この作品については、谷賢一さんが演出されていると知って
最初は行こうと思ったのですが、チケ取りの直前に「体験型」と知り
見送っておりおました。

エブリ・ブリリアント・シング「エブリ・ブリリアント・シング」千種文化小劇場A1
作:ダンカン・マクミラン ジョニー・ドナヒュー
翻訳・演出:谷賢一
出演:佐藤隆太

【あらすじ】
僕が7歳の時に、ママが入院した。どうやら、生きることが切なくなってしまったみたいだ。僕はママを勇気づけようと、ステキなことやステキなものを、ノートに書き出してみた。
1番 アイスクリーム
2番 水鉄砲合戦
3番 寝る前に見るテレビ
4番 ………………
そして1000番まで集まったら、ママは、きっと元気になる!そう信じて。ママは時折、僕のノートを見てくれていたみたい。だって、まちがった字を、ちゃんと直してくれたもの。そんな子ども時代を過ごした少年が、大人になっても、ステキなことを書き続けている。それは……。



それっきり完全にスルーしていたのですが、フォロワーさん等から
「良かった」と感想を聞き、「だったら一度、自分の目で確かめるか」
と思って、チケットを取ったのは2月に入ってからでした。
当日になって、自分が予約していた席が振替になってしまったりで
バタバタとあったり、開演が15分押し、トークショーもあったので
上演時間は1時間強のはずが、結局2時間半もかかったという・・(笑)。






名古屋市内には各区に1つは小劇場があり、千種区は円形劇場
なんですね、今回初めて知りました。
さいたま芸術劇場の小ホールのような、傾斜の急なすり鉢状の円形劇場。
原作では「平等に見えるように円形劇場が望ましい」という指定が
あるそうなので、ある意味理想的な形状なのかもしれません。

今回は公演かなりギリギリの一般発売でチケットを取ったので、舞台の
中央エリアの席を指定されたのですが、ちょっとそこは勘弁して欲しく
お願いして他の席に変えて頂きました。
開演時間10分前ぐらいに入ったのですが、既に佐藤隆太さんは劇場に
出てきていて、「番号を読む」希望者を募り、紙を渡したり、説明したり
何度も何度もチェックしたりしていて、開演も15分ほど押したかな、と。
名古屋って、こういう場面ではシャイな人が多いイメージだったんだけど
希望者がバンバン手を挙げていて、ちょっと驚いちゃった。

この作品は、メンタルヘルス不全で自殺未遂をしてしまった母親を
元気づけるために「ステキなこと」を書きだす男の子の話。
「1番」と佐藤さんが言うと、「1番」の紙を持った人が、そこに
書かれた内容を読み上げる、という流れで進んでいきます。
ただ、それだけじゃなくて、「お父さん」とか、この主役の子の初恋の相手や
カウンセラー役の方を、その場でお願いしていくんですよね。
(実は入場する段階から演出の谷さんが「この人にしよう」とアタリをつけ
佐藤さんと相談して決めているんだそうで、その場のノリで決めている
という訳ではない、と言う話をアフタートークで伺いました。)

それがまぁ、本当に皆さん「仕込みじゃないんですよね?」と思うほど
素晴らしいんですよ。
「何を言われても『なんで?』で返してください」と言われたお父さん役
の方は、何度も何度もニュアンスを変えて「なんで?」と言い続けるし
結婚式のスピーチも素敵でした。
特に素晴らしかったのが、カウンセラー役の方ですね。
大人になって、久しぶりに電話をしたカウンセラーが、当時(子供の頃)の
ボクは「一生懸命幸せになろうと努力していたよ」っていう所。
ぜったいに仕込みでしょ!と思うレベルの秀逸な返しでした。
(くどいようですが、仕込みではないそうです)

母親の自殺未遂で傷つき、成長をしていく中で自分自身も心を病み
大切に思っていたはずの人まで離れていき、気づけば一人ぼっち。
そんな中でやっと誰かに助けを求める事が出来るようになるまでのお話です。

そんな舞台だから、佐藤隆太さんはお客さんがどんな変化球を投げても
(ビックリするようなセリフを言っても)舞台を進めていかなければ
ならない。また、「●番!」と読み上げる番号も、必ずしも連番でなく
マイクランナーをする時もあるので、何番のカードは誰が持っているか
も記憶した上で進めなければならない。
ああ、開演前に時間を取っていたのは、カードの番号と座っている人の
場所を覚えていたんだな、と納得ではありますが、演者にとっても
非常にスリリングな作品だったと思います。

あとは、佐藤さんがこの役にピッタリなんですよね。
舞台で拝見するのが初見という訳でもないのですが、かといってすごく
記憶に残っている訳でもなかったので、この役に佐藤さんを抜擢した人
本当にすごい!と思いましたよ。
まさに、内容的にも同じ作品は二度と上演されない、というのも
演劇ならでは、だと思うし、楽しんでいる人が沢山いらっしゃったようで
演劇、芝居と言うものが身近に感じてもらえる作品だったかも、と
思いました。

非常に戯曲もよく出来ており、キャストもハマっていて、素敵な作品
だったと思いますが、その一方で、私はやはりこういう体験型の舞台
(今は「イマーシブ・シアター」って言うんですよね?)はやはり
苦手だな、という事を再確認しました。
どうしてもその場で観客に演技をさせるので「〜してください」とか
「ありがとうございます」という現実の会話が随所に差し込まれますし、
「もしかして私が当てられたらどうしよう」とドキドキもします。
私は完全にその芝居の世界に没入して観たいタイプなので、こういう事があると
ちょくちょく現実に引き戻されてしまって、没入できないんですよね・・。
(ミュージカルで曲の後に拍手をしたり、手拍子が苦手なのも同じ理由)
感情の持って行き方が不器用だとか、自意識過剰なんだろ、と言われたら
返す言葉は何も無いんですけど・・。

こういう演劇がこれから増えてくるのも分かりますし、そのこと自体は
良いことだと思いますので、決して否定派ではありません。
2.5次元含め、いろんな形態の作品が上演されたらいいと思います。
あくまでこれは私の好み、という事で。

アフタートークでもしっかりお話を伺う事が出来ました。
いい意味で佐藤隆太さんは、テレビで観る時と受ける印象が変わらなくて
太陽のような、少年のような方であり、気遣いのできる方なんですね。
とても素敵な方だー!と改めて思いましたとさ。