今日は夕方から仕事で豊橋。仕事を終えて向かったのはプラットです。
ええ、この為に豊橋の仕事の日程を調整しましたが、何か(笑)?

最貧前線「最貧前線」穂の国豊橋芸術劇場PLAT主ホールG列
18:30開演、21:13終演
原作:宮崎駿  脚本:井上桂  演出:一色隆司
出演:内野聖陽、風間俊介、溝端淳平、ベンガル、佐藤誓、蕨野友也、福山康平、浦上晟周、塩谷亮、前田旺志郎
【あらすじ】
太平洋戦争末期、ほとんどの軍艦を沈められた日本海軍は、来襲するアメリカ軍の動静を探ろうと、漁船を海に駆り出して、情況を探るため小さな漁船・吉祥丸に徴用されることになる。特設監視艇となった吉祥丸に乗り込んだのは、元々の漁船の船長(内野聖陽)と漁師たち、そして艇長(風間俊介)とその副官(溝端淳平)の軍人たち。航海経験に乏しい軍人たちは、鯨を敵潜水艦と間違えたり、嵐になる兆しを察知できなかったり、海の職人である漁師たちとことあるごとに対立するが、軍人たちは、漁師たちの知識や行動力に一目置くようになり、徐々にお互いに信頼感を芽生えさせていく。ただ、戦況は厳しく、吉祥丸は海の最前線ともいうべき南方の海域に、わずかな武器を携えて急きょ派遣されることになった・・。



この作品は宮崎駿さんが雑誌に連載していた「宮崎駿の雑想ノート」
に描かれた5ページの物語が原作なんだそうです。
ジブリに興味が無い私は、宮崎駿さんだからといって特別な
思い入れがある訳でもなく、ただ何故か興味をそそられて
チケットを取った・・という舞台でした。
私には宮崎駿=ジブリ=ファンタジーみたいな、勝手な
思い込みがあったので、このフライヤーの無骨なビジュアルを見て
うおっ(想像と全然違う)、と思ったものです(笑)。

このビジュアルの印象が強すぎて、内野さん以外に誰が出るか
全く把握していなかったのですが、Jの子やら溝端君やら
若い俳優さんが出演されると、直前に知りまして、客層が
若い理由に納得がいきました(笑)。

今回はいつもと違う所でチケットを取ったため、それほど
前方席ではなかったものの、この舞台は超前方席は見づらい
作品だったので、ちょうどよくて、快適な観劇でした。





マンガ(イラスト)と舞台のコラボで真っ先に思い出すのは
「プルートゥ PLUTO」で、あれは手書きの絵と舞台をうまく融合した
演出の冴えた舞台でしたが、この作品も宮崎駿さんのイラストと
手書き文字をうまく活かした舞台だったな、と思います。

舞台に紗幕が降りていて、そこにイラストが所々で投影されます。
特に舞台となる吉祥丸が投影され、イラストが薄くなると紗幕の背景に
舞台のセットが透けて見えて、まるで船の内部が透けているかのようで
上手い使い方だなぁ・・と思います。
セットそのものは、船の骨組みをイメージしたものでそれが
2つに分かれており、それぞれに回転するし、それらの組み合わせに
よって横向きや、正面になったように見せたり・・と変幻自在。
演出家の方はまだ舞台演出の経験が少ない方のようですが、
私はこういう見せ方って、舞台ならでは、で大好きなのですよ。

最初のシーンでは、艇長と通信長達の会話を通して今の日本の
状況と吉祥丸の状態が分かります。
そして強調されるのが海軍の軍人と漁師たちとの色々な面での違い。

軍人としてイニシアチブを取りたいのに、この海域・漁船の操船、
気候の読み方、という意味では漁師たちに圧倒的な知識と経験があり
軍人たちは何の役にも立たない・・というのが、作者の嫌味
なんでしょうが、艇長が意外と柔軟なんですよね。
漁師たちのほうが優れていると思う点に関しては、意見も聞くし
ちゃんと任せもする。そうすれば漁師たちも自然と艇長たちの
言う事を聞くようになり、信頼関係が築かれていく。
なんか・・正直ちょっと「きれいごと」のような気もしなくもない
のですが、これが宮崎さんの理想なんだろうな、とも思います。

この艇長の年齢がどれぐらいに設定されているんだろう。
終戦後に再会した時に子供がまだ小さい事を考えると(舞台の中でも
「若くして出世」みたいな言葉もあったし)30代の前半とか・・かな。
言動と立場と、見た目の若さのアンバランスさが、風間君という
若く見えて低身長の俳優さんが演じると、リアリティを感じます。
風間君、振り返ると過去に2度ほど拝見しているようですが、
全く印象が無くて、殆ど初見といった感覚でした(笑)。
思ったよりもちゃんと声が出てて、驚いちゃいました。

この作品、内野さんが主役なんだろうな・・と思って観始めましたが
どちらかと言うと、縁の下の力持ち的な役回りですね。
若い指導者である艇長を諭したり、ぶつかったりしながらこの
吉祥丸を乗り切る立役者となる・・というね。
それが、実際の出演された俳優さん達の関係でも同じような立ち位置
に居るんだろうな、と推測されて、説得力がありましたね。
内野さんらしい、熱い演技をされていました。
今回が私個人的に楽しみにしていたのは溝端淳平君。やっぱりいいなぁ。
凛々しさも弱さも、優しさも感じられる役でした。

艇長は、一度帰港した際に、この船の行く末(戦闘に巻き込まれるであろう)
を考えて、若年の見習いを下船させようとしたり、リラックスできる
ように、音楽のレコードを積み込んでみたり。
若い見習いの真っ直ぐな言動や、通信長が見習いの手紙を添削してやったり、
無線士に煙草を分けてやり自分の家族について話すようになったり・・・。
海軍メンバーと漁船の乗組員達の距離の縮まり方の表現が良かったな。
すごく細かい事ですが、最初は内野さんの事を「操縦士」と
呼びつけていたのに、最後には「船長」と呼んだ艇長。
まず最初に自分の煙草に火をつけ、その後で無線士にも火を分けてやった
通信長が、最後には自分よりも先に無線士に火を勧めたりする。
そんな小さな変化がね、セリフはないけど、雄弁だったりするんですよ。
立場を超え、人として認めあっているな・・と思う心温まる場面でした。

また戦闘シーンについては、かなり迫力というか緊迫感があって、
観ているほうも思わず体に力が入ってしまったりして、舞台を観ながら
一緒に色々な感情を共有できた、そんな印象の舞台だったと思います。
撃墜される前に、早く終戦になれ!と何度も思ったわー(笑)。
素直で直球の舞台だったと思いますが、私自身も素直に観られたな
と思う作品でした。

そう言えばこの作品、誰一人悪者が出てこなかったですねぇ・・・。
当時の日本軍であんな風に司令部に嘘を報告して帰港するなんて
出来たんだろうか?上手く出来過ぎじゃないの?と思わなくはないのですが、
舞台としての満足感は高かったので、気にしない事にします(笑)。
宮崎さんと言うとジブリですから、何となくファンタジーなイメージが
あったのですが、冷静に考えるとジブリも戦争に関する作品が
少なくないし、政治的な発言もされる事がある方なので、ある意味
「なるほど」という作品なのかもしれませんね。
何となく観に来た舞台でしたが、観に来てよかったと思います。