遠征の2本目はこちら。新宿御苑を出て、今回は下落合経由で
やって来ました、シアター風姿花伝。
風姿花伝プロデュースを観るのはまだ3本目ですが、これは私が演劇が好きで
遠征が出来る限り、観つづけていきたいと思うシリーズの一つです。

終夜風姿花伝プロデュース「終夜」シアター風姿花伝 最前列
17:00開演、20:50終演
脚本:ラーシュ・ノレーン   演出:上村聡史
出演:岡本健一、栗田桃子、斉藤直樹、那須佐代子
【あらすじ】
霧がかすむ夜、母の火葬を終え帰宅した、精神科医の男とその妻。帰宅とともに前妻との娘からの電話が鳴り響く……。まともに取り合おうとしない男。それを責める妻。そこへ、男の弟とその妻が訪れる。同じ家に泊まることになった、不仲の兄弟。家族の確執、喪失した青春、性的倒錯。時間はジャズの調べと共に過ぎていく。終夜、母の遺灰が見つめるなかで、男女四人が迎える朝は―



公演情報がオープンになった時は公演時間が「4時間半」となっていて
そこにビビったものですが、実際の所は休憩込で4時間を切っていて
かつ休憩も2度。「なんだ、新感線より余裕じゃん」と思う自分(爆)。

こちらの作品はもともとスウェーデン語で書かれており、フランス語の
台本は存在していたのだとか。そこで仏語→日本語に翻訳して
上演許可を取ろうと思ったら、スウェーデン語→日本語の翻訳でないと
許可が下りないという事が判明し、再度翻訳者を探して翻訳しなおし
今回の上演に至った・・と言う経緯があるのだそうです。
元々はもっと長い戯曲だったようで、(なので当初は「4時間半」の告知)
上演台本の作成にあたり、今の形に落ち着いた、とか。
(ノーカットだと7時間とかって・・・!!!)

今回はアイスラテ
今回は以前外階段の所にあったコーヒースタンドが、受付カウンター
の所に移動していました。
前回美味しかったので、今回もお菓子と共に頂こうかな、と。
ランチも食べていないし、マチネの後にお店に入る時間的な余裕も
無かったので。
いやー、アイスでも美味しい。
私史上、MAXコーヒーの濃いラテだと思います。
(ただ単に苦いとかって事ではないんですよね)





まあ、休憩2回を含んだ上演時間が4時間未満であれば、新感線に
慣れた私には余裕、と思ったのですが、やっぱりエンタメ感のある
新感線と、ガッツリの会話劇では観た後の疲労は違いました。
甘かった、私(笑)。

舞台はスウェーデン、母親の葬儀に出た後の話。
ヨン(岡本健一)とシャーロット(栗田桃子)の夫婦が帰宅したのは
スタイリッシュな自宅。舞台は黒い低いキャビネットで2面が囲まれた
状態になっているぐらいのシンプルなもの。
もう最初のこの二人の会話から入ってくる情報量が多くて大変!

・恐らくヨンは精神科医師で経済的には成功している
・ヨンは再婚で前の奥さんとの間に娘が居るが、母親から(前の奥さん)
 ネグレクトにあっているらしく、娘も過食症っぽい。でも
 積極的にサポートをしている感じでもない
・ヨンとシャーロットの間にも娘が居る
・弟のアラン(斉藤直樹)とは仲が悪いらしい
・母親とも仲が悪かった(母親に嫌われていた)らしい

そこに弟夫婦がやって来ることになります。彼らが自宅に帰るには
もう遅いので泊めることにした、と言うヨンですが、シャーロットは
すごく抵抗感を示します。
詳しくは覚えていないけど、確かこの段階で22時とか結構遅い時間帯
だった気がするのですが、この4人が感情をぶつけ合う一晩の話。

まあ・・・言葉を選ばずに言うならば、全員のクズっぷりはハンパない。
クズというか、自分の事しか考えない人の集まり。
弟のアランはモラハラ夫で事業も傾いていて、妻の浮気にダメージ
を受けている。でもその理由は「愛しているから」とかではなくて
「寝たいから」とか、そういう本能的欲求を満たす対象としか考えて
いないような言いっぷりがクズ。
弟の奥さんのモニカ(那須佐代子)は良妻賢母だったんだけど
めっちゃ年下の男の子と不倫中でウキウキしてるし、ダンナにも
話しているあたりがクズ。(過去にヨンと恋愛関係にだったようでもある)
シャーロットはエキセントリックで、恐らくメンタルヘルス不全。
お前はセックス依存か?と思うような所もあり、怖いんです。
自分と子供の事は訴えるけど、夫がどう感じるかとか考えられないクズ。
ヨンは結局誰も愛せないというか、母親の呪縛から逃れられない。
シャーロットに困惑し続けているものの、「そういう女が好き」という
所もあって、煮え切らない態度が妻を苦しめていると分からないクズ。

ここでは「クズ・クズ」連発しましたが(笑)、シャーロットの激しさは
ちょっと別格だけども、こういう人って実はあちこちに居そうで
すごく特別な人、って感じではないんですよねぇ・・・。

それにしてもまあ、噛みあわない4人が集まったこと・・(笑)!
特にヨンとシャーロットの言い合いは過激で、どちらの言う事が
事実なんだか分からなくて、私もどちら側の立ち位置で話を聴いたら
いいのやら・・と、振り回されっぱなしの一幕。
でも、シャーロットが喪服を脱いでライトグレーのジャージ素材の
ワンピースに着替えた時に、不思議なライトブルーの汚れがついていて
「なんだ?」と思ったのですよね。
その後、シャーロットがライトブルーのペンキ(恐らく絵具でしょう)
で黒の壁に「人殺し」って書くシーンがあって、ヨンが、こんなことは
初めてではない・・って言うんですが、「ああ、このペンキの色か!」と。
前にもやってるから、あのワンピースに色がついているんだな、やはり
ヨンの話している内容は、事実に近いのではないかな?と思うように
なってきました。
その後、別れを切り出すヨンに「私を壊した」と言うシャーロット。
ああ・・病識はあるのかしらね、と思いながら、彼女の粘着気質が
怖くもあって、ちょっとしたホラー感あります。
かといって、ヨンにも同情は出来ないんですが(爆)。

でも面白いな・・と思ったのは、シャーロットとモニカには何となく
会話が通じるような所があって、「男VS女」みたいな構図もあるし
「妻VS母」みたいなところもある。
二組の夫婦の話だけど、ヨン・アランとその母親という親子と、
ヨンと前妻の娘、ヨンとシャーロットの娘という親子関係の話もあって。
でも、いつかは迎えなければいけない転換点を迎えた、という感じも
あった舞台です。
スウェーデンのような北欧で、コートを着るような時期だからきっと
「夜」は長いんだろうな。その「終夜」かあ・・気が遠くなりそうだな
と思ったりもしました。(原題はちょっとニュアンスが違うようですが)

しかし、あの壺、いつかやるんじゃないか・・と思ったけど、やっぱり
最後ぶん投げたね(笑)。真っ黒い壁に白い粉が付着して、インパクトが
あったわあ。。。見事な割れっぷりでした。

役者さんは、本当に大変だったと思います。
特にあのテンションを維持し続ける、栗田桃子さんの労力はいかほどか。
栗田さんと岡本さんはセリフ量も多いし、本当に大変だったと思いますが
他のお二人も含めて、セリフを噛んだりするようなことも無く、
セリフと思わせるような事も全くなくて、凄かったです。
個人的には、岡本さんの中年ビジュアルに少し衝撃を受けましたが(笑)
そりゃリアル岡本さんだって歳を重ねますよね、と思い直したりして。
いい意味で華やかさとかキラキラ感が無くて、役に溶け込んでいらしゃるな
と思いました。皆様、本当にあっぱれです。

やはり良くも悪くも海外戯曲だな・・と思う所もあります。
日本ではあそこまで感情のぶつけ合いをする事って、あまりないですし。
でも、決して眠くなるとか、そういう事は無かったですね。
役者さんたちの会話の応酬と言うか、感情のぶつけ合いの迫力に
飲み込まれないように、ちゃんと観なきゃ・・と緊張感を持って
観ていたので、観るほうにもパワーは要りますし、観た後にそれなりに
疲れはしましたが、長くは感じなかったな、と思います。
それに「海外戯曲」とはいえ、何だか身近に感じられる所もあって
(海外戯曲で一番の難関は、歴史的背景や宗教観の違いだと思って
いるのですが、今回はそういう点はあまり考慮しなくても良かったので)
そこもあまり構えて観なくて良かった理由かもしれません。
ただ・・・これ、映像で観ると、つまんない作品かもしれない。
(生で観てこそ、価値のある作品って言う意味です(笑))

何故か私の左隣のお客さんは1幕で2名、2幕の途中で1名が帰って
しまわれました。
もしかしたら、あまり舞台をご覧にならないような人だったのかも?
とは思いますが、左側が全員居なくなって、ちょっと驚いちゃいました。

しゅうさんマッチ第二弾
中嶋しゅうさん発案のマッチ、第二弾が出来ていたので、ひとつ
頂いて帰ってきました。
那須さんとしゅうさんの間で話していた「五か年計画」の最後が
この2019年のプロデュース公演だったんだそうです・・・。

来年以降どうなるのかな。
でも、風姿花伝はプロデュース作品も劇場も引き続き注目して
行きたいなと思っています。