朝イチで映画を観てから、向かったのは豊橋です。
3週連続豊橋通い(笑)!

文楽「人形浄瑠璃 文楽(昼)」穂の国とよはし芸術劇場PLAT B列
 『生写朝顔話』(しょううつしあさがおばなし)
・明石船別れの段
・笑い薬の段(わらいぐすりのだん)
・宿屋の段(やどやのだん)
・大井川の段(おおいがわのだん)








文楽を観るのは久しぶりです、何年振りだろう・・・。
中日文楽だけは観続けていたんですけど、その中日劇場も無くなり、
文楽劇場も過去に一度行った事はありますが、なかなか文楽のため
だけに行くのはハードルが高くて・・。

入口には人形と記念撮影できるコーナーもあって、行列に
なっていました。

中日文楽は通し券を買っていたのであまり前方席が取れなかった
のですが、豊橋は通し券でも座席が選べたので、前方席キープで。
中日文楽の時と同じく、最初に太夫があらすじや見どころを
説明して下さってから開演です。

今回の字幕は、舞台下手に縦書きで置かれていました。
「Gマーク」と言うそうですが(笑)、中日文楽は中央上部に吊って
あったと思うんですよね。
前方席でセンターだと、あれはかなり見づらい・・・。




まずは竹本小住太夫の解説から。
私をはじめ、伝統芸能に詳しくない者にとっては、ありがたいですね。
昼の部はかなり客席も埋まっていました。
昼の部の演目は「生写朝顔話」。これは「君の名は」に例えられる
事もあるような、すれ違いの恋愛話・・・という事を知ります。
歌舞伎でもこの演目は観た事は無い・・・はず。

まず単純に世話物と言う事もあって観やすかったのですけど、
とても面白かったです。
何が面白いかって、「笑い薬の段」でしょう。
私が宿屋の主人だったら、そんな薬をお湯に混ぜたのを知ったら、
さっさとお湯を捨てて、害の無い真水に変えておくのに、敢えてそれに
「笑い薬」を入れておく・・と。
(そもそもその「笑い薬」は何のために所有していたのだ?と思いますが
まあ、そこはこの中では語られないので、置いておきます。)
それを自然と祐仙が飲むように仕向けるのが上手いですし
何よりも、笑い続ける祐仙がおかしくて、おかしくて。
後ろの人も「おもしろーい」って言ってましたが(静かに観ろ!と
は思いましたけど)笑っちゃうんですよ。
身をよじり、笑い過ぎで着物の帯もほどけ、袂も崩れてきて、でも
転げまわっているのを見ると、笑えてきちゃう。人形だって分かって
いるのにねー、不思議。

でも、自分が探し求めていた恋人だと知り、必死に追いかけるのに
追いつけず、大井川の川岸で嘆き、身投げまで考える朝顔(深雪)は
本当に鬼気迫る程で、切なくて・・・。この義太夫も迫力あったなぁ。
「扇子に正体を書き残して出発するぐらいなら、黙っていけ!」と思うし
「『また改めて会いに来るよ』ぐらい言えんのか!!」とか、もう
阿曾次郎に腹が立つったら・・。

特定の日時に生まれた人の生き血を飲むと、病気が治る・・という
伝統芸能独特のウルトラC発動で、深雪ちゃんは目が見えるように
なったというのに、このお話は、結局二人は結ばれないのね・・・。
どうしても、深雪ちゃんを追ってきた乳母の浅香が死ぬ所(浜松小屋の段)
飛ばしちゃってるもんだから、理解出来るまで少し「ん?」となるのね。
恋愛話にみえて、実は忠義のお話だったのですね。
自分を守った乳母の父親の生き血で再び目が見えるようになって、
それはそれで「めでたし、めでたし」なんだけど、半ば半狂乱のように
恋する人を追ってきた深雪ちゃん的には、目が見えるようになる事より
恋人と再会できる方が、ハッピーエンドだったんじゃないかなぁ・・
なんて、思わずにはいられませんでした。

でもやっぱり、全体に面白く拝見しました。
歌舞伎でも、文楽でも私はどうしても「見取り」が苦手なんだな。
元々の知識がないし、感情が乗ってくると終わっちゃうから。
そういう意味で通しで観られたのも、面白く感じた理由なのかもしれません。
今まで何度か文楽は観てきましたが、素直に登場人物に笑ったり、
腹を立てたり・・と観たのは今回が初めてかも。
今まではどちらかと言うと「人形なのにすごい」的な見方をしてしまって
いたと思うんですよね。
文楽はよっぽど「観よう」という強い意志がないと、観られないですが
少なくともまた豊橋とか、地方公演に来てくれたら、ぜひ!