うちの会社は昨日で仕事納めだったため、本日より冬休み。
(厳密には今日は強制的に有給休暇を取らされる日なんですが)
連休の最初はこちらから。

NTLive「アントニーとクレオパトラ」NTLive「アントニーとクレオパトラ」
作:ウィリアム・シェイクスピア
演出:サイモン・ゴッドウィン
出演:レイフ・ファインズ、ソフィー・オコネドー ほか
 







「アントニーとクレオパトラ」は蜷川版で一度観た限り。
こう考えると、私のシェイクスピア鑑賞には蜷川さんの影響が
本当に大きかったんだなぁ・・と改めて気づきますね。

とはいえ、席も遠くて、鋼太郎さん(アントニー)が安蘭さん
(クレオパトラ)とイチャイチャするバカップルの記憶しか無い(笑)。




これを観るにあたり、興味があったのが演出家がサイモン・ゴドウィン
だったという事があります。
今年観た「ハムレット」の演出をした方だったので。(感想書けてない・・)

勿論別の作品ですし、劇場の形態も違うので完全に同一という訳ではない
のですが、ああ、あれらはサイモン・ゴドウィンならではの演出だったのか
と思い至る事が何点かありましたね。
場面転換の際の音楽の使い方、2階建てのセットに、盆を使った演出。
そしてこの劇場は、盆だけじゃなくて、以前新宿コマ劇場にあった
旋回する丸いセリもあって、舞台機構が凄いんですね。

「リチャード二世」に比べると、割と馴染みやすい演出。
ローマとギリシャの対比も明確です。
エジプトに居るクレオパトラはAラインのドレスで従者もカジュアルめの
服装で、建築もプールがあったりするけど、別に特段近代的でもなく
ローマではスーツにハイヒール、パソコンなんかもあって近代的。

役者さんも皆さん本当に良くて。
アントニーを演じたのはレイフ・ファインズ。
もう・・・情けないんですよ(笑)。勇敢な武将だって何度言われても
現実味が無い。
でも、いい歳したオッサンが恋に溺れるとこうなるのか・・と
見せつけられるような、ダメダメっぷりには、非常に現実味あり(笑)。
クレオパトラみたいな人は滅多にいないかもしれないけど、恋に
身を持ち崩す人って、こういう感じになるんだろうな・・って
見せつけられたようです。そしてオッサンの嫉妬は醜い(笑)。
ただ、戦っているアントニーは凛々しくて、その差が見事。

クレオパトラはソフィー・オコネドー。絶世の美女かあ・・。
外国人の美の基準は私にはちょっと複雑だな・・と思ったりしましたが
まるで猫のような気まぐれさと高慢さ。
自分の気持ちばかり、まくしたてるばかりで、相手の話を全く
聞き入れようとしない。まあ、女王様ですから、さもありなん・・
なんでしょうね。(人の話を聞かない、という面では似た者同士だが)
敵を前に撤退してしまったり、自分の自殺を装ったり、
女の浅はかさを存分に見せつけてくれました。
ただそんな女に全力で愛される、というのが男からしたら堪らない
のかもしれません。

総じて「なんか・・皆、愚かだ」って言う印象で、私には「悲劇」
という印象は無かったのですよね、それが正解かどうかは分かりませんが。
前に観た時は別のそこまで思わなかったけど。
恋に溺れて、自分の部下や自分の命や、大切なものを見失ったアントニーも
やはり恋に溺れて、相手の気持ちを試した結果、アントニーを死に至らしめ、
自分の子供も含めて窮地に陥れ、自ら命を絶ったクレオパトラも、
「アントニーについていく」と決めたくせに、保身からシーザーに寝返り
結局またアントニーを想うイノバーバスも
姉の幸せを考えず、姉をアントニーの後妻にしたシーザーも。
敢えて言うなら、シーザーの後妻になったオクタヴィアには唯一同情しちゃう。

あとは、クレオパトラの自殺に至るまでのシーンがとてもガッツリ
描かれていて、二人の愚かな恋愛の結末を描くというよりは、クレオパトラの
女王としての気高さ、プライドを描いた作品だった、という印象でした。
衣装も素晴らしかったですし。
しかし、生きたヘビが出てきたのにはビックリ!

平日の朝という事もあってか、客が5名しか居なかったのが残念でしたが
観られてよかったな、という1本でした。