下北沢を離脱して向かったのは与野本町。
一昨日にも与野本町へ来ていたんだけど、遠方だし、出来ればマチソワで
一日にまとめてしまいたかったんですが、上手くいかないものです。

誰にも知られずに死ぬ朝
た組。第20回目公演「誰にも知られずに死ぬ朝」
彩の国さいたま芸術劇場 小ホールH列
19:00開演、21:25終演
作・演出:加藤拓也
出演:村川絵梨、平原テツ、安達祐実、尾上寛之、鳥谷宏之、藤原季節、伊藤梨沙子、山木透、木本花音、中嶋朋子
【あらすじ】
歩美は19歳ぐらいの見た目の時に成長が止まり、死んでは生き返りを繰り返し死ねないでいる。自分より早くに好きな人が死んでしまう事を恐れ、恋も愛も縁の無いものと思っていた所で恋に落ち、やがて良嗣と結婚をする。医師でもある良嗣は死ねない歩美の為に、一緒に死ぬべく、何度も歩美を“殺し”、彼女の体の秘密を解明しようと取り組むのだった。
周りが年を取ってゆくのに、自分は全く変わらない。良嗣は変わらず歩美を愛しているが、病魔に蝕まれ死期が近づいて来ることが判明する。ただ、まだ歩美が死ねる方法は見つからないままだった−


た組。は映像で作品を観た事があったので、一度は舞台を
観てみてもいいかな、と思っていた所でした。
何だかキャストも豪華ですしね。
さい芸の小ホールはずいぶん久しぶり。





さい芸の小ホールはすり鉢状のホールなのですが、低いステージ上には
ダイニングテーブルと椅子。天井からはペンダントライトが下がっている。
舞台の奥には小道具と思われる食器等が並んでいます。
そこに役者さんが板付きし、それぞれに片手をあげて「●才ぐらいやります」と
宣言(?)してスタンバイしていかれます。
安達祐実さんが「13歳」、村川絵梨さんが「19歳ぐらいに見えます」と。
この“ぐらいに見えます”がポイントなんですよね。
その理由は最初のシーンで分かります。
親子喧嘩の挙句、2階から飛び降りようとした13歳のりっちゃん(安達祐実)を
救おうとして、歩美(村川絵梨)が転落。あ・・・落ちた。動かない。
・・え、まじ?死んだとか?と思うと「痛い・・」と起き上がる歩美。

このエピソードを通して、歩美は“死ねない”体である、という事が分かります。
厳密に言うと、死ぬんだけど、すぐ生き返る。そして生き返った時には
死ぬ前のケガや病気は治っていて、リセットされた状態になる・・と。
成長も19歳ぐらいの見た目でストップしてしまい、歳を取らないという。
うわぁ、これ、SFでしたか。(別に苦手という訳ではないが)

歩美とその夫の良嗣、良嗣の兄夫婦と姪のりっちゃんはこの状況を
理解し、普通の家族と変わらず生活しているし、彼らの会話の中で
歩美夫婦のなれそめや、苦悩も明らかになっていきます。
死んでも生き返ってしまう自分、歳を取らない自分。年老いない自分は
定期的に周りに自分は死んだと思わせ、人間関係をリセットしてきた。
誰かを好きになっても相手が先に死んでしまう。哀しい想いをする事が
分かっているのだから、人との深いつながりを避けてきた。
そんな「死ねない」人の悲哀や孤独を書いた話。
割とSFモノなんかではちょくちょく出てくるテーマじゃないでしょうか。
舞台だと「天の敵」なんかも、近いものがありますね。

13歳だった姪っ子は結婚し、子供を産み、良嗣も年老いて病に。
見た目が変わらないから、リっちゃんの息子には「財産目当ての結婚では」
と疎まれてしまう。歩美が恐れていた時がやって来てしまうんですよね。
「一緒に死のう」と言っていたのに、自分を置いて死んでしまった良嗣。
もう、このシーンではあちこちですすり泣きですよ。
必死に人とのつながりを持たないようにしようとしてきた歩美に、自分が
死ぬまで必死に向き合ってきた良嗣の想いに、泣かされちゃいます。
情熱的!って訳じゃないんだけど、ひたむきさが伝わって来て
とても素敵な夫婦だな、と思いました。

歩美は包丁を自分に突き立て、内臓を引っ張り出し、切り刻み
死のうとするのに・・やっぱり生き帰ってしまう。
自分の内臓を持って歩きながら話すって・・シュールすぎる(爆)。
本来は「ここまでやっても死ねないの!!」と絶望するようなシーンにも
淡々と話す歩美が痛々しかった。
結局良嗣は「若いから、一番長く生きるだろうから」と歩美宛ての手紙を
りっちゃんの息子に託していたのだけど、自動車事故に遭ってしまう。
若いからといって、一番長く生きるとは限らないのよね。
確かに、良嗣を好きにならなかったら、悲しむことは無かったのかも
しれない。だけど、歩美は結婚して良かったと思ったんじゃないかな
というか、思って欲しいな・・。

結婚って、戸籍どうなってるのよ?とか、家族は知っていても
ご近所とか周りの人は不信に思わないの?とか、身分証明書が無いと
いまどき家も借りられないし、仕事にも就けないし、どうするわけ?とか
突っ込みどころは多いんだけど(「天の敵」はその辺りはクリアだったな)
まあ、そんな無粋な事は止めておきましょうか(笑)。

結局その手紙に何が書かれていたのか、歩美はその後どうなったのか・・
については何も語られないまま、幕となります。
こういう終わり方、恐らく加藤さんらしいんだろうな。

役者さんは皆さん達者な方ばかり。
安達さんは本当に子どものようにも見えるし、お綺麗でビックリ。
村川さんの淡々とした達観したような話し方や表情も切なかった・・。

以前、何かのインタビューで、加藤さんは「普通のように話す」という
演出をつけている、というのを観た記憶があります。
その影響なのか、ボソボソしていてセリフが聞き取りづらいんですよ。
私の耳が悪いのかもしれませんし、役者がテーブルを囲んで話すシーンが
多い(客席に背を向けている)からかもしれませんが。
初見の方は殆どいらっしゃらなくて、皆さん他の舞台で拝見した時には
そんな事、思ったことも無かったんですけど・・。それがちょっと残念かな。
あと、セリフのテンポやリフレインの使い方なんかは、マームの
藤田さんの演出を思い出す所もありました。

きっと、ポリシーを持って演出に取り組まれる方なんだろうな、と
思いますが、ちょっと演劇と言うものを斜に構えて見ている方なのかも
しれない・・なんて、舞台を観て思ったりもしたのでした。

ちなみに終演したのが21:26。与野本町の駅を21:34発の電車に
どうしても乗りたくて、劇場を出てから猛ダッシュ!
ほぼ全て走り通して、電車到着の2分ぐらい前にホームに到着しました。
頑張ったよ、私(笑)。
無事、その後で名古屋行の夜行高速バスに乗車して帰宅する事が出来ました!