なかなかチケットが取れなかった公演だけど、やはり観たい1本。
直前にWOWOWで生配信をしていたのですが、舞台を観るには
まっさらな気持ちで観たいし・・と思い、配信はパスして臨みました。
それにしても豪華な出演者だ・・・。

ベイジルタウンの女神ケムリ研究室 no.1「ベイジルタウンの女神」
世田谷パブリックシアター N列
18:00開演、21:30終演
作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:緒川たまき、仲村トオル、水野美紀、山内圭哉、吉岡里帆、松下洸平、望月綾乃、大場みなみ、斉藤悠、渡邊絵理、荒悠平、盒業帆、尾方宣久、菅原永二、植本純米、温水洋一、犬山イヌコ、高田聖子
【あらすじ】
世界有数の大企業を経営するマーガレットは生粋のお嬢様。婚約者と共に「ベイシルタウン」というスラム街の再開発を巡って、かつて自分の小間使いとして仕えていた“にんじん”の元を訪問する。彼女はその後会社を起業し成功していたのだ。マーガレットは”にんじん”と「1ヶ月無一文で、自分一人だけでベイシルタウンで暮らせるか」を賭けた。賭けに買った方が、お互いに持つベイジルタウンの土地を手放す、という条件で。だがこの賭けの裏には、ある思惑と陰謀が隠されていた。マーガレットは1ヶ月乞食として生き延びていけるのか?そして、「ベイジルタウン」はどうなるのか−。




ちょうどこの日から観客数の制限が「定員の50%」ではなく「定員の80%」
になり、残り30%分の客席が追加発売になっていました。
もともとこの公演は「座席番号」はチケットに表記されておらず、
整理番号だけ。入場時に機械にチケットのバーコードを飲み込ませると、
座席が表記されたチケットもどきが印刷される・・という仕組み。
これならば、定員が変わっても、すぐに配席しなおせますもんね。
公演期間中に収容率が変わる事をを想定していたんだろうな、と
思われますが、これ、転売対策にもいいんじゃないの?
確かに行かなきゃ席が分からない、って言うのも「むーん」と思う
所もあるけど、良席じゃなかったら高額で転売しづらいんじゃない?
(まあプラチナチケット化しちゃったら、関係ないかもだけど)

ここのところ、隣の席に誰かが座っている・・という状況が
芝居でも映画でも無かったので、両隣に他人が座っている・・と
いう、以前だったら当たり前の状況が、何だか新鮮というか、
ぶっちゃけて言うと「窮屈だ」と思っちゃったりしてね(笑)。






 

オープニングはプロジェクションマッピング。
役者さんが持つ白い板に花などのカラフルな照明が当たっているのは

まるで手元で色とりどりの花が咲いたようで、観ていてとてもきれいだった。

映像と舞台の融合という意味では、ケラさんの作品はいつも「すごい」って

思うものが出てくるんだけど、今回もまんまと「すごい」と思ったよね。

コミカルな内容だから、劇中で使われるアニメーションとも親和性が高いし。
(この部分は緒川さんの発案なんだとか。)

 

主役は大会社マーガレット(緒川たまき)は・・・

ちょっとピントがずれた会話が嫌味なく出来るのは、緒川さんならでは。

恐らくマーガレットは一度も嘘をついていない。
この舞台の中でも、おそらく彼女の人生の中でも。
嘘をつく必要がない人生を送ってきたんだろうな、と思わせるような
大らかさのようなものを感じます。
これ、すごい事だと思う。
セリフでは書かれていなくても、彼女の雰囲気や演技なんかで
マーガレットの背景が想像できるっていう事なんだから。

ベイジルタウンに行った後も、これまでと生活があまりにも違うので、
周りの人達からは「おかしなヤツ」と最初は思われても、結局は

その裏表のなさが、"乞食”の皆さんに受け入れられていくのですよね。

彼らは「自分をよく見せよう」とかいう感覚も無い生活をしているので

ある意味とても似ている。だから一旦理解されると、逆にマーガレットは
受け入れられやすいんだろうな・・と思うし、むしろマーガレットも
素直に付き合えるんだと思う。


マーガレットが、ベイジルタウンの為に何かをしたい・・と思った時に
「この地区の貧困を無くそう」(無理やり生活スタイルを変えさせよう)
というのではなく、「今のまま乞食としての生活をしながら、不安なく
健康で過ごせるようにしよう」というのが、少なくとも私には無い発想で

それもマーガレットならでは、と自然に納得ができます。
(実際に公園の管理人になった後でも瓶拾いを続けていますからね)

普通なら周りに気を遣って言いづらい事も、マーガレットならイノセントに

ズバっと言えてしまうのが痛快でもありました。

タチアナとのイチゴジャムのエピソードが、この一連のドタバタの
元凶ではあったのだけど、あんな風に思い出してくれたら、そりゃ
タチアナだって、許しちゃうよねぇ、と思わずホッコリ。
なかなか素敵なエピソードでもありましたいね。

コロナ禍だったり、人の事を批判するような風潮だったり・・という、

生きづらい世の中だからこそ、こういうハッピーなコメディが多くの人に

受け入れられたとも思う。

 

緒川さんは決して自己主張が強いタイプの女優さんではないというか、
脇でキラっと光るタイプの俳優さん・・と言うイメージだったけど、
今回のカーテンコールでは「ああ、緒川さんがメインの作品だったんだな」
座長らしさと頼もしさのようなものを感じた作品でした。

 

他の役者さんも豪華、豪華!ええー、この人をこのポジションで使います?

と思うぐらいなんですが、でもそれぞれに個性が活きていて見応えあり。

何よりも皆さんが演じていて楽しそうだったなぁ・・と感じました。

仲村トオルさんのちょっと天然の入ったような、でも憎めなくて
頼れるお兄ちゃんも、男勝りで頼りがいのある水野さんも、
二役で全く違う約を演じた山内圭也さんも、オバチャン風味を出しながらも
苦労して成功した女性を演じた高田聖子さんも、みんなとても良かった。

難しい事を考えずに素直に「ああ、楽しかったなぁ」「面白かったなぁ」と

思える多幸感あふれる作品。
このストーリーが「またご都合主義な・・」という印象ではなくて、

素直に受け入れられたのはなぜだろう。ある意味、めっちゃご都合主義な
展開なのに、むしろポジティブに楽しめちゃったんですよねぇ。
日帰りするために最後の5分を諦めるか、最後までゆっくり観てから
1泊して帰るか・・の判断で後者を選んだ自分、GJ!と自分を褒めたい
気持ちでいっぱいになったカーテンコールでした。

その後、「いずれ再演を考えている」とケラさんがツイートされていました。
全く同じキャストにはならないかも・・だけど、この作品はまた
再演されたら、ぜひもう一度観に行きたいと思います!