一度は観てみたいと思っていたカクシンハン。でもどうしても
タイミングが合わないここ数年。やっと観る事が出来る事になりました!
しかも、「薔薇戦争」とか、史劇で一番面白い所じゃないですか。

薔薇戦争
カクシンハン第13回ロングラン公演
WARS OF THE ROSES「薔薇戦争:ヘンリー六世」
シアター風姿花伝 12:30開演、17:00終演
原作:W.シェイクスピア 翻訳:松岡和子 
テキスト・構成:カクシンハン  演出:木村龍之介
【あらすじ】
偉大な王であるヘンリー五世を突然の病で亡くした国が、新たな治世を迎えるまでの駆け引きと争いの物語。幼いヘンリー六世に明け渡された玉座は、歴史を超えて敵対してきた貴族たちの野心に火をつけ、ついに国は二つに分裂してしまう。
 



目白の駅には比較的余裕をもって到着していたので、軽く何かを
食べておくか・・と、ドトールに入り、チケットを確認すると
「開演40分前から整理券配布」となってるじゃないですか。
ええええー、チケットに記載された整理番号順じゃないわけ?
何のための整理番号だよ・・。(「1番」だったのに・・・)
そこで慌ててドトールを出て、開演50分ぐらい前に劇場到着。
結局、貰った整理番号は「8番」でした。

小劇場は自由席という事が多くて、早めに行かないと席が残念な
事になるので(いや、実際はどこでも観やすいんですけどね)
指定席のありがたさを実感している今日この頃。

結局、2列目の通路側に席をGET。
舞台の下手にはドラムセット、中央には座面テープで赤色に
したパイプ椅子と、白くしたパイプ椅子がタワー状態に
積み上げられていました。背景には映像が(タイトル文字)
映し出されているだけで、それ以外のセットは無い状態です。
(敢えて言えば上手奥に階段があるぐらい)

第一部:75分、第二部:80分、第三部:90分
休憩込の合計4時間30分。
本来はそれぞれ120分程度という事なので、木村さんがおっしゃる
ように「コンパクト」になっている事は間違いないです(笑)。








開演すると、シアター風姿花伝の小さなステージには見合わないほど
大人数のキャストが入り乱れ、「白い衣装」「赤い衣装」に分かれ
ホイッスルの音を合図に、各人が組み上げられたパイプ椅子の
ピラミッドを崩していきます。
白い衣装の人は白い椅子を、赤い衣装の人は赤い衣装を・・・。
(衣装と言っても、揃いのものではなくて、それぞれが所有する
赤い服とか白い服をそれぞれ身に着けている・・と言う感じ)

これでランカスター家(赤薔薇)と、ヨーク家(白薔薇)を表して
居るという事ですね。

セリフは間違いなくシェイクスピアです。古典らしく朗々と語る
役者の方はどなたも堂々としていて、シェイクスピア劇らしいのですが
いかんせん、衣装が少々突飛な方も居て(笑)、その違和感に少々戸惑う私。
でも、不思議とそれが気にならなくなってくるのですよね・・。
衣装はちょっとふざけていたりしますけど、それ以外は本当に真っ当な
シェイクスピア劇なんですよ。

1人が何役もこなす方もいらっしゃって、特に河内さんに至っては
エクセター公、皇太子シャルル、トールボット、サフォーク侯、
リチャードと5役も!(他の役者さんも漏れなく、何役も演じて
いらっしゃいました)
混乱しそうなものだけど、衣装や髪型、話し方などでちゃんと別人と
認識出来ます。けど出ずっぱりですごいなぁ・・・。
そうそう、河内さんと言えば、途中で持って出てくるべき小道具
を忘れてきてしまったようで「忘れ物を取りに行ってくる」と
奥に入ってしまい、他の方に「おい、本当に忘れてるよ」と
突っ込まれたりしていました(笑)。

シェイクスピアなんだけど迫力のあるドラムの生演奏もあり、
パン一で出てくる人あり、ミスった俳優さんをいじる人あり、突然
SMAPの「世界に一つだけの花」を歌い出したり・・・と、
堅苦しくなく、随所に笑いもある舞台。
繰り返しになりますが、戯曲でふざけたりはしていないんです。
内容をコンパクトにしただけあって、展開も早いので飽きることも無い。
あんな狭い劇場で、通路も一人通るのがやっと・・・という狭さなのに
いったい何度この通路をキャストが走り抜けたでしょう。
通路際に座っていたので、何度も衣装が触れますし、迫力もすごい。
棒とか持って走られると、ちょっと怖いですけど(笑)。
一つの壮大なドラマを観ている、と言う感じで、シェイクスピアを
観ているという堅苦しさがない、古臭さも無い。

かといって、エンタメに走っている訳でもないんですよね。

舞台で観た「ヘンリー六世」は蜷川版だけで、あとは「ホロウ・クラウン」
を観ただけですが、いずれの「ヘンリー六世」像とも違っていて、それも
とても興味深かった。

タイトルロールのヘンリー六世を演じたのは、鈴木彰紀さん。
どこかで観た事がある人だなぁ・・と思っていたら、どうやらこの方
さいたまネクスト・シアターの方なのだとか。
自分の過去のブログを遡ってみると、蜷川シェイクスピアで何度も
拝見していたようです。蜷川さんが作られたネクスト・シアターで育った
俳優さんを別の舞台で拝見するって、何だかとても嬉しいことです。
鈴木さん、とてもナヨナヨしていた、頼りないヘンリー六世・・かと
思いきや、地頭の良い、穏やかで押しが良いけど、神への信仰心の強い善人。
(最後には逃げちゃうような所があるけども)
王という立場に生まれなかったら・・と思わせる人でした。

私、もっともっと弱くて、メンタルも弱くて、宗教に逃げちゃうような
そんな人のイメージがあったのですよね。
「ヘンリー五世」を観た後だからなおさら「あんな立派な王の息子なのに・・」
と思っていたけど、今回ちょっと納得感。
(ちなみに鈴木さんご自身は「リチャード三世」ではクラレンス公も
演じていらっしゃいましたが、全く雰囲気が違ってました)

サフォーク伯とマーガレットの道ならぬ恋と二人の分れは、思っていた以上に
ロマンチックに描かれ別れのシーンはなかなか切なかったのが印象的でした。
ああ、こういう部分にも見せ場ってあるんだな・・と。
もともと一部〜三部は独立しているので当然と言えば当然ですが
それぞれに山場があり、見せ場があるんだな・・という事も、今回
実感出来たところです。

ヨーク家が権力を持ち、エドワード四世が即位、一同が舞台の奥の方向いて
「はい、ヨーク!」と記念撮影をしたシーンでストップモーション。
リチャードだけが客席に向きなおり、「リチャード三世」に続く独白
をして、この舞台は幕となります。うわー、早く続きが観たいわ!と
わくわく感。


3部制の長い作品だからという事もあるでしょうが、上演機会の
少ないこの舞台。とてもライブ感があって、笑う所もあるけど
分かりやすく、本質を見失っていないと思える作品でした。
戦いのシーンでは“剣”じゃなくて、畳んだパイプ椅子を使ったり
「見立て」もうまく、かつ多様されていて面白かった。
確かに「4時間半」と聞くと長いけど、思ったよりも全然平気。
それだけ集中して観られた、という事だと思います。



幕間のシェイクスピア
これ、1部と2部の間の休憩です。(この時間は写真撮影OK)
「シェイクスピアさん(岩崎MARK雄大さん)」がグッズの説明
などをしながら客席いじりをする・・という(笑)。
私も「クリアファイル買ってください」と話しかけられちゃいました(笑)。
調べたら岩崎さん、東大卒なんですって(驚)。
(まあカクシンハン主宰の木村さんも東大卒だしな)
英語もお上手だなと思ったら、北米のご出身って。単語のチョイスが
やっぱり違いますもんね。

あ、クリアファイルですか?
素敵なデザインですね、でも1枚1000円もするクリアファイルに見合う
書類は持ち合わせておりませんので、今回は見送りました(笑)。



舞台感想は、今も大したこと書いていないけど、昔のはもっと酷い(苦笑)。