1月も25日目にして、やっと今年の観劇初め。
直前まで銀座で優雅にアフタヌーンティーを楽しんでいたのですが
開演に間に合うように、友人を店に残して(笑)、一人池袋へ!

沖縄世「沖縄世 うちなーゆ」東京芸術劇場シアターウエスト B列
作:古川健   演出:小笠原響
出演:島田歌穂、鳥山昌克、きゃんひとみ、盒桐硫、原田祐輔、下條アトム
【あらすじ】
1972年沖縄。戦後27年を経てようやくアメリカ統治から日本復帰を果たそうとしていた。島民の熱気の中心にはひときわ熱い男がいた。祖国復帰党リーダー島袋亀太郎。亀太郎の演説は島民を奮い立たせ、希望の光を示していた。2月、帰宅した亀太郎は妻・俊子に思いもよらぬひと言を告げる。俊子もまた、糸満海人の家系で船団を率い、沖縄の経済的自立を目指して様々な事業を起こしてきた女傑であった。亀太郎の同志である金城と上原、俊子の事業家仲間である春子、夫婦の長男、悟。平和な沖縄を取り戻すために戦い、逞しく生き抜いてきた彼らの心にある沖縄とは ―。


もちろん、古川さんの作品だったので観に来たのですが、
客席の平均年齢、高っ!
トムプロジェクトの作品って、総じて客席年齢高めですが。
タイトルから、沖縄の話なんだろうな・・という事は分かって
いたのですが、どの時点(年代)の話なのかは把握していなくて。
終戦後、本土復帰を果たす頃のお話だったんですね。





男性が舞台上で沖縄の団結を呼びかける演説し、歓声を浴びるシーンで
幕が開きます、この男が島袋亀太郎、この舞台の主役であり、瀬長亀次郎
という実在の「不屈の男」をモデルにして描かれたのだそうです。
ただ、暗転の後のシーンは冒頭のシーンの演説とは打って変わります。
セットは今と思われる部屋、今一つ覇気の無い男性がいて、もう
政治活動を引退すると妻に告げています。
「不屈の男」とはイメージが全く違う・・。
妻の俊子(島田歌穂)は驚きつつも、夫の決意を否定はしないんです
「終わりを決められるのは、自分だけでしょう・・」と。
これだけで、この俊子という女性の懐の広さも分かりますし、この夫婦が
それぞれに自立した人間として、尊重し合っているか、お互いを理解
出来ているか、が分かるようです。

亀太郎引退の噂を聞きつけ、真偽を確かめるためにやって来た祖国復帰党の
仲間と、熱い両親とは一線を画す、冷静というか醒めた息子の悟と、
俊子の友人春子(きゃんひとみ)。
彼らの会話の中から、亀太郎の半生を見せていく、という流れです。

戦後、沖縄の日本復帰に向けて力を尽くし、逮捕されたり、せっかく
当選した市長職も失職させられたり・・と、様々な妨害や抵抗にあっても
「不屈」に活動をし続けた亀太郎。
決して暴力や感情論に走らなかった方のようですね。
ただ、亀太郎がそういう人だからこそ、周りが彼に頼り切ってしまって
いる、と言う現状もあるようで。

この作品の魅力は、俊子のような沖縄女性の力強さ、生命力なんじゃ
ないかな、と思います。
島田さんって、沖縄出身でしたっけ?と思うほど、沖縄のほうの方言
(というかイントネーション)が自然で、「なんくるないさー」と
言い放つ様子は、ミュージカル女優のオーラは(いい意味で)無くて
逞しい沖縄女性そのものという感じ。
でもこの俊子と言う人は、ホント魅力的な女性に描かれているんですよ。
女海賊と噂されるほど、海の男達をつかって貿易商として財を成したり
貿易のためにシンガポールまで行ったり、行動力も抜群。
生活の糧が無く、困り切ってやって来た春子に「お金は貸せるけど
自分で何とかする方法を考えないと」と言って、商売(密貿易)の
知恵を授け、春子が密貿易でお金を順調に稼いでいる時には
「潮時というものがある、世の中が落ち着いた今、正業に戻るべき」と
諭す、冷静な経営者マインドも持っている。
自分の意見(琉球独立)があって、亀太郎と意見が対立して言い合いに
なる事があっても、ケンカではなく意見のぶつけ合いになるっていうのが
いいな・・と思うんですよ。
踊りながら沖縄の曲(すみません、どういう曲かは全く分からず)も
歌ってくれたのですが、当然ですけど本当に歌声が美しくて、
ちょっとお得な気持ちになりました。

亀太郎が政界引退を言い出したのは、本心からだったのか。
周りの人に当事者意識を持ってほしいがための、自作自演だったのか
本当の所は分かりません。
私は、亀太郎は色々な事に疲れ、もっと言えば本土復帰が決まって
ちょっとした燃え尽き症候群のようになってしまったのではないか。
でも、俊子はそれを分りつつ「わざとでしょう?」と送り出したのでは
ないかな、なんて思ったりもしたのでした。

良くも悪くも、トムプロジェクトの舞台らしい、ド直球の作品でした。
初日だった事もあってか、皆さん結構噛んでましたけど(笑)。
演技は皆さん気になる事は無かったのですが、盒桐硫陲気鵑設定年齢
よりもずいぶん若く見えたり、原田裕輔さんが逆に年齢が随分高く
見えたりして、登場人物の年齢設定とそぐわないと言うか、年齢が
逆転して見えてしまうような所もあって、その違和感がどうしても
拭えないと言うか、座りが悪かった印象があったな、とは思います。

でも、沖縄の人達は沖縄以外の事を「大和」って言うんだな・・とか
基地問題は、この舞台の頃(本土復帰を果たした頃)から、根本的には
何も解決していないんだよな・・と思うと、複雑な思いにならずには
いられない舞台でした。


終演後、劇場を出た所の椅子に座ってスマホをチェックしていたら
「わあ、何だかすごくダンディな声がする!」
そう思って顔を上げたら、目の前に村井國男ご夫妻が!
観劇されていたのでしょうが、お見送りに出てきたキャストの方と
お話になっていらっしゃいました。
そうか、村井さんは「芸人と兵隊」でトムプロジェクトの舞台にご出演
でしたものね。体調を崩されたという事で心配していましたが、
にこやかで、お元気そうで、安心いたしました。
しかし、背も高くて、声も素敵でダンディすぎる(笑)。