出来ました。東野絢香さんは「CO.JP」で拝見しているものの
ほぼ新人さんとのこと。とても新人とは思えない、不思議な存在感が
ある女優さんで、今後が楽しみです。

最近はイキウメ以外の劇団にキャーキャー言っていましたが、やっぱり
イキウメ好きだわーと思った1本です。 
そしてイキウメの「再演」はいつも面白い。
前から言ってますが、いつか「見えざるモノの生き残り」も再演しないかな。