これは新国立の今シーズンの作品の中で一番観たかった1本。
だって、このキャストですから〜♪
あと、イキウメの伊勢佳世ちゃんが外部出演だしね。なんか親心(笑)。

OPUS「OPUS/作品」新国立劇場小ホール最前列
13:00開演、14:55終演
作:マイケル・ホリンガー  演出:小川絵梨子
出演:段田安則、相島一之、加藤虎之介、伊勢佳世、近藤芳正

【あらすじ】
弦楽四重奏団Lazara Quartet (ラザーラ・カルテット)は、ホワイトハウスでの演奏会が決まっているというのにメンバーの一人、ドリアンを解雇、急遽グレイスという若い女性が加入する。女の子が大好きなアランは大喜び。新生カルテットは、演奏会に難曲であるベートーベンの作品131を選ぶ。限られた時間の中でのリハーサルに奮闘するが、リーダーであるエリオットは空回りばかり。本番まで時間が迫りリハーサルは緊迫、カールの抱える秘密も発覚。不穏な空気が漂う中、どうにか無事に演奏会を終え楽屋に戻った4人の前に、突如としてドリアンが現れて……



日本初演ですが、書かれたのは06年とのことなので最近の作品。
センター舞台を囲むようなかたちの客席でした。
舞台模型
反射しちゃってるけど、舞台模型をパチリ。右上の白い戸枠の辺りが
私の席でございました。
それにしても、新国立って何故か観客の年齢層が高い・・・

私は知らなかったのですが「OPUS」は“作品”という意味だそうで
この作品のベースになる、ベートーベンの弦楽四重奏14番 作品131
“Op.131”と表記するんだそうです。
そして、作者のマイケル・ホリンガーさんは実際にヴィオラの奏者
でもあるんだそうです。



先日観た映画「25年目の弦楽四重奏」を思い出させる作品でした。
それまで問題なく機能していたカルテットが、1人抜けることによって
今までのバランスが崩れて、どんどん崩壊していく様であったりとか、
人としてのエゴや、音楽家として優先する事とか、共通するんですよね。
テーマになっているのがベートーベンの弦楽四重奏第14番っていうのも
全く同じ。この2作品、何か関係あるのかなあ?
それとも、どんなカルテットでも演奏したいと思う曲なのかしら。
ベートーベン会心の作と言われている位ですから、十分その偶然は
あり得るかもしれませんね。(なにせクラッシックは詳しくなくて。)
難易度の高い曲だそうなので、トライしてみたくなるのかな。

あとこの舞台の一つの特徴は、セリフをキャストが順々に紡いでいく
ということ。ちょっとリズムまで感じるような。これは“四重奏”を
意識しているのかなあ、なんて思ったりもしました。


第一バイオリンはエリオット(段田安則)。厳格で遊び心がない真面目
な男性。自信家だけど、利己的な面も。ドリアンの恋人でもあった。
オーケストラでの演奏をカルテットより下に見ている様子。

第二バイオリンはアラン(相島一之)。軽くて女好き。でもその軽さ故に
大らかなキャラで、加入したばかりのグレイスにとっては心を許せる
相手になっている。

チェロはカール(近藤芳正)。冷静でマイペース。言い争いになっても
基本的には巻き込まれないし、混乱を収めるのが上手い。女好きな
アランを諌めるシーンはちょっと笑える。でもガンが再発した事が発覚。

ヴィオラはドリアン(加藤虎之助)。エリオットの恋人で、エリオットに
絡みまくるのだけど、疎まれる。メンタル的に問題がある様子。
バイオリンに挑戦したい気持ちが高じてエリオットの楽器を持ち出し
その“一線を越えた”行動のために退団させられている。

退団させられたドリアンの後任で入団したグレイス(伊勢佳世)。
キャリアは無いものの、ピッツバーグ交響楽団の主席ヴィオラの
オーディションの声が掛かる程の実力の持ち主。(本人の自覚無し)


最初は、ドリアンの我儘や利己主義的な行動によって解雇されて
メンタル的にも問題があるから、そりゃ仕方ないわなあ・・と思って
観ていたのだけど、終盤になってドリアンの別の面が見えてくる。
オーディション前のグレイスに話しかける様子はとても優しかったし
悪意も意地の悪さも感じられず、楽器や音楽を愛している・・
っていう雰囲気が良く伝わって来たしね。


そしてラストシーン。
エリオットの代わりに、第一バイオリンとしてラザーラ・カルテットに
戻りたいと姿を現すドリアン。
一瞬「おいおい」と思う私は凡人。そこで「ドリアンの方が音楽的に
優れているから」と復帰を望む(エリオットを除く)3人は芸術家ですよね。
「どんなにトラブルメーカーでも、音楽的には向上した」という理由で
またメンバーに迎え入れようとするのだから。
映画を観た時にも思ったけど、芸術家として生きていくって大変・・。
ああでも“大変”と思うのは私が凡人だからかなあ。
目指す音楽という共通言語があれば、それだけで上手くやれるもの
なのかしら。

使っていたバイオリンを手渡したくないエリオットからバイオリンを
受け取ったカールが、そのバイオリンを叩きつけ、壊して幕−。
自分の余命の短さによる苛立ちもあったのかもしれない。
でも、その行為によって茫然と立ち尽くし、争いから目が覚めた
かのような5人。
余命が長くない事を知り、楽器で争う事(音楽についてではなく)に
終止符を打ちたい気持ちもあったのかもしれないし、衝撃的な行動
だったけど、それで皆が冷静になれたのかも・・・。



新国立のラインナップにしては分かり易い作品だったかも。
舞台では非常に活躍されている皆さんですが、共演は殆ど初めて
なんだとか。ちょっと意外です。
バイオリン
これは展示してあったバイオリンの小道具。
ラストシーンで壊すバイオリンなんだって。パッと見は普通の楽器
にしか見えないんだけど、“壊す用”に作ってるんですね。
少なくとも公演回数分+α・・。結構な数ですね(^_^;)。