12月は日帰り遠征1回のみ。
元々土曜日は仕事の依頼が入っていたため、やむを得ず前日の金曜日しか
チャンスが無かったので、無理やり出かけてきました。

doubt「ダウト〜疑いについての寓話」シアター風姿花伝 B列(最前列)
14:00開演、15:45終演
脚本 ジョン・パトリック・シャンリィ 演出:小川絵梨子
出演:亀田佳明、伊勢佳世、津田真澄、那須佐代子
【あらすじ】
舞台は、NYのブロンクスにあるミッションスクール。体育と宗教の授業を受け持つ30代後半のフリン神父と、学校長のシスター・アロイシスは、水と油のような関係だ。フリン神父は、体育教師として生徒と一緒に汗をかき、仲間のように振る舞っている。説教がうまく、同僚のシスターたちからの評判も悪くない。一方、校長は規律を重んじ、生徒たちと距離を置き、感情などに左右されず、厳格な態度で仕事をこなしている。ある日、校長の耳に「疑惑の種」がもたらされる──フリン神父が男子生徒と不純な関係を持ったかもしれない、というのだ。しかもその相手は、学校で非常に立場の弱い、唯一の黒人生徒。校長にしてみると、始業式の日に神父が別の男子生徒の手首に触れたことも、神父が爪を長くしていることも、紅茶に砂糖をたくさん入れることも、どんな些事もすべて気に障る。「疑い」を持った者と持たれた者の直接対決は、双方とも一歩も譲らぬままに、激しい言葉のバトルが続いていくのだが……。


 


ここ数年ずっと観てきた、シアター風姿花伝プロデュースの作品。
しびれるキャスティングですよね。
「2004年ブロードウェイにて、ストレートプレイとしては異例の
一年以上のロングラン上演を記録し、ピューリッツァー賞、トニー賞
最優秀作品賞など数多くの演劇賞を受賞した作品」なんだとか。
でも、実際に観て「なんか、こういう話多くない?」と思って
後から調べたところ、映画化されていたんですよね。
そして、それを私は観ていたので、「似た作品を観た気がする」と
思ったみたいでした(笑)。←サブタイトルが微妙に違うのよ・・・
(映画ではフリン神父をフィリップ・シーモア・ホフマンが演じて
いたんですよねえ・・・懐かしい)





結果として映画でも観ていたし、他の作品でも神父などによる
性的虐待の問題については何度も語られていたので、違和感が
無かったのですが、その辺りのベースを知らないと、「ん?」と
思っちゃうかもしれませんね。

あるミッションスクールで、生徒たちから人気のある、フリン神父が
生徒に性的ないたずらをしたのではないか?という疑念が持ち上がる。
シスターは神父を「クロ」だと決めつけて追い詰めようとするが
状況証拠しかなく、「クロ」なのか「シロ」なのか、はっきりしないまま
2人の言い争いに観ている方も振り回されていく・・と言う内容。
映画化されたとはいえ、もともと舞台作品という事もあって
非常に見応えのある作品でした。映画はそれほどでもなかった
という記憶なのですが、この作品はめっちゃ面白かった。

とにかく役者さんがいいんですよね。
まずフリン神父を演じたのは亀田佳明さん。体育の授業も担当する
という事で明るくて元気で、進歩的な(合理的な?)考え方の先生です。
映画版はもう少しネットリした感じだった気がするのですが、割と爽やかで
好青年!という印象の神父です。
しかし、リアクションのない小劇場の客に向かって、あのテンションで
演技するのって、どんだけ大変なんだろう・・って思っちゃう。
そして、シスター・ジェームス(伊勢佳世)と話しているときのフリン神父が
とても素敵で(笑)、思わず惚れてしまいそうになりましたね。
教える事の楽しさ、教師として生徒に親身になる事の大切さって、
今の時代であれば当たり前の事だと思うんですが、当時はそうじゃない
(少なくともシスター・アイロスはそう考えていない)事を考えると
堂々とそれをシスター・ジェームスに説いているのって、素敵ですから。
そんなフリン神父が、権力的にもシスターよりも上のはずなのに、
追い詰められて汗だくになっていく様子はすごかったなぁ・・・・。
それまで「シロ」と思っていたけど「黒に近いグレーなのかも」と
私達に思わせるに十分な演技です。亀田さんすごい。

そして追い詰めるシスター・アイロスは那須佐代子さん。
映画の感想を振り返ってみたら、シスター・アイロスは「大竹しのぶ
さんがいい」みたいなことを書いてましたが(映画ではメリル・ストリープ)
当時は那須さんの事を存じませんでしたから、許してください(笑)。
那須さんもこういうギャンギャン言う役、良く演じられていますけど
お上手ですよねぇ。畳みかける話し方の迫力、凄い。
ボールペンの使用も、お砂糖をお茶に入れる事も、生徒と仲良くする事も
何もかも認めない、厳格なシスター。
「わぁ・・、こういう思い込みの強い人って苦手だわぁ」と思わせるんですが
最後に「あ・・・もしかして、このシスターの直感、正しかったの?」
って展開に驚きます。もともと結婚していた時期もあったという事だから
自分にも他人にも意図的に厳しくあろうとしているんだろうな、と
思わせるような人でした。

少し気が弱くて歴史好き、生徒にも歴史を好きになって欲しいし、
教えることが大好きなのに、「生徒に厳しくしろ」と言われて悩む
シスター・ジェームスは伊勢佳世ちゃん。
もう・・・笑っちゃうくらい弱弱感に溢れております。
ちょっと猫背っぽくして、歩き方も内股で歩いてて(笑)。
ただこの一連の騒動で彼女は成長していっているんですよね。
元々劣等感のある人っぽいからシスター・ジェームスに言われた事を
忠実に守るのが全てだったけど、自分がどうしたいかという事について、
考えられるようになり、しっかり軸が出来ていく。
それについれて、シスター・アイロスとの関係性も変わっていったのも、
面白い所でした。


あと、ミラー婦人(いたずらされたとされる子の母親)もすごい。
恐らく、ポリコレを意識しているのではないかと思いますが、彼女が
ぱっと見では黒人だって分からないんだよね・・そういうメイクじゃないから。
でも、「たとえ(性的いたずらが)事実であったとして、それが何ですか」
って言いだしたときにはちょっと驚いたよ。
でも結局は「それでも、息子は親しくしてくれる神父が居て喜んでいた」
って、教師とは違う視点で、その意見も新鮮だったし、母親の子供に対する
絶対的な愛情を感じたわ。

ミラー婦人とシスター・ジェームスとの言葉の応酬もすごかったし
シスター・ジェームスとフリン神父の応酬もすごかった。
こんなのを目の前で観られるって、凄い幸せ・・・。と思える作品。
結果的に、フリン神父がシロなのかクロなのかは描かれないので
私達が想像する事しかできないのだけど、「シロ」と思っていた自分が
作品の進行と共に「クロ」に傾いていくのも面白かったし、シスター同士の
関係性の変化に想いを巡らすのも面白かった。

ガッツリ演劇としての面白さが堪能できたと思う1本で大満足でした。

そして帰りには、コーヒーのサービスも。
(シアター風姿花伝の1階にコーヒースタンドを設立する!という
クラウドファンディングがありましたよね。そのコーヒースタンドの模型も
飾られていました)
座って飲むような場所が無いので、みんな1階で立ち飲みでしたけど(笑)
美味しいコーヒーで、ホッコリさせて頂きました!
2022年もまた、風姿花伝プロデュースが上演され、自分も観に来れますように。