月初の段階では見落としていたんですが、クリント・イーストウッドが
監督する作品だったら、観なければ!と楽しみにしておりました。

リチャード・ジュエル「リチャード・ジュエル」
監督クリント・イーストウッド
キャストサム・ロックウェル、キャシー・ベイツ、ジョン・ハム、オリビア・ワイルド、ポール・ウォルター・ハウザー
【あらすじ】
96年、五輪開催中のアトランタで、警備員のリチャード・ジュエルが、公園で不審なバッグを発見する。その中身は、無数の釘が仕込まれたパイプ爆弾だった。多くの人々の命を救い一時は英雄視されるジュエルだったが、その裏でFBIはジュエルを第一容疑者として捜査を開始。それを現地の新聞社とテレビ局が実名報道したことで、ジュエルを取り巻く状況は一転。FBIは徹底的な捜査を行い、メディアによる連日の加熱報道で、ジュエルの人格は全国民の前で貶められていく。そんな状況に異を唱えるべく、ジュエルと旧知の弁護士ブライアントが立ち上がる。ジュエルの母ボビも息子の無実を訴え続けるが……≪アメリカ製作≫



全部とは言いませんが、クリント・イーストウッド監督作品は
結構観てる方だと思うんですよね。
ジムとホットヨガが終わってから、ダッシュでミッドランドへ!


 


1月、今年6本目にして「今年ベスト候補」出ちゃいました〜♪

これは実際にオリンピックが開催されたアメリカで起きた、爆弾テロ
に関わる実話です。

主役は(言葉を選ばずに言うならば)太って、愚鈍な印象を与える
冴えない男性、リチャード・ジュエル。
「愚鈍で冴えない」と言う印象になっているのは、彼が純粋だったり
人を悪く言ったり感情的にならない(大人しい)とか、バカ正直だからかも。
ただそのビジュアル故に見下される事も多いんですよね。
私もリチャードと警察とのやり取りの中で、彼の素直さというか、
言われるがままの状態にイラっとしていたし「ちょっと・・バカじゃないの?」
と思ったのも事実なんですよ、だから弁護士のブライアントの気持ちが分かる。
けど、ブライアントとのやり取りの中で「俺だって分かってる、怒ってる」
と言葉を荒らげた時には「そうだったんだ、ごめんなさい」って思いました。

事故現場では「どうせ中身はビールだよ」って警官が言うのにも関わらず
「訓練通りにやろう」と主張し爆弾を発見。撤去には間に合わなかったけど
聴衆を爆弾から引き離すことが出来た事が功を奏し、事件の規模の割に
死者2名で被害を抑えられたんですよね。

まあ、英雄に祭り上げられるのも、被疑者として貶められるのも、
いずれもメディアと聴衆によってであり、決して証拠を基にしていない。
あの記事を書いた女性記者は実在していたようですが、あの事故現場で
「どうか犯人が興味深い人でありますように、アーメン」とか言ちゃうし
FBIの捜査官と寝て証言を引出し記事にしちゃう、最低なクズ。
(実際に捜査官と寝てネタを取ったかどうかは分からないようですが、
その後はオーバードーズで亡くなっているようです)
この人が、リチャードの母の記者会見で涙を流しているシーンに関しては
ちょっと「それ、どうなん?」と思いましたけど、個人的にはあれは
クリント・イーストウッドの精一杯の皮肉に思えるんですよ。

それにしても、キャストがいい!
リチャードを演じた方はもともとはスタンダップコメディアンだったとか。
終盤に、FBI捜査官と対峙する時の表情が良かった。でも最後に正式に
FBIから「捜査対象ではない」と書面が出され、これで本当に解放された
と分かった時に涙を流すシーンは、もっと素晴らしかった。

でもやっぱり、キャシー・ベイツでしょう!
海外の男優でエディ以外には特に好きな人はいない、と先日書きましたけど、
女優さんでは好きな方が何名も居て、キャシー・ベイツもその一人です。
(後はヘレン・ミレン、メリル・ストリープ、サンドラブロック ・・etc)
メディアに向けて訴えるシーンはもう、やっぱり泣かされました。
あとはトイレに籠っちゃうシーンも良かったんです。
帰宅してから確認したら、キャシー・ベイツはこの役で随分と映画賞に
ノミネートされているようで。さもありなん!

確かに昔の話だけど、メディアリンチなんて今の方が酷い気がするし
長野のサリン事件で起きた冤罪事件も同じ構造だ、と言う記事も読みましたが
どんなに誠実であっても、伝え方や受け止め方ひとつでどうにでも
なってしまう怖さを感じずにはいられませんでした。
「権威」の怖さに関しては、今も変わりませんよね、と思います。
公文書があんなに簡単に破棄されたりしているニュースを見ていると。
そして、こういう場面にそばに弁護士がいることがどれだけ安心できるか・・。
ゴーン氏の逃亡については、私もネガティブな意見ですけど、
確かに日本の司法制度には改善点もあるよね、と思ったりもしました。

ちなみに何度も胸を抑えていたリチャードですが、44歳で心疾患で
亡くなったそうで、その伏線だったようです。
真犯人が逮捕されてから4年ぐらいで亡くなったようで・・・。
ハッピーエンドではありますが、ちょっと切なくなってしまいました。
しかし、あんなことがあってもやっぱり警官の仕事に就いたんだね。
その感覚が分からん、私には・・・(笑)。

クリント・イーストウッドには、今のペースでいいから、もっと
長生きして頂き、もっと映画を作っていただきたい!
・・・しかし今、89歳なのか、凄いな・・・。