久しぶりの歌舞伎座です。
本当は9月だって8月だって観に来たかったのですが、どうしても
スケジュールが合わなかったのです。

10月歌舞伎座「芸術祭十月大歌舞伎」夜の部 歌舞伎座2列
16:30開演、20:45終演
一、壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)
二、梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう)








今回はどうしても観ておきたくて見切り発車でチケットを取ったけど、
昼はACTシアターで観劇が決まっており、その終演時間次第では
間に合わない可能性あり。
ACTの公演は中島かずき脚本ですから3時間超えの確率は高いし
3時間を超えると終演が16時過ぎるので、歌舞伎座での16時30分の
開演は厳しくなる。
かといって、幕が開くまで分からないので何ともできないし。
結局、上演時間は3時間10分だったので、本当にギリギリ。
でも赤坂−東銀座は直線距離では近いハズなのでタクシーも
駆使して、何とかするか!と。

結局ACTシアターではカーテンコールをパスして16:05に劇場離脱。
タクシー移動のつもりがタク乗り場には1台も停まっていないし
少し早めに劇場を出たので地下鉄移動に変更し、開演4分前に
劇場に到着したのでした(笑)。 

感想は追記にて。





 
一、壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)
   阿古屋
遊君阿古屋  玉三郎
岩永左衛門  亀三郎
榛沢六郎   功 一
秩父庄司重忠 菊之助

この演目は、何年か前に海老蔵が舞台を降板した事により
玉三郎丈がルテ銀でこの演目を上演して話題になったのを
覚えています。今は上演出来る人が限られてしまっているとの
事だったので、やっぱり観ておきたい!と。

どこかでも書いたことがありますが、私が初めて歌舞伎での
花魁役を見たのが、玉三郎丈の『籠釣瓶花街酔醒』の八ツ橋
だったので、単純に阿古屋の拵えをした玉三郎丈を見るだけでも
満足感が高いのですよね〜。
美しさはもちろんですが、あの圧倒的な存在感というか
醸し出す雰囲気は、やはり玉三郎丈ならでは、だと思います。

この作品の見所と言えば、阿古屋が奏でる3つの楽器。
琴、三味線、胡弓。琴や三味線は演奏している所を見たことが
ありますが、胡弓は初めて。あのふわっとした弓であんな音が
出るんだ・・というのが、とても不思議でした。

私ごときでは、この曲の中に阿古屋のどんな思いが詰まっているか
まで推し量ることはできません。
でも、曲を演奏している玉三郎丈の凛とした表情がとても
素敵だなあ、と思いました。

菊之助丈が演じた重忠は、とても理性的で落ち着いていて
この二人が対面している時に、言葉にならない言葉で会話が
されているようにも感じたのでした。

これから、この作品を受け継ぐのは誰なのかなあ。



二世尾上松緑二十七回忌追善狂言
二、梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう)
  髪結新三
 序 幕 白子屋見世先の場 
      永代橋川端の場
 二幕目 富吉町新三内の場
      家主長兵衛内の場
      元の新三内の場
 大詰  深川閻魔堂橋の場

髪結新三       松 緑
白子屋手代忠七  時 蔵
下剃勝奴       亀 寿
お熊          梅 枝
丁稚長松       左 近
家主女房おかく    右之助
車力善八       秀 調
弥太五郎源七    團 蔵
後家お常       秀太郎
家主長兵衛     左團次
加賀屋藤兵衛    仁左衛門
肴売新吉       菊五郎

追善公演と言う事もあってか、仁左衛門丈に菊五郎丈が
本当にチョイ役でご出演です。
こういうのを「ごちそう」って言うんでしたっけ?
何だかとっても得をした気がします。

「髪結新三」という単語だけ聞くと、勘三郎丈を連想します。
そうは言っても、私は一度も観たことが無くて、“江戸っ子”という
事しか知りませんでした。そうかー、結構悪いヤツなんですね(笑)。
あんな高額の初鰹を気前よく買っちゃうところなんかは、
見栄を張って六本木ヒルズとかに住んじゃうようなIT系企業の
若手実業家って感じもするんですけどね。

当時の江戸っ子にとって“初モノ”がどういうものなのか、長屋の
家主というのが、どういう仕事なのか、回り髪結いというのは
何なのか、当時の風俗が知れるのは、世話物の面白いところですね。
特にこの作品では「へぇぇ」と思う事が多かったです。

真面目で仕事熱心な忠七と豹変した新三の日本橋での
やり取りはねぇ、みているこちらが「もう〜っ」って思うぐらい
新三が傍若無人で、忠七が大人なんですよね。
まあ、ここでの新三は、今風に言えばマイルドヤンキーかな。

でもそんな新三よりも上手なのが家主の長兵衛さん。
これがなかなかの交渉力。こいつ、一番のワルなんじゃないの?
って思うぐらいね(笑)。だって一番アコギでしょ?
新三にギャフンと言わせられて、お熊ちゃんも解放されても
今一つスッキリしなかったのだけど、最後の最後で
「欲はかくものではありません」
と言われたようで、少しざまあみろ、と思った私です。

観客の盛り上がりも楽しくて、とても楽しく拝見しました。
先日の御園座で歌舞伎を観るテンション下がってしまっていた
私ですが、すっかりアゲアゲです(笑)。
歌舞伎座で観る大歌舞伎っていいなあ、やっぱり。