もともと興味が無かった訳ではなかったのですが、優先順位を
考えた時に一度は見送った公演です。

アリージャンス「アリージャンス〜忠誠〜」東京国際フォーラムC  6列(2列目)
13:00開演、15:45終演
脚本:マーク・アサイト、ジェイ・クオ、ロレンゾ・シオン
演出:スタフォード・アリマ出演:濱田めぐみ、海宝直人、中河内雅貴、小南満佑子、上條恒彦、今井朋彦、渡辺徹、照井裕隆、西野誠、松原剛志、俵和也、村井成仁、大音智海、常川藍里、河合篤子、彩橋みゆ、小島亜莉沙、石井亜早実、盒区集

【あらすじ】
日系キムラ一家のカイト“おじいちゃん”(上條)、タツオ(渡辺)、ケイ(濱田)、サミー(海宝)はカリフォルニア州で暮らしていたが、真珠湾攻撃が勃発後、日本人を祖先に持つというだけで、日系人たちは自宅から強制的に追い出され、収容所へ移送されてしまう。収容所での厳しい環境の中でも希望を失わず暮らしていた彼らにある日、アメリカへの忠誠を問う忠誠登録質問票(Loyalty Questionnaire)が配布された。父タツオは不当な強制収容に抵抗し、アメリカへの忠誠を問う質問にNoを貫く。姉のケイは収容所で出会ったフランキー・スズキ(中河内)とともに、強制収容と徴兵の不当性を訴え、日系人の人権を求める運動に参加する。一方、弟のサミーは、他のアメリカ人と同じであること=国家への忠誠を示すことで父をはじめとする日系人を自由にしようと、家族の反対を跳ね除けて戦場へ赴く―。



ただ、急遽時間が空いたのでどうしよう・・・と思った時に、
この公演が公演中である事が分かりました。
良席を譲っていただける事になったので、これもご縁かな・・と。

平日の昼公演だから劇場周りは人気が無いかと思ったら
国際フォーラムでどこかの大学が卒業式を行う日だったらしく
袴姿の女の子達がうじゃうじゃ。(今年は卒業式ができてよかったね)
おまけにランチタイムも重なってしまって、キッチンカーにやってくる
会社員たちとも重なってしまい、ものすごい人になっておりました。

ただ「平日は人が少なさそう」という目論見は完全に外れました(爆)。



 
舞台にはソファが置かれ、年老いた老人(上條恒彦)が一人座っている。
そこにやってきたのが「遺言執行人」を名乗る若い女性。姉のケイ(濱田めぐみ)が
亡くなり、遺品を届けに来たという。
姉とは50年以上没交渉であり「何も受け取りたくない」と言いつつ、中身が
気になりその女性が持参した封筒を受け取る。
どうやら老人は姉との事を思い出す事が苦痛らしく、姉も弟の事が心残りだった
という事が分かり、セットの背景が転換し、50年前に戻ります。

まあ、この段階でめぐみさんの歌が素晴らしくて(いつも素晴らしいですが
拝見するのが久しぶりだったので)ああ、ミュージカル観に来たなぁ・・なんて
思ったりしていました。
私はそんなにたくさんミュージカルを観ている方ではないので、あくまで
素人の感覚ですが、アンサンブルさんも皆さん安定していらっしゃるし、
濱田さん、海宝さん、小南さん、中河内さんと、メインキャストも歌の心配が
全く無い歌ウマさん達ですから、本当に安定感があって歌が素晴らしい。


ケイと弟のサミー(海宝直人)は日系2世。
祖父や父親が移民としてやってきて、苦労して農園を開拓。自分が苦労したから
市民権を持つ息子のサミーにはロースクールに入って法曹界で活躍できる人生を
送って欲しいと思っている。
近隣の日系人や、アメリカ人たちとも良好な関係が築けていたのに、ある日
全てが奪われる・・・。

この辺りから日系一世である親世代と、日系二世でありアメリカで生まれ
アメリカの教育を受けて育ち、市民権も持つ息子と微妙な価値観の違いが
生まれていきます。「ガマンして静かにしていろ」と言う親たちと、自ら
「アメリカに対する忠誠を示そう」と言うサミー。

その亀裂というか「溝」は収容所に入ってからも縮まるどころか、むしろ
大きくなっていきます。
砂漠の中でも収容所に畑を作り、余った農作物を軍に寄付し、ルールを守って
「ガマン」して過ごす親たちに対し、何とかアメリカ軍に志願して、自分達の
命をかける事で自分たちの忠誠心を理解してもらおうとするサミー。

日本で暮らした親世代には「ガマン」「耐える」事が美徳だったり
解決方法の一つだと思えたかもしれないけど、アメリカで教育を受けた
二世たちには「ガマン」の意味が伝わっているとは思えない。
逆を言うと、アメリカ軍にも伝わっていないんじゃないかなぁ・・と思う。
逆境への立ち向かい方、アメリカと言う国に対する想いの違いを見て思うのは
教育というものの影響の大きさなんだよなぁ。

しかし、こういう一途な役に海宝君はピッタリだなぁ。
ちょっとダサく見えるシャツがまたいい感じに時代を感じさせて(笑)。
でも、サミーはサミーで家族を守るために、命も賭けて精一杯戦った。
同時に収容所に残ったフランキー・スズキ(中河内雅貴)やケイだって、
命を賭けて戦っていた訳で、どちらが正しくて、どちらが悪い、
と言うものではないはず。どちらの心情も理解できるもの。
お互いに家族として思いやる気持ちを持ちながら、分かり合えず
別れたままになってしまった事には苦い思いしか残らないわぁ。

今回はミュージカルの歌ウマキャスト達も素晴らしいのですが、ストプレで
活躍してるベテラン俳優の上條恒彦、今井朋彦、渡辺徹のお三方が
素晴らしくて(まあこの方たちが素晴らしいのもいつもの事ですが)
上手い役者さんはストプレでもミュージカルでも素晴らしいのだな、と。
特にサミーの老後を演じた上條さんったら、もう・・・!
あのサミーがあのまま年老いたらこうなるよね、と思わせるのに十分な説得力。
だからこそ、あのエンディングでの感動があるんだと思わずにはいられない。
遺言執行人の身元が分かり、パープルハート章がサミーの手元に戻った時
思わず泣きそうになったし、周りに泣いている方も一杯いらっしゃいました。

この一貫して、完全に日系人の立ち位置から書かれている作品が
ブロードウェイ作品だった、いう事が意外ですね。
日系人の収容所での苦難については、日本人も良く知らない人が多いと思います。
まあ「日系人(アメリカ市民権を持つ人)」の事でもあって、「日本人」
の事ではない、と言うのもあるとは思いますが。
ある意味、アメリカの歴史の中であまり公にしたくない部分でもあるでしょう。
Wikiによれば作品には「賛否両論あった」そうですが、それは言い方を変えれば
アメリカに都合よく書かれた作品ではない、という事でもあるかな、と思います。
これがアメリカで上演できるのは、健全な事だとも思いますけどね。

カーテンコールは写真撮影OKだったのでパチリ。
カーテンコール

メッセージ性が強い作品のため、好みは分かれるかもしれないですが
私にとってはむしろ好みでした。
濱めぐさんの曲には鳥肌が立ったし、急遽観劇する事になった作品ですが
期待以上に楽しませて頂けました。終わってからは頭がパンパンに
なっちゃいましたけども(笑)。