火曜日もまた刈谷です。日曜日に行ったばかりなんですけど(笑)。

てにあまる「てにあまる」刈谷市総合文化センターアイリス8列(7列目)
脚本:松井周   演出:柄本明
出演:藤原竜也、高杉真宙、佐久間由衣、柄本明
【あらすじ】
一人で暮らす老人(柄本明)の家に、男(藤原竜也)がやってくる。老人は戸惑うが、その男の提案で家政夫として自宅に住まわせ、奇妙な同居生活が始まる。その老人は、男と長らく絶縁状態にあった男の父親だ。男はベンチャー企業の経営者であり、男に対して盲目的な憧れと畏れをもつ部下(高杉真宙)が彼を支えている。ある日部下は、男の別居中の妻(佐久間由衣)を連れてくる。妻の目的は男との離婚。男は自分の暴力のために妻子は既に家を出て、仕事も順調でなく既に薬が手放せなっていたが、妻と部下の関係を疑い、壊れていく。これは父と息子が家族をやり直そうとする物語。あるいは、家族を終わらせようとする物語。



最前列も、前方の両サイドも潰されていたし、一席ずつ空席に
なっていたため全体に余裕がある感じです。
下手ブロックの通路側だったので、とても観やすいお席でラッキー。
1席飛ばしの配席ではありましたが、2階席まできっちり客が入って
いるのは、さすがの集客力だなぁと思います。

これ、WOWOWで配信もしていたのですが、生の舞台を観る前に
配信で観ちゃうのって、やっぱり抵抗があるし、でも万が一
コロナのせいで公演中止になったりしたら、配信を観ておくべき
だった・・と後悔しそうだし、と、かなり悩みます。
地方公演は終盤に行われることが多いので。
まあ、冷静に考えれば、WOWOWが配信したのであれば、配信だけする
とは思えないので、録画もして、いずれ放送してくれるだろう・・と
期待して、今回も配信はパスして当日に臨みました




職場の友人もこの舞台(同じ公演)のチケットを取っており、同じ
公演を観ると知っていても、声掛けあって一緒に劇場に行くとかしない
私達なのですが、終わってからLINEが来ました。
(それぞれにチケットを自分で取っているので、席もバラバラだったので)
「一言で言うと、疾走感のあるキチ〇イって感じ」って(笑)。
まあ、ちょっとそれは乱暴な表現って言う気がしますけど、でも言い得て妙
だと思ってしまうような所も、無くはなかったよね、と思いました。

舞台上にある、小さなアパートの部屋に居る老人(柄本明)の所に
突然、スーツ姿の男性(藤原竜也)がやってくるところから舞台はスタート。
どうみてもロクデナシ風な老人と、胡散臭い青年実業家風の男性が
あまりにも相容れないので、どういう関係なんだ?と思って観ていると
どうやら「親子」らしく「久しく会っていない」ようで、老人のほうは
生活保護を受給しているらしい。息子は金をせびる老人に要求するだけの
お金を渡して「自宅に来て家政夫として働いてほしい」と頼むのだけど・・・
親子とはいえ、長い間没交渉だったらしいし、決して仲は良くなさそう
だし、何故そうなる?と。

「嫌だよ」と言ってお金だけせびっていた父親の佐々木隆彦だけど、
結局は身分を隠して、「家政夫」として息子の鳥井勇気宅へ居候する事に。

決して鳥井は父親との関係を改善したいというより、カウンセラーに
父親と向き合うように言われたから、父親を迎え入れただけ。
鳥井は鳥井で、何とか現状を打破したいと思っている状態だけど、もう
全ての事が「てにあまる」状態になってしまっている。

自分の会社ではなかなかヒットするアプリが開発できない。
妻との関係も悪化し、家を出てしまっている状態で関係改善は難しそう。
怒りに負けて、妻子に手を挙げてしまった事もある。
自分自身も父親から暴力を受けており、自分の兄はそれが原因で死亡している。
モノが割れる音は、その頃を思い出し、怖くてたまらない。
クスリ(ドラッグではなさそう)をラムネのように酒で流し込む毎日。
部下の三島が慕ってくれても、素直に話を聞く事も出来ない。

・・・・もう・・・人としてかなり「詰んだ」状態なんだよね。
まあ、こういう追い詰められた役を演じる時って、藤原竜也さんの真骨頂
というか、こういう役をやらせたら右に出るものはないんじゃないのか?
と思うレベルにボロボロっぷりを見せつけてくれます。
そして、鳥井がボロボロになっても冷静に・・というか、ちょっと引いて
眺めているのが、父親の佐々木。
どんなに怒りをぶつけられても、ヘラヘラとかわしている感じ。
その両極端ぶりがすごい。
ちょっとだけ歩み寄ったかな・・と思うと、まるで磁石のN極同士のように
パチーンと遠ざかるような感じで。

でも両方が避けている・・というよりは、鳥井が避けている・・という
感じかな。父親はヘラヘラしながらも、冷静に鳥井の事を見ている感じ。
決して父親らしい事を言ったり、やったりしないながらも、実は
距離を置きながら見守っていたんじゃないか、と思うのが、鳥井が
人を殺めてしまった・・と知った時の狼狽ぶり、自分が罪をかぶると
言った時。ああ、やはり「兄を殺した」のは・・・と。

ただもう、後半は虚も実も、そしてゲームすらも混然としてきた
鳥井の頭の中を表すような舞台になっていって、そこがもう・・ね。
友人が「疾走感ある〜」と言ったのは、この辺りのイメージが強かった
んじゃないかな、なんて思うわ。

藤原竜也氏、柄本明氏のお二人は、いい意味でそれぞれの持ち味を
ぶつけ合っていた作品だなぁ、と思います。
全然溶け合わないのに、成立しているっていうのが、すごいと思う。
高杉真宙さん、今まで拝見した中で一番良かったなぁ。すごく声も
聴きやすいし、振り回されっぷりも良かった。同時に「虚」の中での
ちょっと嫌味な冷たい感じもサマになってましたねぇ。
あとは佐久間由衣さん。どういう方なのかは存じませんが、お綺麗ですね!
いかにも振興のIT社長が結婚相手に選びそうな女性を演じてました。
ただ、セリフがねぇ・・、というか、セリフの上っ面しか届かない
と思う時があったり、発声の感じというかが、ちょっと残念だったかなぁ。

決して後味のいい作品ではないし、ハッピーエンドでもないと思う。
「虐待の連鎖」と言えるかもしれないけど、実際は、鳥井自体が
自己暗示をかけてしまってDV夫になったんじゃないのか?と思うんだよね。
きっかけは父親であっても、原因は鳥井自身にあると思うというか。
なので、全てに対して持て余しあて、自滅していった男の話・・
と言う感覚で観ていました。
ただ、そういう話を飽きずに最後まで観られたのは、役者さんの演技が
素晴らしかった、という事もあるよね〜、と思うし、こういう作品は
恐らく(少なくとも私に関しては)配信で観ても楽しめないので(きっと寝る)
やはり劇場に観に来れてよかったな。
このコロナ禍の中、無事に千秋楽を迎えられてよかったと思いますし、
こんな状況で地方公演に来てくださって、本当にありがとうございました。