夜行高速バスで上京したため、朝には余裕あり。
(ていうか、朝しか余裕が無い)
納涼歌舞伎は観に行きたかったので、せめて1幕だけでも!と。

八月納涼歌舞伎「八月納涼歌舞伎」第一部 幕見
新版歌祭文『野崎村』

出演:福助、扇雀、七之助、彌十郎、東蔵

【あらすじ】
野崎村の久作の家では、久作の後妻の連れ子お光が、かねてより慕っていた養子の久松との祝言を控え、嬉しさを隠せない様子。そこへ、久松が丁稚奉公をしていた油屋のひとり娘お染がやって来ます。かつて恋仲であったお染と久松の心中の覚悟を知ったお光は自ら身を引き、尼となる決意をします。迎えに来た油屋の後家お常の配慮により、久松は駕籠、お染は舟で別々に野崎村を後にする姿を、お光は涙ながらに見送るのだった。



平日公演の1部なのに、幕見は立見まで出ていました!




最初はコミカルなんですよね。
自分の婚約者を訪ねてきた、見ず知らずの美しい娘・お染に
お光が嫉妬したり、小さな意地悪をしたり。

七之助丈演じるお染は、思いもかけない行動力を見せたり、
説得されて、素直に久松を諦めようとする辺りなんて、
育ちのいい世間知らずのお譲ちゃん。

お前には自分の意志と言うものがないのか?
と思わず口を突いてしまいそうな優柔不断な優男が久作。
何でこんな男がこんなにモテるのかしら(笑)?

そんな“歌舞伎的キャラクター”ばかりの出演者の中でお光の
父親・久作の人間味がとにかく心に沁みる作品。
彌十郎さん、本当に素敵。
娘が、望んだ相手と結婚できるように相手の男性を説得する
所は、なんとも人間臭いし、娘を思う気持ちが伝わってきます。

あんなにキャピキャピしていた娘が、驚くほど静かになった時は
(「そんなに簡単に諦めるんかいっ?」と思いますよねぇ)
「歌舞伎っぽいねぇ」と思ったものの、それは、実は彼女なりの
プライドだったのですね。
毅然と久松を見送り、姿が見えなくなった途端に泣き崩れ、
父親に泣き付く姿をみて、それが分かる。
今までとはゼンゼンちがう、本当に人間らしい泣き方で、
文字にすると“ワンワン泣く”って感じ。
急にお光がいじらしく思えてきちゃう。
そんな娘を「馬鹿なヤツだ」と思いながらも、泣きたいだけ
泣かせてやり、やせ我慢していた娘を愛しく感じている父親の
愛情も伝わってきて・・・このシーンだけで私の心は鷲掴まれ状態。

あと一歩で泣きそうでした(涙)。


正直、そこまで期待していなかったので、すごく得した気分。
観に行って良かった〜!!