8時前からジムでゆるゆると筋トレして、近鉄の「火の鳥」
に乗って向かったのは大阪上本町。この作品の2度目の観劇の為です。

フェイクスピアNODA・MAP第24回公演「フェイクスピア」
新歌舞伎座 1階13列  13:00開演、15:10終演
作・演出:野田秀樹
出演:高橋一生、川平慈英、伊原剛志、前田敦子、村岡希美、白石加代子、野田秀樹、橋爪功
【あらすじ】
舞台は青森の恐山(おそれざん)。“イタコ”見習いの「皆来(みならい)アタイ」(白石加代子)が50回目のイタコ名代の試験を控えていた。そこでアポイントをダブルブッキングしたことで出会うmono(高橋一生)と楽(橋爪功)。彼らは話の途中で、シェイクスピア四大悲劇のセリフを語り始める。彼らは何者なのか、そしてmonoが持つ小さな箱は何なのか・・・。



東京で開幕してすぐに観劇したのですが、やはり1度で理解出来た・・
とは言えなかったし、白石さんが万全の時に観てみたい!と思って
(私が観た時は調子が悪く、台本をもって舞台に立っていた)
大阪公演のチケットも取っておりました。
新歌舞伎座は、大阪上本町の駅すぐなので、近鉄特急に乗ると
本当に直行直帰(笑)。
少し寂しいですけど、今のこの世の中にはちょうどいいのかもしれません。

1度目の観劇時には役者さんについて少し書いたので、今回は
それ以外について。
公演は終わってますが、感想はネタバレしまくりです。





この作品が「フェイク」と「シェイクスピア」に関連するものであろう・・
とは想像出来ていたのだけど、1度目に観た時は開幕直後だったという事もあり、
「日航機墜落事故」に関するものであるというのは、劇中の途中から
気づいたのでした。なので、きっともっと最初から色んな伏線があるだろう・・
と思って戯曲も読んだうえで、2度目の観劇に挑みました。

■序盤から複線だらけ
・オープニングから森で「大きな音を立てて大木が倒れていく」シーン。
・何かが擦れたような汚れた床(地面)
・イタコの予約が「8月12日」の「午後6時58分28秒」だったこと
 →日航機墜落の時間
・「永遠と36年前」→事故は36年前
・『頭をさげろ』『もうだめかも分からんね』『どーんといこうや』のセリフ
・そもそもこの公演が「5月24日から」だったのですが、日航機の
 乗客乗員が524名だった事を考えると、偶然??と思ってしまいます。

この事故が起きた時は私は中学生で、夏休みでテレビを見ていた時だったので
とても良く覚えています。
丁度再放送中だった「スチュワーデス物語」が打ち切りになった印象も強いし
生存者の女の子がヘリコプターで救出される瞬間の映像や、
写真週刊誌が遺体を無修正で掲載して問題になった(かつ売り切れてた)事も。

なので私が「もしや?」と思ったのは、「どーんといこうや」という
セリフが出てきたとき。(結構遅い・・・・)
こんなにも色々な伏線が散りばめられていたというのにね。

■シェイクスピア
シェイクスピアが「フェイク」のメタファーなのかしら?と最初は
思ったのだけど、シェイクスピアは「フィクション」であって、フェイクとは
ちょっと違うよねぇ・・と思っていたんですよね。

楽とmonoが次々と演じる(?乗り移られる?)のは、シェイクスピアの「悲劇」。
でもこの二人が「本当に『呼んだ悲劇(四代悲劇)』」はハムレットだった。
不慮の死を遂げた父親が、亡霊となって息子にメッセージを伝えに来るアレ。
楽も「(線路に)飛び込むべきか、飛び込まざるべきか」と悩んでたし。
そうか、その部分とこの作品が一番リンクしているのだな、と納得です。

アブラハムと三日坊主がローゼンクランツとギルデンスターンと言う例えも
この後の展開を考えると上手いなぁ・・と思いますしね。


■星の王子様
「一番大切なものは目に見えない」で始まる星の王子様。
目に見えない大切なもの=箱の中にあるコトバ、声。

皆来アタイたちイタコは「声が聞こえればそこに人が現れる」って言っていた。
なので、monoの声が聞こえたから、姿が見えるようになったのかな。


■フェイク
色んな捉え方があるんだろうな・・と思うのですが、私が「言葉、フェイク」
で真っ先に思い出すのは、ネットに書き込まれたコトバであったり、
一部だけを切り取って拡散/報道するマスメディア。
野田さんご自身も、昨年のコロナ禍における演劇の在り方をコメントし
めっちゃバッシングされていました。
ただあれも、捕らえ方、報道の仕方でそう仕向けられた部分もあると
いう気もしており、野田さん自身もその難しさを痛感されたのではないか
と思っていたから。

本編にも「言ったが勝ち」「書き込んだが勝ち」「それがコトバの価値」
と言うセリフもあり、符号する部分も多い気がします。

当時も「どーんといこうや」と言う言葉だけが切り取られて報道され、
亡くなった機長が非難されるだけでなく、機長のご家族にもその非難の
矛先が向いていた、という事も何となく覚えてます。
そして、何年か経った後で特番で、ボイスレコーダーの音声が公開され
「どーんといこうや」も含めて、機長が最後まで諦めずに指示を出していた
中での言葉であり、決して不謹慎とか、軽率とか、そういうニュアンスでは
無いのだ、と伝えられたんでした。当時の特番を見て私も「そうだったんだ」
と思いましたから。

■そしてラストシーン
ここはもう、まさに「息がつけない」の一言に尽きる。
特に1度目の観劇時は、2階席からだったため、椅子に座っている
乗客達の動きであったり、全体が大きく揺れ動く事で飛行機の状態を
表しているさまであったり、見事としか言いようがありませんでした。
そんな中でも、務めて冷静であろうとする機長を演じた高橋一生さんは
とにかく素晴らしい。(前回も書いたけど、大事な事なので2度書く。)
2度目も素晴らしかったけど、このシーンに限って言えば、2階席から
観た時のほうが、インパクトが大きかったと思う。

自殺まで考えた息子が、父親が残した「コトバ」で「生きるよ」と
言わしめるだけの力を感じるシーンでした。
ここで結構泣いている方が周りにいらっしゃいましたね。

ただ驚いたのが「頭を上げろ」のセリフ。
ボイスレコーダーで機長(父)としては「機首を上げろ」と言う意味で
使っていたのを、「下を見ずに顔を上げろ」というニュアンスで使った事。
正直、1度目に観た時には、この言葉の使い方には少し抵抗感があった
のも事実なんですよね。
何ていうかな・・・この事故の関係者の方が、この言葉の使い方を知って
どいう言う印象を持たれるんだろう、とモヤモヤしたというか。
なので私個人としては「素晴らしい!」と言う気持ちではないんですが
ただ、この場でこのセリフを持ってくる野田さんはすごいと思いますし
それだけインパクトがあったのも事実だと思います。

あー、これは間隔をあけて2度観て正解だったなー。
戯曲も読んでよかったなーと思いました。(野田さんの戯曲は結構読む。)
丁度このエントリーを書いているのは8月12日。
コロナとか、オリンピックとか、色んな事があるけど、やっぱり
この事故の事は忘れちゃだめだよね・・・と思いつつ、WOWOWでまた
再見して何か新たな発見がある事を楽しみにしています。