これはキャストからも絶対観たいなあと思った1本。
青山円形劇場で堤さんが観られるなんて、めちゃくちゃ贅沢。
でもその分「チケット取れねーし」、と戦わずして土日観劇は断念。
わざわざ有給をとってやって来た、という訳です(笑)。

断色「断色」青山円形劇場 1列目
14:00開演、14:50終演
作:青木豪  演出:いのうえひでのり
出演:堤真一、麻生久美子、田中哲司

【あらすじ】
近い未来。自然農法の畑作を行う小杉保(堤 真一)の所に怪しげな保険外交員の刈谷(田中哲司)がやって来て 「腎臓ガンで亡くなったお母様・小杉朝子(麻生久美子)は生前、自身のクローンをお作りになりました。」と伝える。母は臓器移植を想定し、ドナーとしてのクローンを作成する“クローン保険”に入っていたのだ。「臓器移植は行いましたが、お母様は合併症でお亡くなりになりました。残されたクローンは処分しますか、解放しますか?」刈谷の質問に「え、どうゆうこと?」と困惑する保。保険で作られたクローンは本人が亡くなると、殺されるか、普通の生活を営むかの選択をしなければならないと言うのだ。母親の遺した保険が、保を奇妙な運命へと導いていった。



思いがけず最前列でございました。ビバ!平日昼公演(笑)。
これはおにぎりが「断食」として上演した作品をリライトしたものだとか。
おにぎり公演は観たかったけど、上演期間が極端に短くて
断念したんですよねぇ。

やっぱり円形劇場での舞台って好き。
堤さんのキュートさ、田中さんのはじけっぷり、
麻生さんの体当たり演技と、想像以上に引き込まれた作品でした。
いのうえひでのりさん演出の舞台にしては、驚くほど際どい下ネタが
満載で、どんな顔して観たらいいのか・・と思うほどでした(笑)。

開演すると円形劇場2階、私の正面の位置に演出のいのうえひでのり
さんがいらっしゃって、最後まで腕組みをしたまま舞台を凝視されて
いらっしゃいました。なんか怖かった(笑)。




円形劇場の形状の特徴を活かした映像の使い方が印象的ですね。
演出自体はそれ程円形劇場ならでは!と言うほどではなかったけど
やっぱりこの劇場はいいですよね。本当に無くなっちゃうのかしら・・。

舞台自体はまずはお気楽というか、下ネタ満載で進みます(笑)。
植物がちゃんと育たなくなってしまった世界で、遺伝子操作ではなく
自然農法で食物を育てようとする小杉保(堤真一)。
そこに突然訪れる保険会社の社員の刈谷基(田中哲司)。
職務に忠実というか、面白みのない感じがするので私は最初は
この刈谷も誰かのクローンで、解放された1人なのかと思ってました。
そして母親のクローンである夕子(麻生久美子)。

保の能天気さと、それにイラっとしながらも話を進めるビジネスマン
の刈谷、まだ“人間”としては知識面も情緒面も未熟なゆえに
すっとぼけた発言を繰り返すクローンの夕子の掛け合いに
笑っていられます。感情を持たないように教育され、外界と遮断
された生活をしていたためにその“言葉”と、“言葉の持つ意味”
がよく分からず、また“羞恥心”などもない訳で、およそここには
書けないような下ネタ単語があのおキレイな麻生さんの口から
ポンポンと出てきてしまって、(しかも表情を全く変えないで)
その事に軽くのけぞってしまいます(笑)。
(そのうち“言葉”だけじゃなくなってきて、最前列に居るものだから
どういう顔して観たらいいのかしら?と思うほどでした)

それが、時々麻生さんが演じるのは保の母親である“朝子”なのか、
クローンの“夕子”なのかが分からなくなってきます。
その“朝子”は保の見る幻影なのか、それともDNAに刷り込まれた
過去の記憶の再現なのかは分からないのですが・・。
でも後半になると、それは“保”のDNAに刷り込まれた記憶の
フラッシュバックなのかもしれない、と思うようになりました。
息子が母を、母が息子を思う気持ちが見せたものなのかも・・と。

まあ、とにかく後味が悪いったら(笑)。←批判ではないですよ。
演劇としてはこういう感覚を残せる舞台は決して嫌いじゃありません。

まあまずこの「クローン保険」ですね。
自分への臓器提供などを想定してクローンを作製しておく・・・
という発想は、あながち絵空事と思えなくて、そう感じてしまった
自分自身がなにか怖かったりもします。
また、汚染されてしまった土地とか、子供が生まれなくなったとか
食物も工場で“製造”するとか、これまた絵空事とは思えなくて
背筋が少しヒンヤリするような感覚も。
朝子の“母親”と“女”としての性、保の母に対する思慕の思いと
浮気を許せない気持ち、そしてクローンの保を息子と思えないどころか
憎しみを覚えて殺そうとまでした父親の存在。
・・・・そして、クローン保険の本当のビジネスモデル。

観終わってからフライヤーのイラストを見ると、あの苺の赤色の
鮮やかさが毒々しく思えて仕方ありませんでした。

堤さんは弱さも含めてキュートです。最前列で眼福、眼福♪
麻生さんは舞台で拝見するのは初めてなのですが、本当にお綺麗。
肌なんて陶器みたいで(笑)。だからこそあの生々しい発言との
ギャップが面白かったのかもしれません。
そして田中哲司さん。ああもう、いやな奴度全開。ふり幅の広い
役者さんだなあと思います。(でも私はこういう役をしているタナテツさん
の方が好きです♪)

上演時に配布されたパンフ(っていうのか?)を読んで、エグゼクティブ
プロデューサーである細川さんのコメントの中に見つけた
「芝居という世界に少し距離をおこうかと考えております」の一文。
劇場でもよく拝見した方ですが、今までの劇団☆新感線公演の
エグゼクティブプロデューサーでもあり、新感線の方向性を形造って
きた方のお一人。演目決定やキャスティングのエピソードの中に
細川さんのお名前もよく拝見しておりましたから。
暫く劇団☆新感線が劇団公演の上演期間が空くのも、もしかすると
そういう背景があるのかもしれませんね。