台風の動向が気になりつつも、またやって来ました東京へ。
今回の遠征の1本目はこちらです。

愛と哀しみのシャーロック・ホームズ「愛と哀しみのシャーロックホームズ」
世田谷パブリックシアター 2階B列
13:00開演、15:25終演
作・演出:三谷幸喜
出演:柿澤勇人、佐藤二朗、広瀬アリス、八木亜希子、横田栄司、はいだしょうこ、迫田孝也
【あらすじ】
ホームズとワトソンがベーカー街221bで同居を始めたのは、1881年の1月といわれています。これは、彼ら名コンビが出会ってから、「緋色の研究」で描かれた最初の事件に遭遇するまでの数ヶ月間の物語。ホームズはまだ二十代の若者。人間としても探偵としても未完成のシャーロックが直面する、人生最初で最大の試練とは?



三谷さんの舞台は最近は基本的にパスしているのですが、
この作品に関しては、かなり興味があったんですよね。
最初はA席しか取れなかったのですが、結果的にS席が取れまして。
とはいえ2階席の上手の端っこ。
舞台は近かったけど、上手が見切れちゃって残念でした。






今回も荻野さんのピアノ演奏がある舞台なんですね。
オープニングで荻野さんの演奏をしている間、この作品の背景について
字幕で説明が映し出されます。シャーロックには兄が居るという事や
ワトソンの年齢が明確に記されていないのと、離婚歴があったと
思われる事・・など、小説から推測される事実が中心かな。

私は小説のシャーロックホームズシリーズを読んだ事が無いので
よく分からないのですが、この舞台はホームズとワトソンが共同生活を
始めた後であり、かつ探偵として活躍する前のようですね。
そして、本来のシャーロックがどういうキャラクターなのか、が
分からないのですが、少なくともこの舞台で出てくるシャーロックは

・それ程キレキレではない
・心を開く相手は多くない、人とのコミュニケーションが面倒そう
・嫉妬深く、甘ったれでメンタルが弱い
・でも負けず嫌い

そんな感じかな。
全体に幼い印象のキャラで、原作のシャーロック好きの方がどう思うか
とかは全く分かりませんが、柿澤君にはピッタリで可愛らしく映る程。
母性本能がくすぐられるタイプですね(笑)。
ミュージカル俳優さんがストプレに出ると、セリフまわしが気になる
方もいらっしゃいますが、柿澤さんは全くそういうのは無かったな、と。
ワトソンは原作では年齢が書かれていないのをいい事に、めっちゃ
年上(医師になるまでに時間がかかった)という設定のようです。
デキる女医がワトソンの奥さんだっていうのも、三谷さんの設定ですね。

まあ最初の「事件」から違和感があるんですよ。
何だよ、その事件・・と思って。でも実はそれは兄が描いた茶番だった
と言うのが分かって、「なるほど」と。
私はこの舞台の本チラシをとうとう入手できなかったので、今回
初めて知ったのですが、チラシには薄い文字で、出も大きく
「THE SPARE」て書かれているんですよね。
シャーロックの兄が二度ほど「お前は俺のスペアなんだ」って
言っていたし、印象的なセリフでしたから。
これは何かを推理するようなサスペンスではなく、兄弟の確執が
話の軸にあったんですね。厳密に言うと、弟に対する兄の嫉妬。
ワトソンの奥さんにズバっと言い当てられたときは「おお・・」と
スカっとするところがありました。

全体に面白い作品だったと思いますが、敢えて言うと少々全体に
ライトというか、こじんまりしている・・かなとは思います。
コメディや音楽、シリアスな部分などのバランスが良かった
と言う印象もありますね。
三谷さんの舞台で私が「ハズレ」と感じるのは、このバランスが悪い
作品が多いと思うので、そういう意味でもこれは「アタリ」だったな
と思います。

残念なのは謎解きの部分でつまんないのが混じってた事。
「スコーン事件」なんて、犯人はすぐ分ったけど、すごく引っ張る。
ていうか、逆に「ああ、そういうこじつけもアリなんだ」って
感心しちゃったぐらい。やっぱり「シャーロック」とつく以上は
「おおお」と思う謎解きを期待してしまいますから。
トランプのゲームもそう。
ハドスン夫人が「驚きました」というセリフから、皆が持っている
のは「赤札ばかり」と推理するのは、ちょっと無理があると思うのだが。
(ゲーム自体は途中からルールが分かって、面白いな・・と思ったのに)

役者さんは皆さんハマリ役でよかったですね。
広瀬アリスさんのはじけた演技は、この役に合っていたと思うし
八木さんはアナウンサーのイメージが強かったけど、女優さんとして
全く見劣りがしないどころか、凄く良かった。
はいだしょうこさんは、不思議キャラの人のイメージしか無かった
のですが、さすが舞台を沢山こなしてきただけあり、舞台の上では
堂々としていて、良かったです。声も通りますしね。
しかし、はいださんも、平野綾さんも舞台上ではしっかりした声で
セリフが言えるのに、普段はなぜあんな声なんだろう(笑)?
ワトソンが、シャーロックのご機嫌を伺ってばかりって言う設定が
原作通りなのかは分かりませんが、笑いのツボというか間をきちんと
押さえている佐藤さんは、さすがにお上手でした。
横田さん、ガタイもいいし、声もでかい人がああいう少し卑屈な役を
演じるって、印象に残りますよね。とても良かったです。

今回は楽しく拝見出来る舞台でした。
観に行って良かったな、と思います!