最後に南座に行ったのはいつだっただろう・・・。
これはぜひ観たい!と思っていたのに、チケ取りを忘れていて
結局「連休真ん中の、夜公演」という、何だかな・・な予定(笑)。
いつも通りジムに行った後、のんびり京都に向かいました。

東海道四谷怪談「九月花形歌舞伎 通し狂言 東海道四谷怪談3階4列
16:30開演、20:30終演
序 幕  浅草観音額堂の場
     按摩宅悦内の場
     浅草観音裏地蔵前の場
     同    田圃の場
二幕目  雑司ヶ谷四ッ谷町伊右衛門浪宅の場
     伊藤喜兵衛内の場
     元の伊右衛門浪宅の場
三幕目  砂村隠亡掘の場
大 詰  蛇山庵室の場

     
台風17号がやって来る・・と言うのを聞いて心配していましたけど
京都駅に到着した時に降られただけで、無問題でした!
せっかく京都に行ったというのに、劇場へ直行直帰で。
私はどうも「京都」という所に情熱が無いらしい(笑)。
いや、決して嫌いじゃないんですけど、あの混雑ぶりがね・・。



 

四谷怪談は振り返ると、結構観ているんですが、コクーン歌舞伎
だったり、新国立のものだったり・・と、正統派な歌舞伎の公演では
無いものを観ることが多かった様子。(全部じゃないですけど)
今回はどういう感じになっているのか・・等、全く事前情報を知らず
座組みだけで「観たい」と思ってチケットを摂っておりました。

と言う事で、私自身は何度か観ておりますが、関西で上演されるのは
何と26年ぶりなんだとか。何故そんなに間隔が空いちゃったのだろう。
七之助さん、愛之助さん、中車さんの3人ともが初役で、玉三郎さんが監修
との事ですから、その辺りもとても期待しておりました。

うん、素直に面白かったです。
まずは七之助さん、3役もこなされていたんですね。
すっかり女形のイメージが定着しているので、佐藤与茂七や小仏小平で
男性として舞台に上がられるのを拝見すると「おっ?」と思って
しまったり、そう言えば初めて舞台で七之助さんを拝見したのは
立ち役だったなぁ・・(同朋高校での平成中村座)なんて思い出しつつ。
都会的というかスマートな与茂七と、スマートではないけど、
何とか薬を手に入れたいと思う真っ直ぐな小平。タイプは違いますが
全く違和感なく観ることが出来ました。

でも特筆すべきはお岩さんですよね。
このお岩さん、哀しいんです、本当に。
生前のお岩さんにも、もちろん「怒り」も感じるんだけど、それ以上に
子供を想う気持ち、女として面変わりしてしまった哀しさ・・・。
床に置いた鏡を見るシーンは、見るほうも辛い気持ちになりましたし、
鏡を見たいけど、怖くて見れない・・って言う気持ち、分かるわーと。
お歯黒を塗っている時や、髪を梳いている時には女の執念を感じて
そこは背中が寒くなるような怖さがありました。
幽霊になってからのお岩さんはもう、怖さと怒りしか感じませんけど
同じ怖さや怒りでも、誰に向かっているものなのか、とか、
色々と違っている訳で、その辺りの違いが感じられるのも、良かったな。

戸板返しや提灯抜けなども観応えがあるし、日本に昔から伝わる
「幽霊には足が無い」っていうのは、こういう事なんだな!と言うのが
よく理解できましたね。
今回は3階席から拝見しましたが、そういったギミックを楽しむ
と言う点では、むしろいい席だったように思います。
(南座の3階席は花道も観やすくて、とても良かったです)
真っ暗な客席に突然お岩さんの幽霊が登場して、客を驚かす・・という
演出が定番なのかどうかは分かりませんが、客席のあちこちから
「キャー!」とか聞こえてくるのも面白く・・・「面白い」と言う
表現が適切でないかもしれませんが、その声すら演出の一部のようでもあり
興味深かったです。

民谷伊右衛門を演じた愛之助さんの底意地の悪さったら・・(褒めてます)。
なんだろう、コイツは何があっても改心しないだろうな、と思うような
悪党オーラを出していた気がします。
だからこそ、お岩さんに追い詰められて怖がっている様子が
客席から見ると「いい気味だ」って思うのかもしれない(笑)。
そして、ああいう半グレの男に、世の中の事をしらないお嬢ちゃんが
引っかかってしまう、っていうのも、自然に思えて、こういう構図って
今でもあり得るよね・・と、妙に納得してしまったのでした。
そんな世間知らずのお嬢ちゃん、お梅を演じた鶴松君はとても可愛かった!

伊右衛門の悪者っぷりに負けず劣らずの直助権兵衛は中車さん。
やっぱりね、踊りとか歴史ものとかは難しいのかしらね、とは思うけど
もともと演技が、お上手なんだろうなと思います。
全く違和感無いですから。
同じ悪者なんだけど、伊右衛門とはまた全然違う、下卑た感じが
とても出ていたと思います。
ちなみに、中車さんは数少ない休演日に「虫を獲りに行っていた」と
舞台番として登場した亀蔵さんが呆れて話していらっしゃいました(笑)。

お袖で出演していた壱太郎さんが、最後にはお花として出ていらして
その辺りがちょっと端折った感になってしまったのが残念ではありました。
舞台番の亀蔵さんも「帰れなくなる人が居る」とおっしゃってましたが(笑)
どうしても全部が観られる訳ではないので、そこは仕方ないかな・・。

でも、とても観応えがあったし、面白く拝見いたしました。
久しぶりの南座も、いい意味で変わっていなくて、また来年「オグリ」で
来たいな、と思っております。
劇場を出ると雨はすっかりあがっていて、「台風、なんだったんだ」と
思いつつ、安心して名古屋に戻ったのでした。
うーん、劇場で弁当も食べてないし(食べると眠くなるからな。)
行きの京都駅で買った、出町ふたばの塩大福も劇場に忘れてきちゃったし
折角京都まで来たというのに、京都感ナッシング。
ま、そんな事もあるでしょう(笑)。