これは観たい!と思っていたのですが、組み合わせが難しくて。
なにせ歌舞伎は開演が早いので、マチネに観る舞台の上演時間が
分からないので・・(結果、マチネが4時間越えだったので
マチソワにしなくて正解でした)
ならば、先週の土曜出勤の振休を使って金曜日に観る事にしたのでした。

六月大歌舞伎「六月大歌舞伎」夜の部 歌舞伎座 3階3列
16:30開演、20:15終演
三谷かぶき
月光露針路日本(つきあかりめざすふるさと)
原作:みなもと太郎  作・演出:三谷幸喜
【あらすじ】
鎖国により外国との交流が厳しく制限される江戸時代後期。大黒屋の息子光太夫は、商船神昌丸の船頭(ふながしら)として伊勢を出帆。しかし江戸に向かう途中で激しい嵐に見舞われ、大海原を漂流することとなる。神昌丸には17人の乗組員たち。船頭の光太夫はくじけそうになる乗組員を必死で奮い立たせ、再び故郷の伊勢へ戻るため陸地を探し求め、8カ月漂流したのち、はようやく発見した陸地に上陸した。ところがそこはロシア領のアリューシャン列島アムチトカ島。異国の言葉と文化に戸惑いながらも、島での生活を始め、日本への帰国の許しを得るため、ロシアの大地を奥へ奥へと進みながらも、どんどん減ってしまう仲間たち。異国から来た日本人である光太夫たちに対して、行く先々でさまざまな人の助けを得て、ようやく光太夫はサンクトペテルブルグにて、女帝エカテリーナに謁見することが叶い…。



随分前に上演していた「決闘!高田馬場」はチケットが取れなくて
生で観る事が叶わなかったのですが、映像で観ても面白くて
三谷さんが歌舞伎をやったら、次こそは観に行くんだ!と
思っていたんです。座組みも豪華ですしね。

それにしても、最近は歌舞伎座の1階で観る事が無くなったな(笑)。
(今回は取れなかったわけではなく、敢えての3等A席でした)





単純にとても面白かったです。
「面白いと思う三谷さんの作品」のカテゴリー入り認定です(笑)。
もともと「風雲児たち」も知りませんでしたので、まっさらな状態で
観たのですが、これ・・殆ど実話なんですね。凄い話だな。

もう、オープニングから「先生」役の尾上松也さん、全開です(笑)。
この日「質問ありますか」で最初に当てあられた「生徒」の質問は
「今日のお昼ご飯は何でしたか」。答えは「肉を600グラム。若いから」。
次の質問は私のすぐ近く、3階席の女性が「今日の夜は何を食べますか」(笑)。
なかなかナイスな質問で(笑)。ちなみに答えは「サラダ。若いから」って。
こういう所で笑いが取れるって、アドリブ力も試されるし、誰でも出来る
って訳じゃないんだろうな〜。
こんな感じで盛り上げて、コール&レスポンスなんかもあったりして、
客席のわくわく感も増した状態で開演です。

一幕は割と説明セリフも多く、それぞれのキャラクターの自己紹介的な
シーンで終わっていきますので、(面白くない訳じゃないが)ちょっと
「このペースで最後まで行ったら、辛いな」と思う所もありました。
席も遠いものですから(笑)、「これ、誰だろう」と思っているうちに
何となく終わった、と言う感じかな。
でも、やはり幸四郎さん、愛之助さん、猿之助さん、彌十郎さん
染五郎さん辺りはすぐにわかりますし、アテ書きされていると思われ
キャラは皆濃いですが自然でもあります。

歌舞伎座でドレス?とチラシを見た時には思いましたけど、
何だかんだと皆さんキレイでお似合いになるし(笑)、ちゃんと
歌舞伎らしさも残っていて、下手に映像などを使ったりしない所も
とても好みでした。
何といっても、ハスキー犬たちがリアルで驚いたし(笑)、白樺の中を
犬そりで走っていく時の演出(白樺がどんどん後ろに行く)も
「なるほど」と思えて、面白かったんですよね。
薄い布が一階席を覆っていくシーンも、上から見ていて綺麗だし
「新しいタイプの水被り席だな」なんて思ったりもしました。
(そうそう、前のPARCO歌舞伎の時も演出が面白かったわ。)
笑えるシーンも多くて、2幕以降はどんどん楽しくなっていきます。

あ、磯吉(染五郎)が語学の勉強中に光太郎(幸四郎)に
突然キレて本を投げつけるシーンで、笑った、笑った(笑)。
なかなか良い間と思い切りでしたね。
染五郎丈は美形だけど大人しい、という印象が強かったので
なおさら意外に思えたのかもしれませんが。

基本的には「面白い」作品なんだけど、それだけじゃないのがいい。

誰よりも日本に帰りたいと言っていた新蔵がロシアに残る決意を
した理由も切ないし、強がっていた庄蔵が最後に「帰りたい」と
本音を吐露するシーンも、そんな庄蔵を置いて帰国する光太郎も
皆が切ない。蝦夷富士を見て、日本の土地を踏まずに亡くなった
藤助もね。(現実では北海道に上陸はしたものの江戸には戻る
事が出来なかったらしい)

しょぼい船で8カ月近くも漂流し、遠く離れたロシア地で暮らし
10年も経って帰国するという、フィクションにも思える作品。
ある意味突飛もない話だからこそ、歌舞伎との相性が良いのかも。

こういう作品があるから、三谷さんの作品は無視できないんだよな。
でも、念願かなって三谷さんの歌舞伎が観られて、かつそれが
面白かったので満足です。役者さんたちも皆さん楽しそうで
私たちも自然とカーテンコールでは笑顔になっていました。
(最後の最後も松也さんが注目を集めてましたけど(笑))
また、ぜひ三谷さんには歌舞伎をやっていただきたいですねー。