遠征最終日。朝ごはんを食べに行って、まだ時間があるので何か
美術展でも・・と思ったのですが、どうにも前向きになれなくて
結局コーヒーショップに居座り、読書で2時間(笑)。
ま、普段出来ない事が出来るのが遠征時のいいトコよね、と思いつつ
下北沢へ向かいました。

往転KAKUTA presents Monkey Biz#1
「往転」本多劇場 A列
作・演出:桑原裕子
出演:峯村リエ、入江雅人、小島聖、米村亮太朗、米村亮太朗、多田香織、置田浩紳、森崎健康、吉田紗也美、長村航希、成清正紀、岡まゆみ
【あらすじ】
その夜、《福島・仙台ゆき》の長距離バスに乗っていたのは、運転手合わせ7名。彼らは新宿バスターミナルを真夜中に出発し、朝にはそれぞれの町へ到着しているはずだった。だが、そのバスは横転事故を起こし、雨嵐吹く山の中へと放り出された。乗車していた者たちのうち2名が死亡、3名が重軽傷。そして残る2名は、未だ行方不明のままである―



私は高田聖子さんが出演された初演を観ています。
その時はバスの模型をカメラでリアルタイムに撮影するという演出と、
下手に2台のベッドが置いてある(2人が寝ている)、という事を
強烈に覚えていたのですが、詳細な点は覚えていなかったんですよね。
ただ「面白かった」ことは覚えていたので、これはまた観たい!と。
なかなかハードな日程になる事は分かっていましたが、チケットを
GETしていたのでした。





今回はベッドは上手側に2台。下手側に萩田宣子(峰村リエ)の部屋。
詳しく覚えていないものの、「ああ、そうそう、そんな感じ」という
懐かしさを覚えるセットです。

これは「アンチェイン・マイ・ハート」「桃」「いきたい」「横転」の
4つのお話がそれぞれにあるんだけど、それぞれの登場人物が
ある夜行バスの乗客であり、その夜行バスの横転事故に遭う、という点が
繋がっている・・というお話です。

その中でも恐らく一番核となるのが「アンチェイン・マイ・ハート」。
この部分は初演でも覚えているパートです。
冴えない中年の女性がいて、微妙な距離感の不倫相手がいる。
迷惑ばっかりかける母親だったけど、その母親が亡くなって、その遺骨を
兄弟たちに配って回る・・というお話です。
男も仕事をリストラされて家に帰るに帰れず、久しぶりに不倫相手の
家に行ってみたら、女は母親を亡くしていて、まるで自分の足りないところ
不安な部分を補い合うかのように、女の遺骨配りに同行する男。
この、相手の事は好きだけど、男をを頼りきれない(不倫だからね)所や
男の煮え切らない所は、なんだ「ああ、こういうのありそう」と思える。
無理やりバスを下車させて、女だけが事故で死亡し、男が生き残ったのは
とても切ないエンディングではあったけど、女としてはきっと
「ああ、あの時降ろして良かった」と思っているだろうな・・と思える、
ハッピーエンド感、あります。
一緒にあの事故で亡くなってしまうよりも、生き残って弔ってもらえて
幸せだったんじゃないかな、と。
何ていうのかな、この控えめな感じがこれぐらいの年齢になると沁みる・・。

「アンチェイン・マイ・ハート」と同様に事故前〜事故後までのお話が
「横転」です。もう・・・照美さん(岡まゆみ)最高(笑)!
初演では今回は萩田宣子を演じていた峰村リエさんが演じていたんですけど
傍若無人なオバチャンぶりがね、逆に彼女の本当の状況を知ると
(実は自分の娘に金をせびりに来ていた)切なさを際立たせるんですよ。
でも、心底迷惑に感じていたはずのキムジノン(成清正紀)もそんな
彼女の切なさに、人としての気持ちを思い出したんだろうな・・と
思わずにはいられない、緊急搬送のシーン。
これはこれで、ハッピーエンドな感じ。

そして、この二つとは違って、事故後の話を描いているのが
「桃」と「いきたい」の2つですね。
最初は「桃」に出てきた小島聖さんが誰か分からなかったぐらい(いや
正確には最前列だからよく見えるし、顔も声も小島聖さんだとは
分かったのだけど)ガリガリに痩せているし、その痩せ方もなんだか
美しくないというか、不幸ではすっぱな津川浅子という役にピッタリ。
めっちゃ謎めいてるし、不幸オーラもすごい。
最初は「図々しい女だ」と思うのだけど、最後には「幸せになってほしい」
と思わせるって、上手いなぁ、と思います。脚本も小島さんも。

初演では「いきたい」の部分は、どうもここだけ異質に見えてしまい
んーって思ったんですよね、ここ、無くてもよくね?的な。
でも今回はそういう印象はなかったんです、何でだろう。
それぞれのお話には「何かが欠けたり不足感がある人」が出てくる
んだけど、それに気づけていない人達なんですよね。
だから、自分自身の事に全く気付けていない知花(吉田沙也美)は
その象徴のようでもあるし、自分自身の病気や、実際に起きていと
思っていたこと(同室の庵野クンと話していたこと)が自分の
思い込みだったとわかったことで、なんとなく全体のすわりがよく
なったな、というか、全体を集約しているような印象でした。

時間も前後するし、パーツがバラバラに進んでいくこともあって
なかなかクロージングしていかない印象を持つ方がいるかも。
でも、ちゃんと最後にストンと全部が落ち着くべきところに落ち着き
穏やかな気持ちになれる、そんな作品でした。
やっぱり観に行ってよかったな。

終演後には入江雅人さんの一人芝居もあると当日知りまして。
この日はこの後埼玉へ移動しなければならないため、どうしよう・・と
いったんは劇場を出たのですが、やっぱり観たいな、と舞い戻り
別の席で拝見させていただきました。
「帰郷」のようなゾンビもの。そうか、入江さんはゾンビのお話を
よく書いている人なんだな(笑)。
一人芝居まで観られて、お得な1本でした。

今思えば、千秋楽まで公演が続けられたのはこの作品が最後ぐらい
なんじゃないでしょうか。
KAKUTAの作品はいずれ、また観てみたいな・・と思います。
桑原さんは豊橋のPLATとご縁のある方でもあるので、豊橋で今後も
KAKUTAの舞台を公演してくれると嬉しいなぁ。