名古屋公演がありがたい、と思いながらも、どうせなら新国立の
小劇場で観たかったなぁ・・と思う作品。
2017年のパルコ版も東京では新国立の小劇場での上演だったようで
「新国立で観たかった」と書いている過去のエントリーを観て思わず
クスっとしてしまいました。やっぱりこういう作品にはあの劇場が
ピッタリって言う感じ、しますもん。

スルース「スルース〜探偵〜」ウィンクあいち大ホール I列
13:00開演、15:20終演
脚本:アントニー・シェーファー  演出:吉田鋼太郎
出演:柿澤勇人、吉田鋼太郎
【あらすじ】
著名な推理小説家アンドリュー・ワイク(吉田鋼太郎)は、妻の浮気相手であるマイロ・ティンドル(柿澤勇人)を自身の邸宅に呼び出す。不倫ヘの追及を受けるものだと思っていたティンドルに対し、ワイクは意外にも、「妻の浪費家ぶりには困っている」、「自分にも愛人がいる」と切り出す。さらにワイクはティンドルに、自宅の金庫に眠る高価な宝石を盗み出してほしいと提案する。そうすることでティンドルは宝石とワイクの妻を手に入れ、ワイクは宝石にかかっている保険金を受け取り愛人と幸せに暮らすことができるのだ、と。提案に乗ったティンドルは、泥棒に扮しワイクの屋敷に侵入するが…


前回上演された時は、西岡徳馬さんと音尾琢真さんで拝見しております。
その後、映画化したものも見ているので、2度観た事になりますが
詳しい内容については割と・・・覚えてない(呆)。

でもこの二人でこの演目をやる、と聞いた時は「おお、いいチョイスだ」と
思いましたよね(笑)。←しっかり覚えてないくせに。

寝取られた壮年のダンナと、寝取った若い男の二人芝居。
2人がお酒を飲みながら、腹の探り合いのような、丁々発止のやりとりをする。
セットは二階建てのワンシチュエーションもの。
舞台上には不気味な人形があって、この人形が笑い出す事もあったはず。
・・・っていうのが、すぐに思い出せるところ。
せっかく2度も観ているのに、情けない事この上ないですが、
「何度も新鮮な気持ちで楽しめる」と思う事にしました。





ああ、こんな感じのセットだったね〜と、劇場に入った時に思い出しました。
レプリカ公演なのか、上演にあたってセットまで指定されているのかは
分かりませんが。

観ながら「ああ、そうそう、そうだったよ」と思い出しつつの観劇なので
最後のオチも、あの不気味な人形が突然笑いだすのも驚きはしませんでしたが
(同じ公演なのに)何だかすごく受ける印象が違うんだけど?と思いました。

前回拝見したお二人も芸達者な方々なので、楽しく拝見したと思いますし
過去の自分の感想を読み直しても、そうであったと思いますので、良し悪し
という事ではないんだと思います。
何が一番雰囲気が違っているのかな・・と思うと、マイロが全然違うから
なんじゃないかな、と言う結論に至りました。

柿澤君の演じるマイロはなかなかに魅力的。
可愛らしい所もあるし、ビジュアルもいいし(笑)、年上の女の人から
モテそうな要素がいっぱいあるよね、と思います。華もありますし。
だから「寝取ったイタリア男」がハマる・・。
(歌声もちょっと聞けて、タップもちょっと観られてお得感あり(笑)。)
そして何よりも堂々としていて(だからこそ弱さを見せた時は母性本能を
くすぐられる感じ)、アンドリューを演じた吉田鋼太郎さんに対して
「挑んでいる」と言う感じが、すごくする。
それは役者としての柿澤さんと吉田さんとの関係が反映されたものなのかも
しれないな・・と思ったりもしましたが、やはりこういう作品は力関係が
拮抗していて、シーソーゲームになっている方が、迫力ありますから。
あと、個人的に柿澤君のグラスの持ち方が、色っぽいな、と思いました(笑)。

今回はあまり前方席ではなかったのですが、だからこそ2幕のあの
ライフマスク(でいいのかな?)が全く不自然に見えなかったですね。
私は「実は・・」を知っているし、特殊メイク系だと分かってはいたけど
それでも、お見事だな、と思いました。

もう2幕の後半は明らかにマイロの勝ちじゃないですか。
負けるのが苦手なアンドリューに対して、そこまで追い詰めたら
ダメだってば!だから若い子は!逃げ場を残してあげなきゃ!と、
思わず注意したくなるぐらい(笑)。
結論を思い出して知っていても、最後までハラハラしながら観られました。

二人がやりあうところは適度にアドリブ感もあるし、ライブ感もあるし
(実際に下着を相手の口に突っ込んだり・・というのは、毎回やっている
という訳では無さそうで)目が離せません。体当たり感、すごい。
まあ、冷静に考えるとお互いの持つコンプレックスを攻撃しあっている
ので、なかなか・・・エグイんですけども。

もちろん鋼太郎さんもいいですよねぇ。
著名作家ではあるけど、きっと「古臭い」なんて書評に書かれたりしてて
密かに気に病んでそうな、そんな人。
「ゲームが好き」と言っているけど、所詮は「自分が優位で居る事が好き」
なだけの、器の小さな男。尊大な態度を見せているのに、そういう卑屈
というか、人間臭いところを見せるその差が、さすがとしか・・・。

ただ、やはり今の時代に合わせて・・という事なんだと思いますが、
アンドリューはノートPCを使っていて、スマホで照明や音楽の操作が
できるという設定。
うーん、それ要るかなぁ・・・?どうしてもそこだけ「取ってつけた」感が。
スマホを使って家電を操作する程度にITリテラシーが高いはずなのに
(アンドリューがマイロの)家に「メモ」をおいてくるんだ・・・と思うし
それ以外は、全体にすごくアナログ感が漂っているから、どうもギャップが・・。
イマドキのノートPCは閉じてる状態であの程度の水が掛かったところで
起動ぐらい問題ないと思うし、あの程度の落下で壊れたりしないでしょ。
(ま、細かすぎてスンマセン)
これ系の問題は、他の舞台でもいえる事ですけど、難しいですね。

ふと思ったのですが、「探偵」って、どういう意味だろう?。
2人とも探偵業ではないし、探偵を雇ったりしている訳でもない。
「探偵」と和英辞典で検索すると「detective」と出てくるんだけど。
で、「sleuthとdetectiveの違い」を少しググって見たのですが、
「detective」は「刑事」の意味があるらしく「private detective」で探偵。
私が日本語で「探偵」でイメージするのが「private detective」の方らしい。
一方「sleuth」は探偵業を生業としている人と言うより、謎解きが趣味という
愛好家の人のイメージが近いのだとか。動詞として「探偵のように情報を調べる」
として使う事もできるらしいので、この二人がやっていた「ゲーム」をする事が
お互いに探りあっているので、「スルース」という事になるのかな?
こういう時に、やはりネイティブでないと伝わらないものがあるなぁ・・と
もどかしい気がしたりします。

行くまで知りませんでしたが、この日はどうやら大千秋楽だったようです。
丁度、このカンパニーは1週間前に仙台での大きな地震に遭遇された
という事を聞いていましたので、大丈夫かしら・・と思っていましたが 
無事、千秋楽を迎えられたとのことで、お二人からもご挨拶がありました。
まあ、柿澤君の敬語の使い方はヤバいレベルだったけど(尊敬語と謙譲語の
使い方がなってなくて、鋼太郎さんに注意されてた)、再演を匂わせる
ようなコメントもありました。

この組み合わせなら、また観に行くのもいいな〜。
また観に行っても、違う印象を受けそうだな、と思える舞台でした。