ついこの間新感線の新作を観たばかり・・と言う印象ですが、
もう次の作品なんですね、何だかうれしい。

けむりの軍団1
2019年劇団☆新感線39興行・夏秋公演
いのうえ歌舞伎<亞>alternative「けむりの軍団」
赤坂ACTシアターB列(最前列)
18:00開演、21:05終演
脚本:倉持裕   演出:いのうえひでのり
出演:古田新太、早乙女太一、清野菜名、須賀健太、高田聖子、粟根まこと、右近健一、河野まさと、逆木圭一郎、村木よし子、インディ高橋、宮下今日子、礒野慎吾、吉田メタル、中谷さとみ、保坂エマ、村木仁、川原正嗣、武田浩二、池田成志、他
【あらすじ】
軍配士として目良家と戦ってきた 真中十兵衛は、今は浪人生活。ある日、賭場でテラ銭泥棒騒ぎを起こした 美山輝親のとばっちりで、十兵衛は子分二人をヤクザに人質にとられてしまう。五日の間に捕まえて戻らないと子分の命はないと脅され、仕方なく輝親を探すハメになる十兵衛。
一方、目良家の城内では、同盟を組む厚見家を守るために当主・則治(のりはる)のもとに正室として嫁いでいた、 紗々姫 が目良家を出ようとしていた。とある木賃宿で十兵衛は輝親を発見するが、そこに紗々姫と源七も居合わせたことで、目良家の追っ手と一悶着を起こす。紗々姫から厚見の城まで自分を無事に送り届けることができれば、厚見家の軍配士として仕官させると言われて十兵衛の心は揺れ動く。しかし子分の命の刻限まであまり時間が残されていない。さあ、どうする、十兵衛!!



今回は何故かとても席運がよく(?)、行ってみたらA列を
潰していたので、最前列(しかもセンター)だったんですよね。
新感線、以前はちょくちょく最前列が取れていたんですが、
最近はご縁が無くって(笑)。
東京でもう1度、大阪でも1度観ますので、今回は全体の
ざっくりした感想など。




 

『隠し砦の三悪人』と太宰治の小説『走れメロス』を合わせたような
作品なんですってね。以前は新感線の公式HPをしっかり熟読して
アワブロも読み込んで観劇に備えたものですが、最近は全く・・という
体たらくでございます。

「隠し砦の三悪人」は黒澤監督の作品は観た事が無くて、10年以上前に
中島かずきさんが脚本を書いた映画を一度観たのみ。「走れメロス」は
あらすじを知っているぐらいかな。
なのであまり「黒澤のオマージュだ!」とかはよく分かりませんが(笑)
決められた刻限までに、戻らなければならない「メロス要素」と、
姫を守って、送り届ける「隠し砦要素」がある事位は分かります。
きっと細かなオマージュもあるんでしょうね、知っている人はきっと
楽しめるのではないかと思います。

今回は前方席で観られたので、主要キャストについて書きたいと思います。
まずは真田十兵衛を演じた古田新太さん。
やっぱり、この人が出ているだけで安定感がハンパないですね。
確かに昔のような殺陣の猛烈なスピードを期待する事は出来ないな・・と
寂しくも思いますが、やはり殺陣は見ごたえありますし、声も素敵だし。
でも何より、池田成志さんとの絶妙な間というか、二人の空気感は
「ごちそうさまでした♪」と言いたくなるぐらい、観ていて頬が緩みます。

その成志さんは、美山輝親という、口をひらけばウソばっかりの
お調子もので信用ならないんだけど、実はもとはお殿様。
人が良すぎて、あっという間に城と所領を奪われてしまった
情けない人なんだけど、盗んできたお金をさらわれた娘を買い戻す為に
領民に分け与えたりしていて、実はけっこう人望があったりする。
成志さんは「自分はネタモノしか呼ばれない」って言っていたけど、
これで2作連続、いのうえ歌舞伎のご出演ですね。
やっぱり成志さん独特の人を食ったようなセリフ回しに笑わせて
もらいましたよ。
そうそう、ボロボロの着物姿だったんですが、近くで観るとこれが
とても豪華で綺麗な布地で作られていて、そんな所にも「元・お殿様」
っていうスパイスがあるのかもしれません。衣装は前田文子さん。
最近は前田さん、大活躍ですね。

楽しみにしていた早乙女太一君は、敵方の目良家の侍大将の飛沢莉左衛門。
その実、目良家の殿様の妾の子供(本人自覚なし)。
この莉左衛門は、吃音というか、文法的に整った日本語が苦手、
っていう設定で、「ああ、太一君こういうおもしろキャラも演じるように
なったのね」と思ったのですが、普通にスラスラ話せている時の方が多く
なんだかちょっと中途半端感ありました。
でも、殺陣の美しさはもう・・!
あのスピードに合わせられる人ばかりではないので、「蒼の乱」の時の
早乙女友貴君との殺陣のようなものばかりではなかったのですが、それでも
川原さんとの殺陣は「これが観たかったの!」と思えるものでした。
(川原さんにはやはり役者としても、新感線にはぜひ出演して欲しい)
莉左衛門自身は目良家への忠義の気持ちに揺らぎはないのに、
十兵衛たちに陥れられ、すごい形相で戦う事になるのですが、最前列で
あの目力を見せられて、「いいもん、見せて頂きました」と思わず
思ってしまった私です(笑)。

目良家から逃げる紗々姫は清野菜名さん。
いいですね、こういう舞台に出る人は女性であってもこれ位アクションが
出来ると違和感が無くて。
紗々姫を守る花芯の雨森源七の須賀健太君が、いい具合にヘタレ感が
出ていて、二人の凸凹ぶりがマンガ的で楽しかったです。

また、高田聖子さんの演じた嵐蔵院の迫力も凄かったですね〜。
「怖っ」と思いましたもん。舞台で化ける女優さんだな、と思います。
劇団員ですと、サンボちゃん(河野さん)は安定のバカ殿役で、
さとみちゃんも、安定のKYな男好きキャラなんですけど、今回
さとみちゃん、すごい・・と思いましたね。
目良則治(河野まさと)の愛人役だけど、則治は紗々姫一筋。
コケにされても、無視されても、ひたすら則治に迫る様子はいつも通り
なんだけど、実は「私だけは殿様の味方になると決めてきた」と言い
着物を脱ぐシーンはなかなか色っぽくて、これは男は落ちるでしょ〜!
さとみちゃん、こんな表情するのね!と驚いちゃいましたよ。
(ちなみに着物の下はストラップレスの白いものを着ていたようです)

今回はカナコさんが怪我をして降板。そのポジションを宮下今日子さん
がつとめていらっしゃいました。宮下さんって、八嶋さんの奥様なんですね。
うん、確かにカナコさんっぽい役だし、そんな雰囲気。
クールで、陰ながら自分の息子であることを隠して、莉左衛門を
守り続ける、一途で報われない女性の役。
舞台でも何度か拝見しているようですが、あまり記憶になく・・。
背も高くて舞台映えする方だなと思うのですが、何故かこの人の
セリフは後半が聞き取りづらかった、という記憶しか無い。
他の人のセリフと被るからなのか?だとしたら、他の人が悪いのか?
でも毎回被ってる訳でもないし・・。ここは次回、確認してこよう。

いつも3時間半超え当たり前、何なら4時間近くなんて普通だぜ、
っていう新感線にしては珍しく、上演時間はほぼ3時間。
そのこと自体はいいんですが、でも・・・あの最後はどうなんだろう。
目良家が没落するまでの顛末は全部スクリーンに字幕で出すだけ。
(おまけに最前列なので、超・読みづらい)
太一君も「行方が分からなくなった」で片づけられてしまっていて
「え?もう出てこない訳?」という、雑な感じのクロージング。
何だか最後に急に雑になって終わってしまった、と言う印象で。
それまでは、騙して、騙して、ちょっと頭を使いながら観たりして
複雑な構造のストーリーになっていたのに、最後はそれ?!って・・。
だったら、もう少し上演時間を長くして、最後をもう少し丁寧に
出来ないものかしらね?と思うのは私だけでしょうか。
まあ、もともと「そして○○年後・・」みたいなエンディングも嫌いなので
私の好みではないだけかもしれませんが。

とはいえ、新感線らしさは楽しめました。
あまり深く考えずに観た方がいいのかな。面白い事は面白いので。

ラスト、紅葉が窓から吹き込んでくるシーンでは客席にも若干
紅葉が降ってきました。
最前列という事もあって自分の足元に落ちた1枚をGET。
もみじ
これ、紙じゃないんですね、ナイロン製のしっかりしたもので
プレス加工もしてあって、葉脈まできっちり表現されているもの。
ぶっちゃけ、季節感ゼロでしたけど(笑)、大阪公演は10月なので
丁度いい感じになってくるのかもしれません。

見づらくて閉口した部分もありますが、やはりたまには前方で
観たいな、っていうか観れて良かった、新感線(笑)。