今日は刈谷で観劇デーです。
以前、刈谷と東海市を間違えたから、もう何度も何度も
チケット確認したってば(笑)。

黒白珠「黒白珠」刈谷市総合文化センターアイリス 1列
13:00開演、15:20終演
演出:河原 雅彦   脚本:青木 豪
出演:松下優也、平間壮一、清水くるみ、平田敦子、植本純米、青谷優衣、村井國夫、高橋惠子、風間杜夫
【あらすじ】
1990年代、信谷勇(松下優也)は喧嘩っ早く、どんな仕事をしても長続きせず失業中で家でブラブラしている。東京の有名私立大学に通う双子の兄の光(平間壮一)とは性格が全く違っている。二人に母親は居ない。理由は聞かされていないが親戚や近隣の人が「ダンナの弟と不倫をし、一緒に逃げた」と噂しているのを耳にしていた。勇はその「ダンナの弟」と似ていると言われ、周りからも自分自身でも自分の出自について疑念を抱いていた。そんなある日、失踪していた母親が脳溢血で倒れた、と知らせに来た男が帰省中の光の前に現れる。その事をきっかけに封印された家族の物語が、不協和音を立てながら動き出し、衝撃の真実を解き明かすパンドラの箱が、今開かれる。


 
ダンピングチケットや招待なども出ていたので、チケットが
売れていないのかなぁ、と思ってはいたのですが、想像以上。
1階の客席は7割ぐらいしか入っていなくて、2階席まで
合わせたら6割ぐらいの入りになっちゃうんじゃないでしょうか。
元々刈谷は1,500席を超える大ホールで、コクーン(750席弱)
の倍の大きさだから、仕方ないのかなぁ・・・。
とはいえ、役者さんが気の毒に思えてしまうレベルのガラガラ
ぶりでした。





フライヤーのあらすじと、実際の舞台のストーリーがかなり
違ってるんですよね。
恐らく、制作途中で変わっていったものと思われますし、
新作だから、そういう事もあるとは思いますけど、珍しく事前に
フライヤーを見てから観劇したら、「あれ?どうなってるんだ?」と
頭の中で「?」が一杯になっちゃいましたってば(笑)。

舞台上手には信谷家の居間が、下手には真珠の養殖場が、
下手の上には、フレンチレストランが、中央奥には、大地のはとこ
である須崎の経営する施設があり、場面転換はなく演じる場所によって
場面が変わっていき、時に同時並行で話が進むこともあります。

信谷家は父である大地(風間守夫)が双子の子供である
勇(松下優也)と光(平間壮一)を真珠養殖業を営みながら
男一人で育てきた。
この双子がまあ、分かりやすく真逆の性格なんですよね。
松下優也君は、直情型で、こらえ性がなくて、でも人情味があって
とても役にフィットしていた気がします。
光は勇と違ってお酒も弱く、頭も良くてまじめで冷静。
兄弟だからって同じ性格にはならないでしょうが、双子だから
同じ年で、同じ家で育って、同じ経験をしてきたというのに、
ここまで違いますか?と違和感を覚える程共通点がない。
平間君は悪くは無いんですけど、ちょっと違和感はあったかな。
その違和感の原因がよく分からなかったんだけど、大学生に見えない
落着きがあるというか。(演技云々ではなく、醸し出す雰囲気がね)
勇が歳なりの陽のオーラ(若さ)があるのに対して、光は何だか
荒んでいるというか、枯れている感じなんですよ。
光は苦悩を抱えていたって事らしいんですけど・・。

「母は本当に叔父と駆け落ちしたのか」
「自分たちの父親は、叔父なんじゃないか」

その疑念に囚われる光や勇と、真実を隠しておきたい父親と、
その周りの人たちを描いているんですよね。

真実を知っているのは、父である大地と、その、はとこである須崎、
そして、失踪した母親(高橋恵子)。
途中から、何となく「真実」らしきものが私達にも分かってきます。
どうやら、母と叔父は「駆け落ち」したのではないらしい。
むしろ、叔父が母につきまとっていたようだ。
自宅の床下に、何か父が隠しごとをしているらしい。
光は、父が叔父を殺して床下に埋めたのではないか、と疑い始める。

真実は、迫ってた叔父を鉈で殺したのは母だった。
子供を「殺人者の子供」にしたくなかったから、叔父と駆け落ちをした
と思わせて、母親を逃がしていた。
はとこの須崎は、信谷の経営する養殖真珠をくすねていたけど、
それを叔父の犯行と思わせる代償に、死体の海への遺棄と口止めを
行っていた・・・と。

まあ、通常であれば、息子たちに真実を伝えてエンディング・・と
なる事が多いのでしょうが、結局は母は「叔父と逃げた」と告白し
今までつきつづけた嘘を、そのままつき続ける事にするんですよね。
記憶を失った母親が、夫を見て記憶を想い出し、そして瞬時に
「嘘をつき続けなければ」と判断していく、その過程の高橋恵子さんの
表情の変化が素晴らしかったです。受ける風間さんもですが。

結局、あの後母の記憶が戻ったままなのか、あるいはそうでないのか
については、明確に語られる事は無かったし、勇と光が誰の子なのか
についての答えも出されなかったけど、それでも過去を暴くよりも
各自が過去を乗り越え、「これから」に向き合えるようになった、
と言うのが一番大きなことなんだろうな、と思わされますね。

「もしちゃんと罪を償っていれば、今頃は家族で過ごせたのではないか、
妻を一人にしなくても済んだのではないか」という大地の苦悩も、
とても胸を打つものがありました。やはりベテラン俳優陣、素晴らしい。
平田敦子さんもいい味出してたなぁ。
笑わせるんだけど、全体の雰囲気を壊すっていう訳でもなく、何気に
キーパーソンを演じていて。
植本純米さんも面白いし、役者さんとしては素敵だなって思いますが
このストーリーにこのキャラクター設定は、どうも蛇足に思えて
しまったのが、個人的には残念に思いました。

設定が1993年だから「テレカ」とか出てきたり、携帯電話がまだ
大きかったりして、ちょっと懐かしさもありましたね。
方言を使う作品は時に、聞き取りづらかったりするのですが
(長崎が舞台の作品で、言葉が聞き取れなくて辛い作品があったので)
割と聞き取りやすくしてくれていたので、その辺りも問題なく。

フライヤーの印象から難解な舞台なのか?と思ったりもしましたが
全然そんな事は無く、分かりやすい、比較的シンプルと言うか
直球な感じの作品でした。ちょいちょい笑えるシーンもあって、
観やすい作品だったから、もうちょっとお客さんが入ってもいいのに、
って思いますが・・・難しいですね。