昨年の「外の道」が延期になってしまったので、イキウメの公演は
本当に久しぶりです。

金輪町コレクション「イキウメの金輪町コレクション」甲プロ
東京芸術劇場シアターウェスト B列(最前列)
18:00開演、20:00終演
作・演出:前川知大
出演:浜田信也、安井順平、盛隆二、森下創、大窪人衛、松岡依都美、瀧内公美
<甲プロダクション*>
『箱詰め男』
『やさしい人の業火な「懐石」』
『いずれ誰もがコソ泥だ、後は野となれ山となれ』




イキウメの作品にはよく出てくる「金輪町(こんりんちょう)」。
今回は新作ではなくて、この街に関わるお話を集めたもの。
短編集は「図書館的人生」というシリーズになっていたはずですが
「図書館的人生」は全く違うお話であっても、ゆる〜く繋がっていて
短編ながら、大きな1作と言えなくもないのですが、今回は「金輪町」
という町での繋がりだけなので、ストーリー的にはつながっていない
と考えていい。それが「図書館的人生」とは違うという事かな。
でも劇団員は全員出演するし、音楽や美術などもいつものスタッフです。

イキウメ好きなら親しみのある「金輪町」。すぐに思い出すのは
・駅前に「ラスカス」と言うカフェがありシュークリームを売っている
・巨大どんこの干しシイタケが名産
・寄木細工で有名
ぐらいかな(笑)。

どうやら甲乙丙そのものにイメージビジュアルが違うようで。
甲
この公演はチラシが手に入らなかったなぁ・・。配布してたのかな。
もうコンスタントに東京で公演を観ているとは言えない状態なので
チラシも「おチラシさん」に入っていないと、手に入らないものも
増えてきてしまいました。コレクションしている身としては辛いけど
これもコロナ禍の想い出になる・・・かもしれない(笑)。

でも、いつものイキウメ公演と同じように当日パンフはいただけます。
「外の道」の公演スケジュールも出ていましたね。
豊橋公演、ありがとうございます。

今回は、緊急事態宣言が発出され、席数を減らしたりした関係から
各種先行発売はなく、一般での一斉発売。
どうなる事かと思いましたが、センターブロックの最前列でした。
でもチケットは(50%の席数という事もあって)売り切れちゃってるし
料金も6000円になっていて、何だか隔世の感がありますね・・・。
(私が観始めた頃は3,500円ぐらいだったと思う)





この「甲」のプロダクションは初見の作品は無し。ただ、演じる役が
変わったり(当時の劇団員もいっぱい退団しちゃっていますからねぇ・・・)
改めて「金輪町」という縛りで観るのも、面白いなぁ、、と思います。
最初からこういう上演を狙って「金輪町」を何度も登場させていたって
いう訳ではないんだと思いますが、そこからまた新しい世界が広がるって
面白いなぁと思います。
入場時に貰える当日パンフがフルカラーの「金輪町タウンガイド」になってて
面白いんですよね。特に表4(裏表紙)は盛さんが書かれたそうで(盛さんは
イラストがお上手)文字が裏焼きになっていたり、事件のあった場所に
髑髏マークがついていたりして、じっくり見てみると面白いです。


【箱詰め男】
死を目前にした脳科学者は、体を捨て、自分の脳をデータ化して
コンピューターに移し替えた。記憶と意識だけの存在となり、
箱に収まった男はどんな夢を見るのか。
「私は紛れもなく、私である」

この作品は2018年の「図書館的人生Vol.4 襲ってくるもの」より。
だからすごく新しいというか、最近の作品、って言う感じがします。
イキウメなのに(と言う言い方はおかしいけど)SFっぽいって作品って
このプロジェクトではこの「箱詰め男」のみ、なんですよね。

この作品を観た2018年よりも、「AIスピーカー」が一般的というか
珍しいものでもなくなって、VRがより身近になり、テレワーク等も
普及した今、改めてこの作品を観ると、あながち突飛な発想でもない
んじゃないだろうか、と思っちゃった自分に驚きました。

前回「お父さん」は安井さんが演じていらっしゃって、とても良かった
のですが、浜田さんもいいですねぇ。
人外のモノ(機械というか、ロボットとか宇宙人系)が浜ちゃんは
お得意よね〜と思っていたのですが、それはビジュアルだけの問題
ではなかったらしい(笑)。
今回も生で声を当てていらっしゃったようです。


割と最近の作品であり、この頃にはもう劇団員も今のメンバーに
なってしまった後だったので、あまり受ける印象に変わりはないですが
改めて、人が人であるという事、生きているとはどういう事なのか、
忘れるという事は人間に備えられた非常に大切な機能であること
(逆に言うとその機能が無ければ、耐えられない程、弱い存在
であると言えるかもしれない)を考える事になる作品でしたね。




【やさしい人の業火な「懐石」】
刑期を終え、出所したばかりの青年は道すがら、見知らぬ男たちに暴行される。
通りかかった夫婦は、傷付いた青年を連れ帰り手当てした。
夫婦の善意に、青年は首を かしげる。
「僕、人殺しかもしれませんよ」

この作品は、2008年の「図書館的人生 vol.2 盾と矛」で上演されたきり
という事になるのかな。
私はDVDで観ただけなので、舞台では初めて観る作品です。
初演も辻正彦は盛さんが演じていらっしゃいました。(奥様は岩本さん)

DVDでも「こえぇ」と思ったんですが、やっぱり「こえぇ」と思った(笑)。
そして、大窪人衛君が「大人の男の人」に見えて(いや、十分大人なんですが)
けっこうなイケメンさんじゃないですか!と驚いちゃった。
初めて拝見したのは20歳前半ぐらいだったと思うし、背は低くて声は高い、
童顔でもあるので「年齢不詳だ・・」「永遠に子供役が出来るんでは?」
と思ったものですが(笑)。

とまあ、人衛君のビジュアルは変わったなぁ、と思いますが
いい意味での「本心が読めない」不気味さは、さすがです。
だからこの丹野と言う役はハマりますよねぇ。

一般的には辻本のような人が「親切」で「いい人」なんだと思う。
でもその「親切心」を受け止めきれないというか、咀嚼しきれずに
その消化不良な部分が「偽善」に映ってしまい、相手の事を逆に
不誠実だと思ってしまうのかな。

辻本の奥さんはすごく素直なんだと思う。
でも辻本自身は「怖い」「不気味」「もう信用ならない」と感情では
思っていつつも、それを「そう思っちゃいけない」という理性というか
自分の信念と闘っている感じ。
それが最後に「それでもまだ僕を信用していますか」と丹野に聞かれて
頷くまでに時間が掛かった理由なんだろうし、それでも頷いたのは
丹野とのチキンレースを見ているみたいだったよ。




【いずれ誰もがコソ泥だ、後は野となれ山となれ】
男は万引きのプロフェッショナル。必要なモノしか盗らず、換金目的の万引きは
決してしない狩猟採集民だ。出会った女は懸賞のプロフェッショナル。
「お前に美学を感じる。俺と付き合え」


これ、初演は2010年「図書館的人生Vol.3食べもの連鎖」なんですが
2012年「The Library of Lifeまとめ*図書館的人生(上)」でも再演
されている作品ですね。これだけ何度も上演されるという事は、
前川さんも気に入っているんだろうな、と思うし、何よりもこの作品は
安井さんの良さが活きる作品って言うイメージ。
あの会話の間とテンポは、安井さんならでは、だと思いますもん。
この日は本当に客席のノリがよくて、安井さんのセリフで客席から
めっちゃ笑いが起きてました。(「箱詰め男」でもそう。)

懸賞女の梅津楓役は瀧内さん。
お綺麗な方なので、どんなにスウェット姿だったとしてもスタイリッシュに
見えてしまうので、懸賞だけで生活していて、オタク気質っぽい感じが
あまり感じられない。だから安井さん演じる畑山が(この人もある意味
究極の万引きオタク)楓にシンパシーを感じている・・というのが、
ちょっと感じられないというか、リアリティが無いというか・・・。
(そういう意味では、加茂ちゃんが私の中でのベストだった)

でもこの作品もチョイスされているという事は、彼らの住んでいるのも
金輪町っていう事なんだよね〜。


どれも知っている話で、かつ、脚本が大きく改定されているとか、
凄く変わった演出をするとか。。といった事は無かったので、新鮮味は
無かったのは確かですが、でもやっぱりイキウメの世界観というか、雰囲気は
健在で、観に来れてよかったなぁ、と思いました。

この作品はあと「乙」を劇場で、「丙」を配信で観たいと思っていますので
楽しみにしています!