楽しみで堪らなかったこの公演。楽しみな気持ちはチケットを
取った時に書いたので今回は省くとして(笑)、初演を観てから
5年ぶりになるようです。

聖地X「聖地X」シアタートラム  C列(2列目)
18:00開演、20:05終演
作・演出:前川知大
出演:浜田信也、安井順平、伊勢佳世、盛隆二、岩本幸子、森下創、大窪人衛、橋本ゆりか、揮也

【あらすじ】
夫に嫌気がさして離婚を決意し実家の田舎町に戻ってきた妻、要(かなめ)。1か月経っても夫の滋が会いに来ないことに腹を立てていたのだが、ある日滋の後姿を見つけ、後を追う。そこで再会したのは、荷物も携帯電話も持たず、自分の住所すら知らない滋だった。滋は自分の足取りを確かめると東京にも自分自身が存在していることを知る。 ドッペルゲンガー。 この街では過去にも似たような事件が起きていた。 調べていくと、要たちはレストランとして貸し出された、ある場所にたどりつく−。



初演が「プランクトンの踊り場」だったのを「聖地X」に改題した理由を
WEBで前川さんが説明されていますが、確かにこのタイトルの方が
舞台の内容と直接リンクしていて分かり易いです、ハイ(笑)。

公演前に前川さんが「今回は壁やドアがあります」とツイートして
いましたが、そう言えばイキウメはセットは本当にシンプルで
壁やドアは無いものが多かったなあ・・と思いました。
この作品は壁やドアが無ければ成り立たないのですけどね(笑)。

感想は追記にて。

この初演で劇団デビューした人衛クンが今では頼りがいのある
劇団員になり、同じくこの公演で劇団デビューした加茂ちゃんは
既に退団、初演の時には客演だった安井さんは今は劇団員。
なんか・・・歴史を感じます(笑)。
 
 
最近はメッセージ性の高い作品が続いていたけどやはり
こういうSFテイストの作品はイキウメらしくてホッとします(笑)。
全くあり得ない設定なのが、普遍性をもって感じられるという
体験ができるのがイキウメの良さだと思うので。

「関数ドミノ」は再演でエンディングを含めてかなり変更されて
いたのですが、この作品は一部消えキャラは居たけども
初演をかなり尊重した作品になっていました。キャストも
殆ど同じでしたしね。
他の人で観てみたい気もしなくはないのですが、山田輝夫という
弁のたつお兄ちゃん役は、安井さん以外に考えられない。
この作品で初めて安井さんを観て心底笑ったし、この人だからこそ
あり得ない話にリアリティが生まれるというか、なんか信じちゃう
んですよね、気づいたら。

今回の安井さんも相変わらずいいですねえ、伊勢さんとの
掛け合いもね。初演の時にも思ったけど、この兄妹の会話の
流れが本当に自然というか、「そうそう!」と思うのですよ。
ウチは姉(私)弟なんだけど、この空気感はすっごく分かる。
前川さんにはご兄弟が居るのかなあ。
それにしても「アマゾン」の箱のロゴが「amazan」になって
いたのが笑えたわ。(←DVDを確認したら初演も“amazan”でした)
初演当時はネット通販に抵抗を持つ人も居ただろうから、
「(ネット通販が)危なくないの?」というセリフも違和感が無かった
のだけど、さすがに今回はちょっと時代を感じたかな。

そして“分裂”した滋を演じた浜田さんも前回と同じ。
オリジナルの滋と、滋2のキャラの違い、(つまり受け手が
感じる人格の違い)は今回の方が明確で、要が思っているより
滋にはチャラくて、浮気性な面があるんだ・・と言う事が
分かり易かったですね。
滋3が出来たときに代役と入れ替わっているのだけど
(歌舞伎でよくあるヤツですね)これが上手くて、「ここで
入れ替わらないと、成り立たないよね」と分かって見ていたのに
「あれ、入れ替わった?まだ浜田さんのまま?」と思う程でした。

そして、滋3を“消そう”とするシーン。初演は包丁を握ってて
なんか・・出来るのか?と思ったのを覚えてるけど、
今回はロープで首を絞めようとしていて、ああこれならできるか?
とちょっと思っちゃった(笑)。でも、輝夫兄ちゃんの逡巡が
コメディみたいでしたよね。本当はあんなに笑えるような
シチュエーションじゃないのに。
あとは「滋3が消える=要が忘れる」まで自宅で面倒をみる
とはっきりと言っていたので、ラストも比較的スッキリしたかな。
“記憶”と“情報”の違いを意識するシーンですね。

客演の揮也さんは引っ越してくる大学生の大河原役。
初演では人衛クンが演じていましたが、現代的な大学生に
設定が変わっていて、ピッタリでしたね。
前回は加茂ちゃんが演じていたお手伝いさんの百瀬役は
橋本ゆりかさん。個人的には加茂ちゃんの方が好きでしたが
初めて観た友人は「イメージピッタリ」と言っていたので、
先入観なく観たら、とても良かったんだと思います。

今回は2階建てセットでした。イキウメの舞台が二階建てだよ(笑)。
今回のセットの特徴はトタンのような、巨大なリップルボードのような
凹凸のついた壁面で囲まれた大きな箱状のもの。確か壁も同素材。
それが動くことによって部屋の形が変わったり、裏に通路が
出来たりするのだけど、動くスピードなんかもシーンによって違う。
音もなくじわじわ・・っと動いてくるものだから、こっちに迫ってくる”感が
ハンパなくて不気味でねぇ(笑)。(←効果的ってこと)
壁が迫ってくることによって、そこに映る影が大きくなったりして
いるのも効果的で、照明(影)を上手く使っているなぁと思います。
初演の回転する壁の演出に驚かされた程の衝撃は無かったけど
あれはRED/THEATERという小さな劇場だからこそ活きた
演出だった気もしますし。
あと、かみむら周平さんの音楽もイキウメには欠かせないですね。

しかーし!初演の時にも強く思ったのですが、「ドッペルゲンガー」を
誰でも知ってるような前提の脚本になってますけど、違うから!
「ドッペルゲンガーを知ってますか?」と聞いて、この作品のように
「ああ、同じ人がいるという・・」と誰でも知ってる訳じゃないから(笑)!

でもやっぱり好きだな、イキウメ。うん。


秋は「カタルシツ」。なんとイキウメに中嶋朋子さんがご出演とか。
うわー、イキウメに有名な女優さんが客演なんて!板垣雄亮さんも
久しぶりのご出演で楽しみでございます。