去年は何故か観に来なかったのですが、今年は仁左衛門丈が
出演されるという事ですし、松竹座、行ってみよう!と。
どうせなら「青春18きっぷ」が使えるようになってから(7/20〜)
という事で、後半での観劇となりました。
ええ、今年の夏もお世話になります。青春18きっぷ(笑)。

七月大歌舞伎「七月大歌舞伎 昼の部」大阪松竹座 3階2列
11:30開演 15:15終演
色気噺お伊勢帰り
厳島招檜扇
義経千本桜







 歌舞伎は詳しくないものですから、「昼夜どちらを観ようかな」と
考えたのですが、決定打に欠けたので「じゃあ、昼夜両方観てしまえ」
という事で、昼夜通しで観る事になりました。
先日の高速バスでトラブルがありましたから、安い交通手段は
ちょっと怖いな・・と、思わなくも無かったのですが、まあ
何とかなるでしょ!と大阪に向かいました。

うん、何とかなったね。
というか、とてもスムーズで、驚いちゃったね(笑)。
まあ、そんなものですよね(爆)。



一、色気噺お伊勢帰り(いろけばなしおいせがえり)
左官喜六・・・鴈治郎
喜六女房お安・・・扇雀
大工清八・・・芝翫
遊女お紺・・・梅枝
清八女房お咲・・・壱太郎
うわばみの権九郎・・・隼人
旅芸人の座長万平・・・寿治郎
万平女房お千・・・吉弥
遊女お鹿・・・猿弥
家主庄兵衛・・・彌十郎
油屋女将おかつ・・・秀太郎

この演目は初めてかな。
とっても楽しくて、関西ノリというか、お笑いテイストが強いな
と思ったら「松竹新喜劇の名作を歌舞伎として新たに再構成した舞台」
なんですね、納得。

ちょっと抜けた感じの鴈治郎さんが演じる喜六はキュートで
またそのおかみさんの扇雀さんが演じるお安と、いいコンビで。
この夫婦は完全なカカア天下で、芝翫さん演じる清八夫婦とは
真逆って言う感じなんだけど、あったかいんだよね。
ポンポンと交わされるセリフのテンポも小気味が良くて。
清八は真面目そうなんだけど、小ズルい感じがしますもん。
(そう演じた芝翫さんがお上手なんだと思いますが、実生活での
浮気騒動をちょっと思い出しちゃったよね(笑))

夜の部のご挨拶で「初めて関西歌舞伎を育てる会に出演した時は
お紺を演じていたのに、今では息子がお紺を演じていて、自分は
油屋の女将です」って笑わせていた秀太郎さんですが、前日に
人間国宝に認定されたという事もあって「おめでとう!!」という
大向こうがかかっていました。

そのお紺を演じた梅枝さん、良かったなぁ。
綺麗で品もあるんだけど、だからこそ悪女になると怖い・・って言うか
「あんたを待ってるよ」と言った後で「待ってるわけないだろ」と
言い放つ変わり身の速さが、「ひえー」って言う感じ(笑)。
特に、女将が持っていた証文をひったくる様に奪うシーンは
「おー怖っ」と思ったし、持っていき場の無いプライドが現れてて
とても印象的でした。

あと印象に残った(というか笑った)のは、中村隼人さんが演じた
うわばみの権九郎ですね。何を聞かれても「そーだ」と棒読みで(笑)。
めっちゃ悪人のはずなのに、あっけなく捕まっちゃうし、存在そのものが
コメディなんだけど、全く変わらない表情に、「そーだ」の間も含めて、
面白かったんですよ。
カッコイイ役ばかりじゃないんだな、と思った隼人さんでした。

楽しくて、笑えて、明るい気持ちになれる作品でした。
ただ個人的には、赤福餅をそんなに持ち帰っても、生ものだし、
当然保冷バッグも防腐剤もないし、歩いて帰るんだから、何日もかかる
だろうし腐ってませんか?っていうのが気になって仕方なかった(笑)。


二、厳島招檜扇(いつくしままねくひおうぎ)
平相国清盛・・・我當
内大臣宗盛・・・進之介
三位中将重衡・・・萬太郎
祇王・・・壱太郎
小松三位維盛・・・中村福之助
瀬尾三郎兼経・・・松之助
仏御前実は源義朝息女九重姫・・・時蔵

我當丈が4年以上ぶりに舞台に復帰されるという作品。
福助丈も最近舞台復帰されましたので、愛でたい事が続きますね。
イヤホンガイドの仁左衛門丈のインタビューではこの件に触れており
「お客様に甘えている所もある」「まだ完全な体調という訳ではない」
とおっしゃっていました。

我當丈の体調不良の原因(病名)を存じませんので、何とも言えませんが
福助丈と似た印象はありますね。
基本的に座った状態での出演で、声量はやはり少なくて、言葉のキレも
今一つで。
ただお二人ともですが、出てきたときの存在感は、さすが!です。
こういうのを「オーラ」と言うのかな、と言う感じ。

最後のシーンで、沈みかけた夕陽をまた昇らせ、その夕陽に役者が
照らされるのですが、その時の照明が印象的だし、何となく我當丈
のための演目だなぁ・・と、思わずにはいられませんでした。

ただ、この最後のシーンと我當丈のセリフのシーン以外では、
何故か舞台を思い出せないのですよねー(^_^;)。
寝てたか?・・・寝てなかった気がするんだけど、何故覚えてない?
やっぱり、昼ごはんを食べた直後に様式美を楽しむ演目は危険・・。


三、義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)
渡海屋銀平実は新中納言知盛・・・仁左衛門
女房お柳実は典侍の局・・・孝太郎
源義経・・・菊之助
入江丹蔵・・・猿弥
武蔵坊弁慶・・・彌十郎
相模五郎・・・鴈治郎

これは、いつか観たいなーと思っていて、観られないままだった1本。
ただ、ラストシーンは有名だという事もあって、テレビの特番等で
知盛の最後の場面だけは知っていて、だから観た気になっていた
っていうやつです。(敢えて言うなら木ノ下歌舞伎では観ている)

もう・・仁左衛門さん、何歳でらっしゃいました?と思うほど
力強い知盛でした。
特に最後、岩場に上っていく場面などは、3階から観ていましたが
まるで一瞬クローズアップしたような錯覚を覚える程、目が離せなくて。
演技なんだけど、演技をしているように見えないというか。
本当に「渾身の力を込めています」と言う状況が痛々しく思えるほど。
現代劇だと、そう思う事も多々ありますが、歌舞伎となるとそもそも
扮装が非日常な訳で、また時には様式美を追及する事もあったり
するのに、そういった事を全部飛び越えた感じだったのですよね。

そんな力強く、また潔い知盛だったからこそ、その後のシーンが
余韻を持って伝わるし、彌十郎丈の法螺貝の音色が切なかった。

舞台の感想じゃなくて、仁左衛門丈の感想しか書いていないですが(笑)
仁左衛門丈の知盛を観ておけて良かったわ、と思う1本でした。