金曜日は仕事がお休み。年に3日間、好きな日に設定できる休日です。
この日に決めたのは、昨年の12月。当初から「遠征用に」という事で
3連休になるようにしていたのですが、まさか10か月後にこんな世の中に
なっているなんて、思いもしなかったです。
でも、そんな中でも当初の予定通り遠征に出られた事に感謝。

ビリーエリオット「ビリー・エリオット〜リトル・ダンサー〜」
赤坂ACTシアター U列 12:00開演、15:00終演
脚本・作詞:リー・ホール/演出:スティーブン・ダルドリー
音楽:エルトン・ジョン/振り付け:ピーター・ダーリング
出演:川口調、橋本さとし、安蘭けい、阿知波悟美、中井智彦、星智也、永野亮比己
【あらすじ】
1984年、炭鉱労働者たちのストライキに揺れる、イギリス北部の町ダラム。主人公ビリーは、炭鉱労働者の父と兄、祖母の4人暮らし。幼い頃に母親は他界し、父と兄はストライキに参加しているため、収入がなく生活は厳しい。ある日、ビリーはボクシング教室の後でバレエ教室のレッスンを偶然目にし、戸惑いながらも、少女達と共にレッスンに参加するようになる。ボクシングの月謝で内緒でバレエ教室に通っていた事がバレて、父親にバレエを辞めさせられてしまっても、ビリーの才能を見出したウィルキンソン夫人は、無料でバレエの特訓をし、イギリスの名門「ロイヤル・バレエスクール」の受験を一緒に目指す。一方、父はある晩ビリーが一人踊っている姿を見て息子情熱と才能、そして”バレエダンサーになる”という強い思いを知り、父として何とか夢を叶えてやりたい、と決心する。

キャスト表
どうしても「この人が見たい!」という訳でも無かったので
スケジュール優先という事で。敢えて言うなら、橋本さとしさんは
観たいな、と思っていたので、それだけはクリアしてたかな(笑)。

初演がとても評判が良かったという印象だったので、そのうち
再演したら、観に行ってもいいなーと思っていたんです。
もともと秋に観に行こうと思って、夏公演のチケットは取っていなかった
のですが、例にもれずそれらは公演中止。感染拡大防止を考えた時に
ミュージカルだし、キャストも多いだろうし、レプリカ公演であろうから、
コロナ禍とはいえ演出も勝手に変えられないだろうし、秋でも厳しいかな
と思ってはいました。そんな中、主催者であるホリプロの社長がTwitterで
「ビリー役の子たちは(声変わり後では出演出来ない役なので)これが
最後のチャンスかもしれない。何としても舞台に立たせてやりたい」と
ツイートしているのを拝見していました。
ですので、この公演が観られる事はもちろん嬉しかったのですが、
それ以上に「公演数は少なくなっちゃったけど、舞台に立てて良かったね」
という気持ちでしたね。

既に1席おきの配列ではなくなっていたので、1階席は感覚値ですが
8割ぐらい埋まっている感じ。私の席の辺り(U列)だと1席おきになって
いましたけど、前はほぼ埋まっている、っていう状態に見えました。
舞台の性質上、子供さんの観劇も多かったな、と思います。







これだけ評判の良い作品だから、きっと面白いんだろうな・・と
思って、(いい意味で)気を許して観に行ったんですけど、
まあ、これは確かに人気が出る作品だよねぇ・・と納得致しました。

まずは楽曲が分かりやすく、ああ、ミュージカルを観ていますね、私
と思える作品でした。
もともと数多くミュージカルを観るほうではない上に、コロナ禍で
アンサンブルが歌い上げる・・みたいな作品は、何だかとっても
久しぶりに観た気がしますが、私はどうせミュージカルを観るのなら
アンサンブルの方たちの歌が堪能できるパートがあるものが好き。

サッチャー氏を描いた映画等で、彼女が首相になった頃のイギリスの
混乱は全く知らない訳ではないのですけど、やはり詳しい程ではないので
炭鉱で働く大人達の苦悩・・と言うよりは、やはり才能がある少年が
その才能を伸ばすチャンスを得るサクセスストーリーとして観て
しまっていたなぁ・・とは思います。(それが悪い訳ではないとは思うけど
本当はもっと多面的な意味がある作品なんだろうな・・と思うので。)
敢えて言うなら映画の「フラガール」のイメージに近かったかな。

今まであちこちで書かれていますが、やっぱりビリー役をはじめとした
子役たちの活躍は、素晴らしいものがありますね。
便宜上「子役」と表現しましたけど、舞台を観ている間は、特に
ビリー役の子に関しては「子役が演じている」と意識する事は無くて
「ビリー」として観ていたと思います。
いい意味での子供らしさ、子供だけどお祖母ちゃんの面倒を見る
(カビたミートパイを食べないようにするとか)しっかり者のところ、
お母さんが恋しいけど、そうは見せない所・・とか、本当にお上手。
オーディションで選ばれたのだから当然なんだけど、バレエも出来るし
タップも出来るし、アクロバットも出来るって、本当にすごい。
「(演じた川口君ではなく)ビリーが大人になったら、どんな大人に
なるんだろう」と思って観ていましたけど、冷静に考えると
そう思わせるってすごいと思うんですよね。
ビリーにあこがれて、こういう子たちが多く育っていくと、10年後には
また舞台で活躍できる実力のある俳優さんが増えるかもしれませんね。
(この作品を観てバレエを始める子がいるのも、分かるわー)

数多くのダンスシーンの中でも一番のお気に入りはヤングビリーが
オールダービリーと踊る「Swan Lake Pas de Deux」。
オールダービリーに負けないように踊るビリーを見ながら、
ああ、この子が大きくなると、こういう風になるんだろうなぁ・・と
素直に想像ができるというか。
出来れば大貫さんで観たかったなぁ・・とは思いますが、もちろん
永野亮比己さんも素晴らしく(私にはバレエの素養が無いので、どっちが
上手いとか、どう違うとか、見比べたとしても、どうせ分からない)
ふとアイコンタクトを取ったり、さりげなくリードしている様子が
素敵だなぁ、と思いました。

橋本さとしさんは再演からの参加との事ですが、とても素敵でした。
粗暴な所もあるし、ガンコでもあるけど、ビリーの事を本当に愛して
いるんだ、と伝わってきます。
そして、ウィルキンソン夫人を演じた安蘭けいさんも素敵でした!
下町っぽいというか、ガラっぱちな女の人で、口の悪さも態度も
迫力があって良かったなぁ。とても優しい所のある人だけど、それが
素直に出せない所とか、キュートだったわぁ。
ビリーが持参した彼の母親の手紙を読んでいるシーンも好き。
不覚にもあのシーンは私も泣かされてしまいました・・。
これからちゃんとしたバレエ教室の教育を受けに行くビリーに対して
「すぐにここで習った事が2流だったって事が分かる。すべて忘れなさい」
というのは、彼女自身のコンプレックスでもあるんだろうな・・と
思うし、その分ビリーに頑張って欲しいと思っているんだろうな。

「男のくせにバレエなんて」という偏見は、洋の東西を問わないんですね。
でもその偏見を乗り越えて、炭鉱労働者たちのカンパが集まったところに
自分たちが叶えられなかった夢を、もしかしたらビリーが叶えるかも、
という期待が込められているんだろうな。
そう考えると、ちょっと心がポッと温かくなるシーンでもありました。

曲も聞きごたえあるし、ダンスも一杯あって見ごたえあり。
ストーリーもしっかりしていて、泣かされるところもあるし、
観終わった時にはハッピーな気持ちになれる作品。
この作品ならば、友達を誘って観に行こうと思えるし、違うビリーで
リピりたくなる気持ちも、分かります。
この私でも、再再演があれば、また観に来てもいいなと思いましたもん。
うん、観に来れて良かったよ〜。