3日間の遠征のラストはこちらです。この公演の上演期間が
短いので、この公演のためにこの日程を選んだようなものです。
直前に観ていたシアタートラムでの舞台の終演が16:20近く。
こちらの開演が17:00、自由席だから16:30頃には
劇場に行っていないといけないんじゃないか?と思うと
時間が無い!三軒茶屋→下北沢は物理的な距離は近いはずだけど
交通機関が不便なのよね・・・。

山の声「山の声 ― ある登山者の追想 ― オリジナルバージョン」
Geki地下Liberty 2列目 17:00開演、18:40終演
作・演出:大竹野正典
出演:戎屋海老、村尾オサム(遊劇隊)
【あらすじ】
昭和初期、まだ登山が金持ちか大学生のものだったころ、社会人登山家としての道を開拓し、単独行で雪山に挑戦し続けたのが加藤文太郎。どんな場合でも周到な計画のもとに単独行した加藤が吉田登美久と共に槍ヶ岳に登り、消息を絶ったのが昭和11年の厳冬。2人の男の最後の登山を、加藤の手記「単独行」を下敷きに描いた二人芝居。


 結局、三軒茶屋でたまたま客を降ろした直後のタクシーを捕まえ、
下北沢まで行ってもらいました。歩行者天国で道が通れなくなって
いた為、遠回りになりましたが、ギリギリ17:30過ぎに到着。
・・・そうしたしたら、開場が16:40だったよ(爆)。
いいんです、間に合いましたから・・・。

GEKI地下リバティは初めての劇場です。
しかし、下北沢には小劇場が一杯あるなぁ・・。
本多劇場グループはOFF・OFFシアターと小劇場B1で「アガリ」かな(笑)。





これ、前日に観た「埒もなく汚れなく」を観ると、なぜ
この作品が同時上演されているかが分かるんですよね。
(チケットを取った段階では分からなかったんですが)
「埒もなく汚れなく」は作者の大竹野さんの半生が描かれており
この「山の声」を書き上げるまでが描かれているんです。
だから、絶対に「埒もなく汚れなく」を観たら、この「山の声」
に興味を持っていたはず。実際に、連続で観ている方も
少なからずいらっしゃったようです。これ、片方だけしか観れ
なかったら、ストレスが溜まってたわ。

舞台は2人がずーっと出ずっぱり。
セットらしいセットもない会話劇です。

実際に単独登山で有名だった加藤文太郎の最後の登山について
描かれた作品です。
前日に観た「埒もなく汚れなく」でこの作品の結末も、この作品を
書いた作家の想いのようなものも既に知った上での観劇なのですが
それが「面白くない」と思う訳ではなく、知っていたからこそ
切なく感じる、そんな舞台でした。
元々単独登山を得意としていた二人だったからこそ、弱みが見せられず
1人だったら頂上アタックしないような、そんな天気だったのに
「諦めようか」が言い出せず、結果的に遭難してしまう。

実直な語り口の加藤文太郎。「不死身の加藤」と言われたことも
あったらしく、登山の世界では有名な方だったんだと思われる。
でも奢っているような所も無く、「高級なスポーツ」と言われた登山を
身の丈に合う装備で行う、信念の人だったんだと思われます。
またそういうパーソナリティを形成するに影響を与えたと思われる
登山中の出来事なども吐露していて、「天才」という印象ではないですね。
どちらかと言うと、自分の無力さを認識している様子については
大竹野さん自身がオーバーラップして見えたりもしました。

劇場に向かう階段の壁には、登山用語が貼り出されていたけども
ゆっくり読むことも出来ず、かといってレジメが渡される訳でもない。
会話だけで登山の様子がとうとうと語られる時間が多いんですが
必ずしも会話に出てくる地名や単語を全て理解している訳ではない
ため、たまに「置いて行かれた」と思う時間はあったよね。

でも最後、雪がどんどん積もって来て、「もうダメかもしれない」と
観ている私たちが思う中でも、諦めない文太郎の姿には思わず
観入ってしまいました。
今の商業演劇では、恐ろしく大量の紙ふぶきを降らせる舞台もあるので
あれぐらいの雪では何とも思わなくなってしまった私ですが、当時は
インパクトがあったんだろうなぁ・・・。
そしてまた改めて、大竹野さんがご存命だったら、これ以降どんな作品を
世の中に出してくれていたんだろう・・と、想いを馳せた私でした。

当初はタイミング的に「山の声」は見送らざるを得ないかも・・と
思っていたのですが、諦めなくてよかった。
舞台全体が「古い」と感じたのは、時代設定の為だけなんだろうか。