大好きなイキウメの春公演。前回の「まとめ(上)」を観た時
「短編もいいけど、ストーリー性の高い長編をやって欲しい」と
書いていたのですが、「まとめ(下)」はまさにソレ。嬉しい〜♪

獣の柱「獣の柱 まとめ*図書館的人生(下)」
シアタートラム 最前列
18:00開演、20:15終演
作・演出:前川知大
出演:浜田信也、伊勢佳世、安井順平、大窪人衛、池田成志、岩本幸子、盛隆二、森下創、加茂杏子

【あらすじ】
2008年。アマチュア天文家の二階堂は小さな隕石を拾う。その隕石は見る者を夢中にさせ、思考を奪い、恐ろしいほどの幸福感をもたらした。それから1年後、あらゆる都市に巨大な柱が降り注いだ。柱は人々にあきれるほどの祝福を与え、静寂のうちに支配した。2096年高知県。山間の町、風輪町。柱によって世界は大きく変わった−。



劇団員に客演がなるしー。なるしーは「奇ッ怪」に出ていたので
前川作品に出演しているのは想像がつく。
この作品のベースになる2008年の「瞬きさせない宇宙の幸福」は
先日DVDで観た限りでは、とても面白かったし、Twitterで
覗いた限りでは「散歩する侵略者」以来の傑作とか書かれていたり
もするので、とーっても楽しみでした。
マチネで観た知り合いからも「面白かった!」というメール報告が
届いていたので、なおさら期待大でした♪

感想・・・書きづらい作品でした(笑)。
つらつらと書いていたら、無駄に長くなってしまいまして・・。
まあ、ご興味のある方だけどうぞ。

劇団の代表作の一つになり得る作品かな、と思いました。



Twitterで成志さんが「難しい、難しい」と呟いていたのが印象的
だったのですが、芝居としてはイキウメの定番というか、私の好きな
タイプのお芝居でした。SFだけど普遍性もあり、メッセージ性があって、
最後には希望も感じられる−。
笑いもあり、決して重苦しくは無いんだけど、実は深いというか。
終末論的な感じは「太陽」と似ていますが、あそこまでストレートでもなく
もっと余白がある感じの作品、と言う印象でした。

私は事前に短編を観ていたので、隕石を“御柱様”として神格化し
神主が盲目の人だったことに「ああ、そうやって生活を取り戻したか」
と最初に思いましたが、事前に「瞬きさせない宇宙の幸福」を観て
いなくても、これは上手く回想シーンで取りこまれているので問題なし。

最初に短編を観た時にも、暗示的に使われているなーと思ったのが
「7人のラッパ吹き」。ヨハネの黙示録に出てくるんですね。
私は聖書には詳しくないのだけど、天使がラッパを吹くと
「地上の三分の一を焼き払う」「海の三分の一を減らす」
「地上の川の三分の一を毒にする」「昼の時間を三分の一に減らす」
「アバドンを呼び出す」「地上の人間の三分の一を殺させる」
「神の支配を告げる。そしてキリスト教徒でない残りの地上の人間を滅ぼすため、雷や大地震を起こし、さらに大粒の雹を地上に降らす」

のだとか。ラッパって何だろう?と思うと、それはもしかして何かの
予告、警告なのかしら?なんて思ったり。
作品の中でも「隕石」は「予告」だったのではないか、その「予告」に
気付かなかったから、1年後「柱」が降ってきたのではないか、って
言っていましたよね。

じゃあその「柱」は誰が落としたのか?
増えすぎた人口を調節するため、国を横断した何らかの組織?
地球環境が破壊される事に対して自己防衛した地球の力?
あるいはテロ組織?それとも神?
・・・そこに答えを求めないのが前川さんらしいというか「なぜ起きた」
よりも「それからどうする」がテーマなんだと思います。

でも毎回思うけど、前川さんの発想ってすごいよね。
“爆弾で殺す”とかよりインパクトあるもん。“最高の安楽死”と言って
自ら柱を見たまま命を落としたラッパ屋の奥さんも切なければ、
自分達が生き残る為に、高齢者を柱の前に突き出すってのも・・。
「苦しくない死」という言い訳が、むしろ惨いというか。

最初は柱に対して抵抗もしただろうけど、結局は「柱」がある事を
受け入れ、疑問に思わなくなる人たち。
柱の力を“神格化してはいけない”と思う人が居た一方で、柱を
“神”としてしまう事で、帳尻を合わせ、日々の安寧を得た人たち。
「禁止するよりも管理する」
それも一つの方法論ではあるけれど、その力を密かに利用しようと
する人たちも居るわけで、どうしてもそれらを現実世界と重ね
合わせてしまいます。
例えば原発だってそうだと思うんですよね。
(前川さんがそう意図したかどうかは分かりませんが)

「柱が見える人(=柱の影響を受けない人)」の力を借りて、柱を
克服しようという市長。うんうん、そうだよね、と思う私。
けど、山田はそれに疑問を感じ続ける。柱を克服しようと考える事
それ自体が既に柱に支配されているのだと。街を出て、新しく
世界を作り出さなければ、結局根本的に変わらないという。
ああこの流れ、前川さんらしいわーって思う。私の引き出しにない考え。

“柱の大使”となって、輝夫の子供(山田寛輝の父)の前にも現れた
二階堂望。多分、輝夫の子供にも同じように「よくやったよ」って
声を掛けたんだろうな。そしてその言葉に、すごく報われた気持ちに
なったんだろうな・・と、少しホッコリできたシーンでした。

舞台の上手・下手には背の高く埃をかぶった書架。そして呼吸音の
ような微かなSE、スツールだけが「まとめ(上)」を連想させます。
逆に言うと、それ以外は完全に別と思って差し支えないでしょうね。
ただ、これも“人類が取り得る可能性の一つ”として書かれた
1冊の本のお話なのだとすると、ちょっと姿勢を正して考えたくなる
そんな気持ちになりました。
物事の良い面ばかりを見たり聞いたり(あるいは見せられたり
聞かされたり)して、自分自身で考え、判断する事を放棄していないか
鈍感になっていないか?と問われたような気持にもなりました。

今回浜田さんのハジケっぷりには目を奪われましたが(笑)、私的には
安井さんがナンバー1。やっぱりいいなあ、大好きです。
彼でなければこの役はきっとダメだっただろう、と思わせてくれる。
成志さん、今回は「ニャー語」は封印で(笑)、とても真面目に演じて
いらっしゃったのが印象的です。
成志さんの“イヤな奴”度は素晴らしいのですが(笑)、でもその分、
奥さんに対する思いも伝わってきて、良かったですねぇ・・・。

やはりイキウメは前川さんの作・演出であればこそ、と思います。
今回はストーリーの事ばかり書いてしまいましたが、暗転をあまり
使わないシームレスな演出はやはり大好きですし。
秋の公演は青山円形劇場とか。秋も必ず行きますよ、楽しみにしてます。