2泊3日の観劇遠征。まずは宿に荷物を置いてから与野本間町へ。
このシリーズもあと3本ですね。

ヘンリー八世彩の国シェイクスピア・シリーズ第35弾
「ヘンリー八世」彩の国さいたま芸術劇場大ホールG列
13:00開演、16:20終演
原作:W. シェイクスピア  演出:吉田鋼太郎
出演:阿部寛、吉田鋼太郎、金子大地、宮本裕子、山谷花純、谷田 歩、河内大和、大石継太、鈴木彰紀 ほか
【あらすじ】
英国王ヘンリー八世の宮殿では、ウルジー枢機卿が勢力を強めている。国王の寵愛を受けながら、出世のために策略をめぐらし高慢なウルジーは公爵たちの非難の的になっている。そんな中、学識高く才能をもつバッキンガム公が、ウルジーの陰謀によって裁判にかけられ、冤罪により死刑となった。ある晩、王はウルジー邸の晩餐会で王妃に仕える女官アン・ブリンに心奪われる。王は王妃キャサリンとの結婚を無効にしようと離婚裁判を起こすが、キャサリンは自身の敵であるウルジーが審判する裁判への出頭を拒否、ウルジーもまた自分の得にならない離婚裁判の延期を謀るが……



「ヘンリー八世」を演劇で拝見するのは初めて。
上演している・・と言う話は、少なくとも私は聞いた事が無い。
以前、鵜山さんのシェイクスピア講座に参加した時に、残った3作
(「ヘンリー八世」と「ジョン王」「終わりよければすべてよし」)
のうち、どれを演出してみたいか?と聞かれて「全部イヤ」と
答えていらっしゃったし(笑)、蜷川さんも生前、やりたいものから
上演していってしまったので・・(残ったのをどうしよう?という意)
とインタビューにお答えになっていたんですよね。

一体、どんな戯曲なんだ、と(笑)。
興味が5割、ビビる気持ちが 5割・・って感じでしょうか。
ちなみに、劇場に入る際には、劇中で使うと言われて、こんな
小旗が手渡されました。(10僉滷鍬僂阿蕕いな?)

小旗









結論から言うと、ビビるような作品ではありませんでした(笑)。

舞台上、上のほう(っていうか奥のほう?)にはパイプオルガンがあり
2階建てになっていて、2階部分には左右の廊下というか回廊があって
中央には、下に降りてくる階段があります。
その階段の上には大きな絵が掛けられていて、ヘンリー八世(阿部寛)
とフランソワ一世(横田栄司・絵のみの出演)が描かれ、その真ん中に
ウルジー枢機卿(吉田鋼太郎)が描かれています。
ヘンリー五世でフランス王を演じた横田さんがフランソワ一世役って言うのに
思わずクスっとしちゃいます(笑)。

原作を読んでいないので何とも言いようがない所もありますが
全体に「何が言いたかった?」という作品です(笑)。
まずは、ウルジー卿の暴君ぶりが描かれ、ヘンリー王がアン・ブーリンを
見初めて結婚し、妃だったキャサリンが失意のうちに亡くなり、
ウルジー卿が失脚し、エリザベスの洗礼式で終わる・・という流れ。
それぞれのパーツごとには面白いし、山場もあるのだけど、全体を
通してみると「ん?」と思う部分も無きにしも非ず。

一本で大きく貫かれている柱のようなものが、今一つボンヤリ・・で。
ウルジー卿の暴君ぶりと失脚が柱なのかしらねー、と思ったりもするけど
ヘンリー八世ヨイショの話なのかねー、でもインパクト弱いよねーとか。
でも、他の方の感想を拝見する限りでは、もっとダメダメだった原作が
かなり観やすくなっている、とのこと。
なので、戯曲としては凄く記憶に残るものではないのが正直な所なんですが
悪い印象が残らなかったのは、舞台作品として見所が多かった・・
という事なのかな、と思います。

何といっても、シェイクスピア俳優・吉田鋼太郎を堪能できた事!
これが一番私にとっては大きかった。
最初に鋼太郎さんを拝見したのが「天保十二年のシェイクスピア」で
記憶に残っているのが「タイタス・アンドロニカス」。まさに私の中では
朗々とセリフを放つ、声のでかい俳優さんのイメージが大きかったし、
そんな鋼太郎さんが好きだったのですが、最近は映像の仕事も増えてきて
舞台でも、自分がメインに立つと言うよりは、若者を育てる的なポジション
での出演が多くなってきていて、ちょっと物足りなかったのですよね。

まあ・・・嫌らしいヤツな訳ですよ、ウルジー枢機卿って。
口が上手くて、計算高くて、常に打算的で。
キャサリンに迫る時の表情のいやらしさ(性的な嫌らしさではない)
と言ったら・・・!と言う表情なんですよね。
だから「キャサリン、そこでウルジーの口車に乗ってしまったらダメよ!」と
思わず思ってしまう程なんですが、でも同時に「ああ、私がキャサリンだった
としたら、同じように言ってしまうだろうな」とも思えて。

で、その素晴らしくイヤなヤツを際立たせているのが、クロムウェルを演じた
鈴木彰紀さん。私が今注目している俳優さんです(笑)。
原作にはない解釈だそうですが、ウルジー卿とクロムウェルはどうやら
恋愛関係にあり、ウルジー卿の手紙を部屋から盗んで暴露し、失脚させる・・
という、何ともオイシイ役なのですが、なかなか麗しいビジュアルなので
ウルジー卿が彼を可愛がるのも、あり得るよね・・という説得力もあるし
「ボク、何もできない〜」みたいなあざとい事をやりそうなキャラを
とてもうまく演じていらっしゃって、相乗効果で二人ともとても良かった。
ああ、この光景を蜷川さんがご覧になったら、どう思われるかなぁ・・
と、一人で胸熱になっていた私です。

そして、とても印象に残ったのはヘンリー八世の妃だったキャサリン。
演じた宮本裕子さんが素晴らしくて。
お召しになっていたディープブルーのドレスがとてもお似合いで、
彼女の気高さ、聡明さを際立たせていたんですよね。
だから、そんなキャサリンを捨てようとするヘンリー八世が、相対的に
ダメ男にしか見えなくなってくるんですが(爆)。

ヘンリー八世は私でも、「無いわ〜」と思うイギリス王なんですよね。
世の中が安定していたから王で居られただけで、女狂いで自分勝手・・
というイメージしか無い(笑)。エリザベスが生まれた時も「女児かよ」
みたいな表情を一瞬していて、クズ確定だ!と思いました。
(↑ もちろんそういう演技が出来ている阿部さんが凄い、と言う意味です(笑)。)
オープニングも、彼の好色ぶりをイメージさせるベッドシーンでしたしね。
この戯曲では、多少「王の偉大さ」みたいなものも描かれているように
思わなくはないんだけど、結局はウルジー卿にいいようにあしらわれていた
訳ですからね(笑)。だから、演じる側もどういうスタンスで演じるのか・・って
掴みづらいんじゃないかな、なんて勝手に思ったりして。
全体に影の薄い役だったな、と思います。(鋼太郎さんが濃すぎたかも(笑)?)

最後は、エリザベスの洗礼式を国民が盛大に祝う・・という体で、
客席の私たちも、入場の時に渡された小旗を一斉に振って、ヘンリー八世や
アン・ブーリン等をお迎えする・・という演出になっていました。
客席参加型は苦手とはいえ、これ位なら大丈夫(笑)。
後ろを少し振り返ると、客席一杯に旗が振られている様子を見るのは圧巻で、
国民に祝福される「王」と言うものの存在が、ちょっと分かったような気もします。

全体に観やすくて、クスっと笑えるところもあった1本。
残念ながら、私が観た数日後にコロナウイルスの関係で休演となってしまい
結局、大阪公演も中止となってしまったため、この作品を観られたのは
ある意味ちょっとした奇跡のようなものでした。
こうなったら、シリーズ最後までちゃんと見届けなければ!