なにかと忙しい今日この頃。そんな忙しい日々の原動力はお芝居♪
本日は関西地区で観劇のハシゴでございます。
まずは乗り慣れない阪急電車に乗って、西宮北口まで。

ヴェニスの商人彩の国シェイクスピア・シリーズ第28弾
「ヴェニスの商人」兵庫県芸術文化センター2列目
12:30開演、15:30終演
作:W.シェイクスピア 演出:蜷川幸雄
出演:市川猿之助、中村倫也、横田栄司、大野拓朗、間宮啓行、石井愃一、高橋克実、青山達三、手塚秀彰、木村靖司、大川ヒロキ、岡田 正、清家栄一、新川將人、鈴木 豊、市川段一郎、鈴木彰紀、隼太、坂辺一海、丸茂 睦(楽師) ほか

【あらすじ】
舞台は貿易都市ヴェニス。ある日、貿易商を営む裕福な紳士アントーニオのもとに、年下の親友バサーニオが借金の申込にやってくる。彼は才色兼備で大富豪の令嬢であるポーシャにプロポーズをしようとしており、そのための元手をアントーニオに頼ってきたのだ。生憎と全財産が海を渡る船の上にあったアントーニオは、自らを保証人として借金をするよう、バサーニオに勧める。ところがバサーニオが借金を申し込んだのは、よりによってアントーニオの天敵とも言うべき、高利貸のシャイロックだった―。



私とはいつも相性の悪い蜷川シェイクスピアですが、今回は2列目の
どセンター。このシリーズで一番前方になります♪
私としてはこのシリーズ16本目、残りはあと9作と言う事になりますね。
もう、こうなったらたとえ埼玉でしか公演が無かったとしても、遠征してでも
残り全てをコンプリートする気マンマンですから“行かない”選択肢は
無かったのですが、特に猿之助さんに興味がありました。
猿之助さんは、蜷川作品に出演するのは再演を含め4回目位でしょうか。
3作拝見した事がありますが、とても相性が良いという印象です。

「ヴェニスの商人」という作品を観るのは、6年ぶりかな?
市村正親さんと藤原竜也さんが主演の作品を観たことがあります
で、舞台が始まってすぐに思い出しました。

「ああ、とても不愉快なストーリだった」と(笑)。




舞台の前面には杭のようなポール状のものが何本も立てられていて
主に1幕では、このポールがあるのはヴェニスを表しています。

幕が上がると、そこには一面の壁と、遠近法を利用したヴェニスの街の
絵が背景にあります。前方席なので直ぐに“絵だな”とは分かりましたが
それでも十分に「おっ」と思うような景色です。

そこに出てきて眉間にシワを寄せ、憂鬱な顔をするのはアントーニオ。
隣の席の方がアントーニオが出てきた瞬間、手を叩いて爆笑。
(まあこの方たちは全体に爆竹拍手系の騒々しい方ではありましたが。)
「?」と思って見なおしてみると、アントーニオがフサフサの髪をした
高橋克実さんだったのですね(笑)。お似合いで素敵だったのですが、
“いつもの髪型”の方が若々しい印象かなあ。
落ち着いた会社経営者って感じですね。

そして、多分友情以上の気持ちをお互いに持っているバサーニオは
横田栄司さん。劇中で明言されている訳じゃないですが、ただの友情と
捉えるにはあまりにもアントーニオが献身的すぎるので、そう考えた方が
自然かなあ、と。シェイクスピア作品にはちょくちょくこういう関係が
出てきますしね。

オールメールシリーズの代名詞とも言える月川君が今回は不参加で
女性役を引っ張ったのはポーシャを演じた中村倫也さん。
以前も女役で拝見した事があるので“美しい女性”は想像通り。
本当にデコルテが白くて驚くわ(笑)。
男性判事役をやると、いい感じの“別人感”が出ていて、オールメールに
合った設定だなあ、なんて思ったり。
バサーニオが“箱”を当てて、ポーシャと結ばれる事になった時なんて
涙を流しての熱演でした。

最初にこの演目を聞いた時には「ポーシャを演じるのか?」と思った
市川猿之助さんはシャイロックでした。
何と言っても猿之助さんの存在感がすごい。
シャイロックをどう演出するかがこの作品の方向性を決める
と言っても過言ではない作品だと思うのですが、それと同時に
シャイロックの良し悪しがこの作品の良し悪しにもつながると思う
んですよね。

・・・・もう、あんな演技を見せられたら満足するしかないでしょ(笑)。
シャイロックの言ってる事はイチイチ正論。(現代の私から見たらね)
じゃあシャイロックに同情するか?と言うと彼のひねくれっぷりで
素直に同情できない。単純に「ユダヤ人可哀そう」という流れにならないが、
観ている者にも微妙な割り切れなさを感じさせるのは、猿之助さんの
演技のさじ加減ゆえではないかとさえ思っちゃう。

歌舞伎役者の身体能力の高さも見せつけられるし、目力の強さったら!
2列目のセンターだから、近くから睨まれると思わず固まっちゃう。
歌舞伎の見得や、舌を赤く染めたり・・と、“魅せる”と言う事もよく
分かっているからこそのシーンが続々。
視線の演技だけであの長い時間、会場を引き付けておけるって
本当にすごい事だと思います。
客席を歩いて去るシーンなんて、客の多くがステージ上の演技を観ず
去っていく猿之助さんを見続けていましたからね〜。

こういう、セリフも大きな動きもないのに、その裏にあるものを客が連想し、
そして引き付けられるって、ストレートプレイの特徴だと思うし、私は
そういう所が好きなんだからストプレ派なんだよなあ・・と(笑)。

そしてカーテンコールでの存在感は、以前拝見した平幹二郎さんを
思わず思い出してしまった私です。
後ろに下がる時、ポーシャのドレスの裾を摘んであげていましたよ(笑)。


しかしどう考えてもユダヤ人に対する偏見や、キリスト教至上主義な話。
そういう人種差別や狂信的なキリスト教徒に対する皮肉として、
シェイクスピアがこの作品を書いたのか?と頭をかすめたのですが
これが“喜劇”にカテゴライズされていることや、当時の時代背景を
鑑みると、そういう訳でも無さそうな・・・。

少なくとも当時のイギリスでは、この作品が“喜劇”として受け入れられて居た
訳でしょうから、後味が悪いというか、不愉快な事に変わりはありません。
シャイロックが去る時に堪えきれず笑い出す人々・・・。
宗教に対する意識の低い私ですら、強制的に改宗させられる事の理不尽さ、
そしてそれを強制する人の傲慢さ(というかそれを酷い事だという意識もなく
むしろ“良い事”だと思っているフシもある事)に、やりきれなさを感じます。

舞台としては非常に満足度の高い、素晴らしい作品ではありますが
後味の悪い作品ですよね〜。