「hedge/insider」が終わって少し休憩・・・と思い、池袋方面へ。
途中にあったドトールに入って座って間もなく、外が真っ暗になり
雷もドカンドカン鳴っている、すごいゲリラ豪雨。ひぇ〜危なかった。

trust
serial number06「hedge1-2-3『trust』」あうるすぽっとB列(最前列)
18:30開演、20:48終演
作・演出:詩森ろば
出演:原嘉孝、石村みか、熊坂理恵、笹野鈴々音、辻村優子、岡田達也
   浅野雅博、加藤虎ノ介、今奈良孝行、佐野功、根津茂尚、酒巻誉洋
   藤尾勘太郎、池村匡紀、吉田栄作
 【あらすじ】
日本初の独立系バイアウト・ファンドであるマチュリティーパートナーズの
創設メンバーがインサイダー取引事件を引き起こした。
金融のプロが引き起こしたインサイダー事件により世間の信頼も失墜したが、
金融の理想を語ってマチュリティを設立した仲間の起こした事件は
残されたメンバーたちにも大きな心理的なダメージを残していた。
そんな所に、学生時代の同級生から茂木の元へ「起業の相談に乗って欲しい、
そして可能であれば出資をしてくれないか」と連絡が入る。同級生は
フェアトレードのコーヒーを扱う事業を興したいという。
そしてその頃、正式にマチュリティーパートナーズの社員となった谷川は
通信企業でPHS事業の立て直しに取り組んでいた。




この作品は今回新たに書き下ろされたもののようです。
マチュリティーパートナーズのメンバーは同じで、「hedge/insider」
は全員男性キャストでしたが、こちらは女性キャストもご出演。
この日は、「Aプロ/Bプロ」を通しで観られる初めての日だった
という事もあり、私と同じように続けて観劇していた人が多かった
という印象です。
(お隣がマチネ同じ人だった。鞄を蹴飛ばされたから覚えてる(笑))







「hedge/insider」は1幕と2幕で楽器が違っていたけど、こちらの
「trust」では上手下手に分かれて、両方とも使われています。
セットは同じ。わらわらとキャストが出てきて雑談風に話して
開演を宣言するのも同じだけど、その時のキャストは全員女性です。
そうそう、「hedge/insider」は全員男性だったからねー。

そして「trust」でも生着替えあり。これは全員女性キャストで
結構、気前よくお脱ぎになってました(笑)。トップレス状態の時は後ろを
向いていらっしゃいましたが、ヌーブラはつけてたみたい(笑)。
「hedge/insider」では男性キャストが自分達で脱いだ衣装を片付けたけど
「trust」では女性キャストは衣装を脱ぎ捨ててハケちゃって、後から出てきた
男性キャストが片付ける・・というのが、ちょっと面白かったです(笑)。

舞台は二つの話が並行して進みます。
1つは茂木は学生時代に恋人だった成宮という女性に呼び出され相談を受ける。
大手商社で部長に昇進している女性だけど、部下を連れて起業したい。
そして、あわよくば茂木の会社に支援してもらえないか・・と言う。
ただこの女性が考えているのはフェアトレードのコーヒーを扱う会社。
ベンチャーキャピタルではないから無理と答える茂木に、フェアトレード
部門だけ切り離して、バイアウトする事は出来ないか・・と持ち掛けるが
乗り気ではない茂木。
「あなたの会社の社会的な信用を回復出来てると思う?リターンを期待しない
ビジネスで信頼を取り返すしかないんじゃないの?」と迫る成宮。
結局成宮の起業について、個人としてサポートをしよう、と言う茂木。

もう一つは、マチュリティーパートナーズが再生を手掛けているナイスコール
という通信会社。留学終了後正式にマチュリティーパートナーズの社員になり
この案件を主に担当している谷川悠太郎(原嘉孝)を軸に進みます。
ちょうど携帯電話を持つ人が爆発的に増えてきて、非常に劣勢に置かれた
PHS事業の立て直しをしている・・というところ。
うーん、谷川がいまいち溌溂としていないんだよな・・・。
(厳密に言うと、マチュリティの全員に以前のような覇気がない)
もちろん、バイアウト先のナイスコールの社員の反発を上手くいなして
会議を進めていく様子は、会社員として見習うべき所があるな・・と思いますが。
ただこの「溌溂としていない」事にも、加治の事件が影を落としている・・
という事が分かってきます。

ナイスコールでは思い切った料金値下げ(実際にあったよねー)
情報が他社にもれてライバル会社に出し抜かれ、加治の起こした事件が
蒸し返されます。ここはもう・・・胸が痛い・・・。
うちの会社も20年年以上前に大きな事件を起こしたことがあり、ずいぶん経って
メディアで掘り起こされる・・の繰り返しを経験しているので。
ましてやまだ事件後、数年しか経っていない、という設定ですから。
そんな時に雑誌記者から、情報をリークした犯人の写真データを買い取れ
と谷川は迫られて・・・。

この情報漏洩により雰囲気の悪くなったナイスコール。PHSの今後に
不安を抱き、早く業績を上げて起業再生を果たし、株式を売却しなければ・・
と思う谷川はどんどん追い込まれていき、そんな谷川に井戸田(浅野雅博)
は不安を抱くのだが、谷川も仕事に勢いを失っている井戸田を憂えている。
うん、このヒリヒリした感じ、「hedge/insider」に通じてて、好き。

一方で序盤は成宮が企業しようとしているフェアトレードについての話が多く
何となく緩いペースで話が進んでいきます。
起業の買収、再生・・というハードな話の中で「フェアトレード」という
利益追求ではない話が絡んでくるのと、この成宮達の起業に対する考えの
甘さが、どうにもマチュリティでの内容と比べると「緩い」という印象に
繋がってくるんですよね。
もちろん、この話自体が悪い訳ではないんだけど、こういう女性が苦手
なんだろうな、私・・と思ったりもします(笑)。
結果、このエピソード要ります?ナイスコールの再生だけで良くないですか?
なんて思ったりして観ていて・・。
(恐らく音楽で使われるマリンバの音色や、転換の雰囲気も作用していたと思う)

この成宮の起業話に付き合う中で、茂木はある決意をし、メンバーを招集。
わー、茂木もマチュリティーパートナーズ辞めちゃうのかしら、と思ったら
そうではなくて、年利3%という、マチュリティからすると低利の
ファンドを設立しようと思う、という話。
あの事件をきっかけに、金融を信じる気持ちを失って硬直した自分達が、
加治の意志をついで金融のあるべき姿を模索したい・・と言う。
自分たちが育てていきたいと思う企業を探し出して、その企業の事業に対して
投資してもらう、そんなファンドを作りたい−。

自分たちが失った信用「trust」を取り戻す・・と言う話ではなく、
成長するであろう起業を信用「trust」してもらう、そんな仕組みを作ろうと。
成宮達の話、要りますか?と思っていたのですが、茂木がこういう結論に
至る為には、やはり、必要だったんだな・・・と、ここで納得。
(ただもう少しコンパクトでも良くね?とは思う)

その茂木の話を聞いている時の谷川の表情が、たまんなかったね。
きっと加治が亡くなって、割り切れないものを抱えたまま仕事を続けていて
遠くに出口を見つけて、想いが涙と共に溢れ出す・・そんな表情でした。
原君、いいよ。今後も君の俳優としての成長を見守っていきたいと思ったよ(笑)。
天真爛漫な演技もいいけど、苦悩する演技もとても良かったです。

しかし原君が「PHSって何ですか」って茶々入れるシーンを見て
「おお、今の若者はPHS知らんのか・・」とちょっと軽い衝撃でした(笑)。
「もう止めときな、PHSは2020年にサービス終了しちゃうんだよ」と
めっちゃ伝えてあげたくなったな(笑)。
そして「hedge/insider」ではあれほど丁寧に経済用語の説明があったのに
こちらではFxやらレバレッジとかの用語は、全く説明無いのねーというのが
ちょっと笑えたりしましたけど(私は谷川的に言えば“嗜み程度”に投資を
しているので、その辺りは普通に分かりましたけどね・・・)
その代わり(?)にフェアトレードについては説明が多くて、おかげさまで
コーヒー豆のフェアトレードについては詳しくなりました(笑)。

これは単独でも分かると思いますが、「hedge/insider」の後に観てこそ
その背景にあるものが感じられるし、あの頃との違いに想いを馳せたり
出来るのでやはり、時系列的に観ていって正解でした。
(劇団側も、Aプロ→Bプロで観るのを推奨していたと思う)
Aプロは「えっ、これで終わるの?」という衝撃はあったけど、通しで観て
納得感もあったし、満足感が高かった作品でした。
原君がジャニーズなので難しそうだけど、これ、映像化して欲しいなぁ。
(DVD化の予定はない・・みたいな記載を見た記憶がありますが)

この作品を通しで観たおかげで新感線は終電になり、自宅帰宅は日付が
変わるころ・・となっちゃいましたが、観てよかった!!と思える作品でした。

そうそう。
この公演も終演後は「規制退場」だったのですが、すごく自律的でした(笑)。
通常はアナウンスで「〇列~〇列の方、ご退場下さい」と周知されたり、
係の方が「では〇列の方、おかえりください」と促してくださるものですが
自分達で「後ろの列が居なくなったら、立ち上がって帰る」という事が
スムーズに出来ていて驚いちゃった。
いや、それぐらいは大人なんだから出来て当たり前でしょ、って言われたら
身も蓋もないんですけど、細かく指示されなくても出来ていて、何だか
逆に「きちんとしなきゃ」って思わせられるし、気持ちよく退場出来ました。
他の公演でも、こうであって欲しいよね・・・。