先日の休日出勤の振替休日という事で仕事はお休み。
朝ご飯食べて、取り置きをお願いしていた本をピックアップして渋谷へ。

首切り王子と愚かな女「首切り王子と愚かな女」PARCO劇場F列
13:00開演、15:45終演
作・演出:蓬莱竜太
出演:井上芳雄、伊藤沙莉、高橋努、入山法子、太田緑ロランス、石田佳央、和田琢磨、若村麻由美、他
【あらすじ】
雪深い暗い王国ルーブ。
英雄であり人格者であった先王バルが早くに没して20年。女王デンは溺愛していた第一王子ナルが病に倒れてからは国のことを見なくなり、魔法使いを城に招き入れ、閉じこもるようになった。そこで城に呼ばれたのが第二王子トルであった。トルは幼い頃から「呪われた子」とされ城から遠ざけられていたが、反乱分子を鎮圧するために再び城に戻される。使命に燃えたトルは、反乱分子の首を次々に落とし「首切り王子」として恐れられるようになる。
リンデンの谷に住む娘、ヴィリは死ぬことにした。これ以上、生きる理由が見当たらなかったからだ。最果ての崖にたどり着いたヴィリが目にしたものは白い空と黒い海と首切りの処刑であった。首切り王子トルは死を恐れないヴィリに興味を持ち、召使いとして自分に仕えるように命令する。城に連れられていくヴィリが耳にしたのは王子の歌であった。美しくも悲しい歌。ヴィリはトルに深く暗い孤独を見る。こうしてヴィリは召使いとして首切り王子に仕える日々を送り始める。そこに見たのは野心や愛憎、陰謀が渦巻く人間たちの姿であった。


「開演の5分前からキャストが舞台上で支度をしております」と公式HPに
書かれていたのに、本を読むのに夢中になって殆ど見てなかった、
何だかもったいなかったな・・・(笑)。

蓬莱さんの作品は幾つも拝見していますが、寓話ってどうなんだろう?
(寓話と言えば、大王(後藤ひろひと氏)のイメージが強いんですよね。
・・・と思っていたら!これヤバイ。めっちゃ私好み。切ない・・・。
感想、めっちゃ長いっす。





書きたい事が一杯あるので、項目ごとに整理して書こうかと思います。

【ストーリー(ネタバレしまくり)】※自分の記録で私がザックリまとめてます
ルーブという国で王子が誕生した。出産を終えても母(女王)のお腹は大きいまま。
出産が終わったのに、まだ妊娠している・・という不可解な状態で
女王はその3か月後にまた男児を出産するが、第二王子は笑いも泣きもせず
「呪われた子」として、離島に流されて育つ。
第一王子のナルは母の愛を受け人格者だったが、病に倒れた。女王は
ある目的のためにトルを離島から呼び戻す。「あの時はすまなかった」と謝って。
呼び戻された第二王子トルは女王を侮辱したり、不敬を働いたとと思われる
人間を次々と斬首していっていたが、それはひとえにトルが母親を慕う心の裏返しだった。
そんな処刑所にヴィリがやって来た。崖から身を投げて死のうと思ったから。
母親と二人暮らしだったが、母が亡くなり生きる理由が無くなっていた。
トルは処刑しようとしても怖がらないヴィリを城に連れ帰り、召使にする。

城ではヴィリは生き別れた姉と再会する。自分と母を捨てた姉を見返すため、
ヴィリは城で成り上がる事を決意する。
姉も以前自殺をしようとして、第一王子のナルに助けられたことがあり、
ナルに仕えるために城にいたのだった。
自分に怖がらずに接してくるヴィリにトルも心を開き始めたそんなある日、
森でトルが狙撃され、思わず盾となり倒れるヴィリ。
犯人は圧政を覆さんとする反乱分子のメンバーで、指示したのはヴィリの姉であった。
ヴィリの姉は投獄され、ヴィリはトルを助けた功績で第二王女の地位を得る。

そんな中、母親である女王がトルを呼び戻した理由が明らかになる。
黒魔術的なものを使い、トルの体にナルの魂を移そうというものだ。
肉体的な苦しさだけでなく、自分が呼び戻されたのは器としての肉体だけが
目的だったという母の目的を知り、目の前で苦しむトル。
二日後にはトルはナルに変わってしまい、トルは居なくなるという。
ナルの移行が終わるまで、トルは塔に幽閉され、ヴィリも投獄された。

城には、圧政に苦しんだ一般民衆が押し寄せてきている。
第一王女に助けられたヴィリと姉は和解をし、姉はナルを守る為に眠っている
ナルの部屋へ、ヴィリはトルを助けるために幽閉された塔へ向かう。
「もう自分はナルになってしまうのだから」と逃げる事を拒むトルに対して、
「もう1日、自分はトルと一緒に居たいんだ」と伝えるヴィリ。初めて
トルはトル自身が必要とされているという事を理解し、城を抜け出す2人。
城では、女王が自分の過ちに気づき、民衆と対峙する事を決意していた。

城を抜け出した2人は初めて出会った崖にたどり着く。
一安心するのもつかの間、近衛兵に刺されて倒れるトル。以前トルは近衛兵を
一人を切り殺しており、その兵士を愛していた同僚が、トルを襲ったのだった。
トルは自分の代わりに、色々なものを見て欲しいとヴィリの背中を押し息絶える。
ヴィリは背中に感じたトルの手の重みを感じつつ、生きるために一人で
馬を走らせるのだった。


【タイトルについて】
「首切り王子と愚かな女」というタイトル。
“首切り王子”はトルの事ですよね。ただ「愚かな女」については、
ちょっと考えちゃう。だって、出てくる女性は全員「愚か」だともいえる。
啖呵をきって家を出てしまったが為に、自分の今の状況を知られたくなかった
ヴィリの姉も愚かだし、トルに見向きもされない代償に近衛兵と不倫する
第一王女も愚か、ナルを復活させるために禁忌の魔術を使って、その呪いで
国中の動物を殺してしまった女王も愚か。だから「首切り王子と愚かな女たち
でいいなじゃないの?なんて思っちゃうんですけど。

それに対して男性登場人物はみんな、一途だったりするので凄い対比ですが、
何にせよみんな哀しい人達なんですよね。


【演出がいい】
セットも演出も、めちゃくちゃ私好みでしびれた・・・。
舞台のセットは、「子供のためのシェイクスピアシリーズ」のような、
机というか木製の箱があるだけ。それを組み合わせて、崖になったり、
城の中になったり、牢獄になったりする・・というもの。

そしてその舞台を囲むようにキャストの休憩場所的なものがある。
芝居のスタートは、一幕が伊藤さん、二幕がロランスさんが手を挙げスタート。
この作品は「寓話」なのに、敢えてファンタジー感あるセットを一切使わない。
なのに、芝居になるとそれが全く気にならなくなってくるし、さっきまで
普通に休憩していた「俳優」たちが、(衣装などは同じなのに)芝居が始まると
「王子」になったり「女王」になったりする。
その「現実」と「寓話」の世界の境界線が楽しめる感じが、もう演劇の醍醐味!
と言った感じで、たまらなく面白い。
こういうセットや演出は初めてじゃないけど、「寓話」でこれをする、っていうのが
意表をついてるよねーと思いました。


【脚本がいい】
蓬莱さんの作品はそこそこ観てると思うんですけど、この作品は今まで私が観た
作品とはちょっと違う・・という印象。
(いい意味で)とても意地悪い作品を書く人、っていう印象だったんですよね。
誰もが(劇中でも、観客でも)「いい人」と思われる人が実は心に闇を抱えていて
「悪い人」と認識されている人が、実はいい人だったと最後に分かる・・
みたいなのが蓬莱さんの定番、って思っていたんです。
ただ少し前に観た「コールドケース3」の蓬莱さんの脚本回がたまらなく
切なくて、ああ、こういう感じも書かれるんだなぁ‥と思っていたら、今回
その何段も上を行く切ない話。(もともと「切ない」話が大好物ですから、私。)
真正面からド直球を投げられたような感じがしました。

あとこの作品はモノローグがめっちゃ多いという特徴がありますね。

そして、素晴らしいな・・と思ったのは、登場人物全てに「物語」があるという事。
主人公のトルやヴィリだけではなく、近衛兵一人一人にも物語があって、
それが、とてもいいバランスで組み合わされている、という印象ですね。
個人的には高橋努さんの役が堪らなかったです、切なくて・・・・。


【キャスティング・俳優陣がいい】
役にピッタリのキャスティングで皆さん、単純にとても良かった。
井上芳雄氏は、かなり私の中でポイントアップ。(いや、もともと高かったけども。)
子供のようにダダをこねたり、愛情表現が苦手だったり、最後の「俺の代わりに見ろ」
と言ってヴィリを送り出すときの表情なんて、見ててたまんなかった。
声もデカイから、怒鳴るのも迫力あるしね(笑)。
もっと「悪役」や「嫌な役」やってくれないかなー、合うと思うんだけど。
ただ単に「悪役」な訳ではなく、ヴィリと出会って初めて「相手の都合に
合わせる事、相手の好みを優先する事」を覚えていき、嫉妬をするように
変わっていく過程も、見ものでした。
そして、彼の歌声の素晴らしさが、めっちゃ説得力をもって伝わって来ましたよ。
うん、ヴィリが言う通り「呪いを解いてくれるような歌声」だった。
透明感があって、切なくて、素晴らしい歌声。
これは芳雄氏でなければできない役、と言ってもいいんじゃないかと思う程。

そして、伊藤沙莉さん。顔はCMとかで見た事はあっても、何をしている人か
全く存じ上げなかったのですが、本当に良かった。
「え、まじ?」とか「だっさ」っていうのが、寓話の世界とは異質感があって
それがまた伊藤さんのハスキーボイスに合ってて、間も良いから、
客席をクスクス笑わせてもいたけど、あの小さな体で走る様子とか
もう「精一杯」っていう感じが伝わってきてね・・・。
あんな最後を見せられたら、絶対にヴィリは死ねないね、って思うし、絶対に
自ら死んだりしないだろうな、って言う表情だった。
今まで人の首を切るだけだった王子がヴィリに残した命だもん、
最後になって「生きる目的」が出来たんだよね。


ロランスちゃんの潔癖なまでの真っすぐさも良かったし、若村さんの気品は
相変わらず素晴らしいし、盒兇気鵑辰栃鵑錣譴覆ぬ鬚多い気がするけど(笑)
今回も思いっきり報われなくて、でも優しさが溢れててよかった・・・。


【結論、この作品大好き】
ホロっとしたりすることは増えたけど、「ああ、泣いた」って思うほど
泣ける作品は実はあまり多くないんですが、今回は泣きました。

あのラストシーン、どこかでみた事があるんだよな・・って考えてたら
映画の「タイタニック」を思い出したんだよね。
海に沈んでいったジャックと、ジャックの為にも生きなければ・・と決意する
ローズにちょっと2人が重なったりして。

蓬莱さんらしからぬストレートに響く寓話・・ではあると思うんだけど
「政とは」とか「親子とは」とか、「人を愛する事」とか、結構それぞれに
深かったりするのも、お気に入りのポイントです。

東京に住んでいたら絶対にリピっただろうし、何なら大阪まで行っちゃう?
って調べたくらい(スケジュール的にムリでした)、ストライクな作品。
これ、WOWOWとかで放送してくれないかなぁ・・。
無理なら、円盤化してくれないかなぁ・・買いたいんだけど。

そこまで期待していたって訳じゃなかったので、いい意味で「やられた」
という1本でした。ああ、もう一度観たい!