興味があったけど、スケジュールが合わずに一旦は断年。
ネット上で評判が良さそうだったので悔しく思っていた所
配信アリとのこと。アーカイブもあるのでこれは観るしかないでしょう!

アカシアの雨が降る時「アカシアの雨が降る時」六本木トリコロールシアター
作・演出:鴻上尚史
出演:久野綾希子、前田隆太朗、松村武
【あらすじ】
 母が倒れた。病院に駆けつけると、母は自分のことを20歳の大学生だと思い込んでいた。そして、私の息子を、つまり、母の孫を自分の恋人だと信じて呼びかけた。母の恋人、つまり私の父と息子は、顔がよく似ていた。母と父は大学生の時に出会ったのだ。医者は、母は病気であり、母の妄想を否定してはいけないと告げた。息子は母の恋人として話し、私は恋人の父、つまりは私の祖父だと振る舞った。こんがらがった関係の中、母は大学に戻ると言い出した。70年代初頭、恋と革命が途方に暮れ始めるキャンパスへと。



鴻上さんの事は存じ上げております、もちろん。
演劇好きなら誰でも知ってるでしょレベルの有名な方ですから。
なのに、なのに私は、鴻上さんの作品を1度も観たことが無い!
私が観劇を本格的に始めたのが2005年とか2006年なんですが
第三舞台が2001年でいったん活動を休止し、2012年に再開をした
のですが(その時の事は知ってる)、すぐに解散されてしまったので
チャンスが無かったんですよね・・・。





なかなか切ないお話でした・・・。

母親の愛情が重くて疎遠になってしまった中年の息子。
小学生の頃両親が離婚、父親(上記の「中年の息子」)と本当は仲が
悪かった訳ではないが、母親の手前、父を憎む事を選び同じく母親を
重く感じ、今後の目的を失っている孫。
そして、夫を亡くし、一人暮らしをしている祖母の3人のお話。

ある日祖母が倒れ、診断されたのはアルツハイマー型認知症。
自分の孫を「結婚前の夫」と思い込み、自分を20歳の大学生だと思い込む。
いきなり自分を恋人だと思い込んでいる祖母に戸惑う孫と
自分の存在を忘れる(というか子供が居る事すら忘れた)母に戸惑う息子。
これだけ書くと「うわ、介護とか大変そう」って思いがちなんだけれども
祖母が20歳だった頃のギャグが連発され(「バッチグー」とか、「花血ブー」とか)
それが理解できない孫の様子に思わずクスっとしちゃう。
ただ、私は年齢からその面白さが分かるけど、若い子達はどうなのかな?
「“音楽サークルはアカの集まり”だから親に反対された」と話す祖母に
「垢?お風呂入ってないの?」と聞き返し
「そうね、活動に忙しいから入ってないかもね」と、嚙み合わないながらも
会話が進行していったのにも笑っちゃった。

ただ、孫が祖母のダジャレに戸惑う所が多々あって笑いになってたけど
祖母が孫の言動に戸惑うシーンはあまりないのよね。
きっと単語やイントネーション等、当時とは違うものもあるはずだし、
そもそも服装のセンスだって、髪形だって全然違う。
「アルツハイマー型認知症だから、周りの事は気にならない」で押し通すには
ちょっと無理があるような気が、しなくもないんですけど。

そうそう、「結婚したら家庭に入って欲しい」とか、「女に教育は不要」とか
親がサークル活動にまで口出しするとか、こういう事象も今の子にとっては
信じられないのかもしれないですねぇ。昔は珍しくなかったと思いますが。
(私自身も「女は四年生大学なんか行く必要ない」って実際言われたからね)

そんな状況でも仕事に忙しく飛び回る父親を軽蔑した目で見ていた息子だけど
アメリカ人になり切って「母親と話したかった」と語る姿や、いつもなら
何をおいても飛び出していった仕事を、部下に任せて家に残る様子を見て
少しずつ親子の距離感が縮まっていくのも感じられます。

海外に居る娘と和解出来なかったというか、誤解されたまま逝ってしまった
のが切なかったけど、一緒にご飯を食べて、歌って、笑って、ほんの一瞬だけど
自分を息子/孫と認識もしてくれて、最後を看取る事も出来た。
この件で親子の距離も近づいたし、孫は自分の進路を自分で探そうという
気持ちになれた。何よりも、おばあちゃんが「やらずに後悔していた事」を
時空を超えて(笑)成し遂げられたし、ハッピーエンドですよね。
最後に「アカシアの雨がやむとき」を歌ってくれたのが印象的でした。
まあ、冷静に考えると、孫とその母親の関係や、息子の退職/再就職とか
解決していない事も多いのだけど。

キャストの3人も素敵でした。松村さんがラサール石井さんに見えたりも
しましたけども(笑)。前田隆太朗さんもお歌が上手いのね・・と思ったら
テニミュにも出ていた2.5次元で活躍されている方なんですね。
久野さんはとにかくキュートで、「おばあちゃん」なんていうのが失礼
なんじゃないの?という程でした。

笑いもあって、ホロっとして。
その中にベトナム戦争とか、学生運動の話を織り交ぜてきているというのは
鴻上さんの特徴なのかな・・等と思って拝見しました。
いずれ鴻上さんの作品が上演されるような事があれば、前向きに観劇して
観たいなと思います。