一応、野田地図は第11回公演から、ほぼ欠かさず見続けていて
今回も、誰が出演されても観るつもりでいましたが、蓋を開けたら
なんてキャストの豪華な事!
(個人的には浦井クンが出ているのが嬉しかったけど(笑))
ただそれ故にチケットを取るのに結構苦戦した公演でもありました。
友人の分の東京公演チケットは比較的楽に取れたのだけど、
特に大阪は苦戦。公演数が少ないですしね。

MIWANODA・MAP 第18回公演「MIWA」
シアターBRAVA!11列目
18:00開演、20:10終演
作・演出:野田秀樹
出演:宮沢りえ、瑛太、井上真央、小出恵介、浦井健治、青木さやか、池田成志、野田秀樹、古田新太
【あらすじ】
三島由起夫をはじめとする文化人を魅了したシャンソン歌手として、また『毛皮のマリー』や『黒蜥蜴』に代表される舞台俳優として、ジェンダーを超越した美貌と類まれなる表現力で人びとを魅了してきた美輪明宏。この強大なアイコンを、“モチーフ”として扱い、予測のつかないオリジナルストーリーに描き出す。



当日券も出ていたようですが、「かなりの争奪戦らしい」とは聞いていて
早めに会場に着いていた友人からも「当日券の行列が凄い事になってる」
とメールが入っていました。
よくよく聞いてみると、ソワレの当日券GETの為に7時間並ばれた
と言う方もいらっしゃったようで、観に行けるだけでもありがたい公演
だったんですねえ・・と実感です。
しかし、尋常じゃない人気の高さに驚きが隠せませんわ。


野田さんの作品で、“モチーフ”とはいえ、実在の人間をメインで
扱うものは珍しいのではないでしょうか?
どんな舞台になるのやら全く想像もつかず。

とはいえ、私自身がシャンソンに興味が無く、美輪さんの出演舞台は
観た事がない。スピリチュアルには100%興味がない上に、テレビで
バラエティを見ないので、オーラの何とかっていう番組も見たことがない。
もっと言えば、美輪明宏という人に対する興味は全くなかった私。
だからどんな人生を送られた方かと言う予備知識も限りなくゼロ。

さすがにこれじゃあね・・と思ったので、浦井君が自分のブログで
薦めてくれていた本を事前に古本でGETして読み終えたところでした。
本を読んでおいてよかった・・・(笑)。

いくら「いつもよりも分かりやすい」とはいえ、そこは野田地図。
完璧に理解したか?と言われると、全く自信はありませんが(笑)。
でも、最近の舞台の中では感想が書きやすい方だったと思います。





シンプルな白いセットは、アシンメトリーになっていて“歪み”が印象的。
浦上天主堂にも、爆心地にもステージにもなる。堀尾さんの舞台はやはり素敵。

言葉遊びも、多くは無いけど健在。「妄想しよう」が「もう、そうしよう」。
ゲイであったオスカー・ワイルドを連想させる「オスカワアイドル」。
(中身は美輪さんと親交のあった三島由紀夫、という事でしょうが)


男でも女でもある事を拒否した(というか選びきれなかった?)MIWAの魂が、
両性具有のアンドロギュヌスと一体となって聖母マリアの祝福を受け、
男児として長崎に生まれる。
アンドロギュヌスは“安藤牛乳”として、表裏一体というよりも、MIWAの中に
存在している感じで、よく会話を交わす。まるで自問自答をしているようです。
この“安藤牛乳”(古田新太)は宮沢りえの演じるMIWAこと丸山臣吾とは
似ても似つかないビジュアルなのだけど(三輪明宏のパロディみたい)
だからこそ“2面性”というのが伝わりやすいのかも。「二心同体」ですもんね。

前半は若き頃のMIWA(丸山臣吾)が演じるショーで身の上を語る劇中劇。
後半は銀座の「倫巴里」でオスカワアイドルの小説を上演するという流れ。

長崎といえば、島原の乱と原爆。これらも描かれています。

踏み絵を踏めるか?と臣吾に聞かれたケイイチロウが
「踏めないよ、だってこんなにキレイなんだもの」。と言うのに少しはっとする私。
“踏み絵”という行為にも、“男であること”“女であること”にもそれ自体に
大きな意味は無いのではないか。
何を信じ、何を大切に思うかが重要であり、それが本質なのだ、
と言っているようにも思えちゃったのですよね。


美輪さんはご自身を“天草四郎の生まれ変わり”っておっしゃっていますが、
“隠れキリシタン”と同性愛者には似た要素がありますね、自分自身の
信条を世間にオープンに出来ず、仲間同士で集まるという所が。
このオスカワアイドル作の小説を上演していると同性愛者達が集まり、
ショーが“騒ぎ”になっていくのが“島原の乱”のオマージュ。


でも、何といっても、一番鮮烈な印象に残ったのは原爆投下のシーン。
黒い布がステージ一杯に広げられ、ゆっくりゆっくり舞台を覆いつくす。
布は透けているので、中の人間の動きが止まっていくのが見える。
まるで“死の静寂”が全てを覆いつくしてしまうかのようで、恐ろしくて・・・。
何よりも一番、私の記憶に残っているシーンになりました。
「キル」の時のラストの青い布と似た演出なのに、あまりにも受ける
印象の違いに驚かずにはいられない。
「殺人は罰せられるから罪だが、原爆投下は罰せられないから罪ではない」
というようなセリフもあったけど、これも印象的でした。

ラストには“安藤牛乳”はMIWAから離れ、死んでしまう。
MIWAはが“安藤牛乳”と同じようなビジュアルでステージに立つ。それを見ると
自分自身の中の2面性を受入れて生きていくことを決意したかのように思えます。



そうそう、母親に“気色悪い”と言われ「気色悪かったんだ」と呟き、寂しそうに
「隣の部屋で考えてきます」と去った浦井君が切なくて、キューっとなりました。
実際に、美輪さんのお知り合いでそういった方がいらっしゃったそうですし。
他にも美輪さんの経験がそれなりに時系列で盛り込まれている感じです。
全体にエピソードや登場人物は事実(少なくとも本に書かれていた内容)
に近いように思います。

なんと言ってもご存命で活躍中の方。
“美輪さん”ではなく“MIWA”のフィクションとして観ようと思っていても、
現実の美輪さんや実在の人物と重ね合わせて観てしまう自分が居るし
(歌も美輪さんだしね)、事実、“出鱈目”とはいいつつも、きちんと本に
書かれた内容を踏襲されている。
そういう点からも、ちょっとこじんまりした作品という印象です、分かりやすいけど。
遊民社の頃を思い出すという声も良く聞くけど、私は観とらんしなー。
あと、私自身に長崎弁への親しみが無いので、ちょっと聞きづらかった。

好みの問題で言えば、もっと好きな野田作品は他にある、って感じかな、
もちろんこの作品も良かったんですけどね。

キャストについてはバランスが良かったなあなんて思いますね。
宮沢りえちゃんは野田地図ととても相性がいいですよね。
私自身はあまり得意な女優さんではないのですが、野田地図に出ている
彼女は好きです。今回は彼女の潔さが良く出ていた気がします。
成志さんはツイッターで「疲れた」を連呼していました。なんで今回は
そんなに疲れる?と思ったけど実際に観て納得。そりゃ疲れるでしょうよ。
もう八面六臂の大活躍。
古田さんや野田さんはもう「さすが」としか言いようが無い。
そんな中で一番驚いたのは井上真央ちゃんかな。全く期待していなかったけど
あんなに舞台で活きる子とは思いませんでした。またどこかで拝見したい♪

で浦井君は・・(笑)。
いや、ニコニコしていて、すごい衣装でホタルイカ的には目が離せません(笑)。
というか、毎回舞台に出るたびに新発見のある俳優さんだな、
と思いますね。何気ない踊りも良かったです←贔屓目(笑)。
小出君や瑛太なども適材適所ではあるでしょうが、贅沢なキャスティング。

そう言えば、天海姐さんが声の出演をしていたという事を今更知った。
気付かなかった・・。不覚。

次の野田地図公演は2015年。1年無いのね・・・。
いくら「キル」が好きとは言え、韓国まで観に行く気にはなれないしな。
大人しく2015年まで待たせて頂きま〜す。