「観劇三昧」で拝見した事のあるJACROW。
何となく、この劇団の作品は好きなんじゃないかな、私・・・と
思ったので、チケット取っておりました。この作品に合わせて
今回の観劇予定を組んだと言っても過言ではない。

鋼の糸JACROW#30「鋼の糸」駅前劇場A列
19:00開演、20:55終演
脚本:中村ノブアキ
出演:小平伸一郎、芦原健介、谷仲恵輔、狩野和馬、今里真、佐藤拓之、佐瀬弘幸、内田健介、日下部そう、江口逢、福田真夕、宮越麻里杏
【あらすじ】
今日も私たちは胃に穴をあけながら働く。学閥、派閥、閨閥、そんな閥と罰の世界では計略、嫉妬、世辞、卑屈、憎悪が渦巻く。この巨大な渦はどんな想いも飲み込むのだ。なぜ私たちはここで上を目指すのか。それはそこにすごいものがあるからだ。たぶん。きっとこれは笑えない喜劇、出世を目指す男たちの物語。


これはビジネスドラマとのこと。
ビジネスドラマって、「ハゲタカ」みたいなものを指すのかなぁ・・
等と思いながら。





総務部に新たに着任する予定の部長が、総務管掌の乗務執行役員に
挨拶をしているが、「もともと別の会社」だったが同期だった様子。
この役員がこの部長を引っ張ったらしい。
この部長に求めるのは「働き方改革の推進」らしいが、部長はそもそも
働き方改革に後ろ向きらしい。
この話は、何故このオープニングの会話に至ったか・・を振り返る物語。

1989年の話。ちょうどバブルの頃ですね。私はこの頃大学生だったので
登場人物は私よりも数年年上ぐらいの設定。
出てくる会社は2社。千葉製鉄(チバテツ)と富士鉄管(FKK)。

チバテツはいわゆる昔の典型的な営業会社、っていう感じ。とにかく接待して、
人間関係を構築して、情報を仕入れてナンボ。上下関係は絶対で、社内の派閥で
出世が左右される・・という感じ。
FKKはチバテツほどの体育会系のノリは無いけど、「営業部が会社を支えている」
という意識は変わらない。ただ、強烈なリーダーもおらず、上司の顔色を見ながら
発言するような社風で、上司の意見と対立した意見が出せる雰囲気ではない。
その上司が現状を甘く読みすぎたおかげで、FKKはチバテツと経営統合を
する事になってしまう。

このモーレツ社員の雰囲気は年代的に理解できる(というか懐かしい)し
今の会社も、同業他社と「対等な経営統合」をしたことがあるので
チバテツとFKKの人の最初頃のギクシャクした感じは、めっちゃよく分かる。
(私はどちらかというとチバテツ側の会社だけども)

自分の出世に目がくらんで経費の不正清算に手を染め、失脚したり
経営統合相手からはじき出されてグループ会社に出向させられて、一旦は
失意に沈んだものの、出向先でやりがいを見出したり
自ら地方の工場に異動を希望してドロップアウトしたものの、最終的には
呼び戻されて、出世していく者もいる。
一旦は総務に飛ばされ、出世コースからは外れたと思われたものの
総務部門で頭角を現して役員に就任したり・・と、悲喜こもごも。

バブルの頃の服装や髪形が、どんどん今の状態に近づいてきたり
紙を使った打ち合わせをしていたのが、ノートPCを使ったMtgに変化
してきたり・・と、自分自身の会社人生を重ねて見てしまいました。
(最後には中国に行ってきた社長夫妻が体調を崩し、葬式帰りと思われる
シーンで終わる・・のは、現代を表してますよね。)

もう少しガッツリとハードな経済ドラマかと思っていたのですが、
そこまででは無かったというか、「職場」や「仕事」の在り方の変遷を
見られる作品だった、という印象ですね。
「上司が選べない」は元々言われている事で、会社員ならきっと一度は
思う事だと思うし、会社員や会社員だった人には「うんうん」と思える
ポイントの多い作品だったと思います。
芝居の最中「ははは」って笑うのは男の人の方が多かったしね。

自分自身も転職を一度しており、転職した先の会社はベンチャー上がりの
それ程大きな会社でもなかったのに、M&Aを繰り返し、今では東証一部上場。
自分自身もM&Aに関連してグループ会社に転籍になったり、吸収合併で
元の会社に戻ったり・・を経験。経営統合先の会社との人間関係作りや
仕事の仕方の違いに戸惑ったりという事を経てきたので、この作品を見て
「懐かしい」と思ったり「そんなもんじゃないよ」と思う所もあったり・・。
でも、自分がそういう経験をしてきて思うのは、諦めるところは諦めて
周りに対応していかないとね・・という事。

「上司は選べないが、育てる事は出来る」は、ある意味、真だと思うけど
「上司と他人は変えられないが、自分は変えられる」の方が、より真に近い気がする。
自分自身の今の上司との関係性など、思う所もありながら、改めて
そんなことを考えたりもしたのでした。

芝居も面白かったですが、自分の会社員人生を、図らずも振り返る事になった
そんな観劇でした。JACROWはもう少し観続けてみたいな、と思っています。