朝ご飯を食べた後向かったのは渋谷。
雨が降ってると、コクーンまでの道が遠く感じるよね・・・

夜への長い旅路「夜への長い旅路」シアターコクーンA列(3列目)
脚本:ユージン・オニール  演出:フィリップ・ブリーン
出演:大竹しのぶ、大倉忠義、杉野遥亮、池田成志、土居志央梨
【あらすじ】
1912年、夏のある日の朝。俳優ジェイムズ・タイロンの別荘の居間で、家族が朝食後の団欒を楽しんでいる。しかしその会話から徐々に明らかになるのは、彼らの実像、家族を覆う暗い陰である。父ジェイムズは異常な吝嗇家であり、母メアリーは麻薬の常習者、長男ジェイミーは酒と女にだらしない放蕩息子で、次男エドマンドは肺を病んでいる。メアリーは昔、幼い息子ユージンを亡くしたことで罪の意識にさいなまれていた。その後にエドマンドを出産し、産後の病気をきっかけにモルヒネ中毒に陥ってしまったのだ。家族の確執が次第にあぶり出されていく中、再びモルヒネに手を出したメアリーが幻覚に襲われ始めて……。



劇場に入ると、若いお嬢さんだらけでビックリ。
あれ、今日アイドルの人って出てるんだっけ?と改めて確認すると
大倉君が確かJの子だったという記憶。
大竹しのぶさんぐらいしかキャストを把握していなかったわ・・。

感想はまた改めて。
演劇らしい演劇だし、アメリカらしい作品だな・・と思います。
これは配信で観ても、面白さが分からないタイプの作品でしょう。
とはいえ、3時間半、まぁまぁ疲れました(笑)。



 
舞台は、タイロンの別荘の居間。
夫ジェイムスが妻のメアリーとにこやかに話している。
とても妻想いの夫・・・な風だけど、ちょっと違和感がねぇ・・・。
会話が進むにつれて、その違和感が分かってきます。
メアリーは病み上がりだ。しかも、メンタルヘルス系の疾患じゃないか。
「妻想い」と思ったんだけど、「腫れ物」を扱うよう・・と言う方が正しい
気がしてきます。

そのうち家族全員が集まってくるのだけど、家族の団らんとは程遠い
トゲトゲした会話が交わされるんですよね。
(むしろ唯一家族でないメイドとメアリーが一番いい関係かもしれない)

ピアニストか修道女にあこがれていた、敬虔なカトリックの信者だった
メアリーは、舞台役者のジェイムスと結婚。
ただ、修道女にあこがれるようなメアリーには、旅公演で場所を転々とする
(売れない)役者の妻というのが、ストレスだった・・・らしい。
それに加えて、医者が安易に処方したモルヒネがきっかけで、モルヒネ中毒
になってしまっている。
どこか宙を見るような視線に、少女のような話し方をしたり、特に何も
語らなくても「この人は精神に問題を抱えている」と分かるなんて、さすが
大竹しのぶさんだわ・・と思います。

夫のジェイムスは決して家族をないがしろにしている訳ではないが
メアリーの医者代をケチったがために、医師はメアリーに安易にモルヒネを注射
してしまっている。そんな事があったにもかかわらず、自分の息子が結核だと
診断されても、診療費の安い、設備の整っていない療養所に入れようとしたり
外面はいいくせに、部屋の電気を消しまくり、ウイスキーの減り方まで
チェックをする。
ただ、ジェイムスもお金で苦労してきた時代があってこうなってしまっており
成志さんの演技もあるけど、「そうか・・・、そんな事があったのね・・」と
ちょっと納得させられてしまったりもする。

メアリーは息子たちの事を愛している事は間違いなさそうだけど、それぞれに
鬱屈した思いを抱えている。ジェイミーは酒と女に溺れているとはいうけど
母親の愛情が弟に向かっている事に対する愛情不足にも思えるし、でも
弟のエドマンドを認めている所もある様子。弟も親の事も複雑な思いを
抱えつつそれぞれを心配しているのもまた事実であり、長男らしいわ・・。
エドマンドは自分の病気(結核)の事を心の中では分かっており、
どこか冷静で、達観している感じ。

舞台の全般を通して、霧笛の音が流れ、独特の雰囲気を醸し出す。
舞台上に吊り上げられている、白いレースの付いた布。この布がまるで霧を
表しているようでもあるし、ずーっとわずかに動いているのが、まるで
呼吸しているようでもあるし、舞台の内容とリンクしているように思えました。

まあとにかく、全員が揃いも揃って長セリフ。
そして、個人の主張をひたすら聞くという感じなので、疲れると言えば
疲れる作品ではありますが、「一夜の出来事」とは思えない程の内容の
濃い会話劇でした。(「この役疲れるのー」って大竹さんラジオで言ってましたが)
誰が悪い、って決められないものね・・。
ラストがメアリーが白いドレスを纏って「恋に落ちた」と幸せだった時の
記憶で幕となったのが、私にとっては少し救われたような気もちになったのですが
出来ればもう1度ぐらい、じっくり観てみたい作品だったと思います。

しのぶさんと成志さんの達者ぶりに引っ張られて、若手のお二人もとても
役にマッチしていました。いやぁ、濃い作品でした!!
これは配信とか映像で観ても良さが伝わらないタイプの作品なんじゃないかな。
生で観られて良かったです。