チケットを取ったものの、スケジュールが微妙で一度は諦めようと
思った舞台です。友人は中止公演に当たってしまって観られなかったので、
ありがたく拝見しなければね。

奇蹟「奇蹟 miracle one-way ticket」
世田谷パブリックシアター F列(最前列)
14:00開演、15:45終演
脚本:北村想   演出:寺十吾
出演:井上芳雄、鈴木浩介、井上小百合、岩男海史、瀧内公美、大谷亮介
【あらすじ】
男の名は、法水連太郎(井上芳雄)。警視庁などのコンサルタントも務める私立探偵である。そして、何かとこの探偵を支えてきたのが、高校時代からの親友で、現役の医師である楯鉾寸心(鈴木浩介)だ。ある時、探偵が残した「キキュウの依頼あり、出かける」との書き置きを見て、楯鉾は彼を追いかけ、深い森へと迷い込んだ。そこで、傷を負い深い眠りについた探偵・法水を見つけ出したのだが、目覚めた探偵は楯鉾の事も、依頼の内容も、依頼人も、自分自身の事も分からなくなっていた。記憶を失くした名探偵とその親友は、出口の見えない森の奥深くへ歩を進める…。そこに次々と現れる謎に満ちた人々は、現実なのか、はたまた忘却の記憶が生んだ幻なのか…



今回は「F列」で、「5列目か6列目かぁ」と思っていたら
舞台が結構せり出してきていて、F列が最前列でした、ビックリ。
センターだし、メチャいい席でした。



 


まず舞台が始まると、鈴木浩介さん扮する楯鉾寸心が一人で舞台に立ち、
非常に軽妙なトークで自己紹介をしていきますが、
「昨今のコロナ禍」と言っているし、「チームバチスタ」なんて単語も
あるので「現代」で話している事になります。
楯鉾さんは脊椎神経疾患外科医であるという事で、「脳」と「精神」について
分かりやすく説明してくれます。
「えっと・・・私って何を観に来たっけ?」
って思うんですが、とにかく鈴木さんの語りが上手いものだから、すっかり
見入ってしまっておりました。
「ガラスの動物園」のように、語り手をしつつ、劇中の役も演じるんだ、
という事を伝え、書割のような絵と同じような考え込むポーズをとって
それから物語が動き出します。今から思うと、この序盤が一番面白かった(爆)。

ベッドに眠ったパジャマ姿の井上芳雄氏は法水連太郎で、シャーロックホームズ
のようなポジション、楯鉾さんは、法水さんの友人でワトソン役らしい。
ただ、法水連太郎は怪我をした事が原因なのか、自分が誰なのか、楯鉾が
誰なのか、何のためにここに居るのか・・が分からなくなってしまっている、と。

依頼人は法水連太郎に会いに行くと言って失踪をしているらしく、
法水連太郎は自分の意志でここまで来たらしい事は分かるのだが、それ以上は
思い出せず・・・という流れ。
色々な要素が出てきたけど、何だか謎解きに関しては分かったような、
分からないような・・・やっぱりよく分からなかった。
パーツごとには分かるんだけど、全体を繋げてみたらよく分かなくなった
という感じかなぁ。
まあ「奇蹟」に関しては以前観た映画「ルルドの泉」を思い出しました。
ここはね、なかなかキリスト教に関する知識が無いと、ピンとこない
よなぁ・・とは思います。

あ、照明でホノグラムっぽく見せるのはすごかった。
セットが書割みたいな単純化されたものだったので、より際立ったというか。

それにしても、この作品では井上氏がなぜか突然歌いだすんですよね・・・。
なんか「せっかく井上芳雄が出るなら、歌わせなきゃ損!」とでも思ってる?
と勘ぐってしまう程。
もちろん、井上氏はミュージカル業界のアイコン的存在ですから、そりゃ
やむを得ないよね・・と思う部分もあるし、こちらは「歌が聞けてラッキー」
と思う部分もあるんだけど、他のミュージカル俳優がストプレに出た時に
ここまで歌わされるだろうか?この舞台以外も殆ど歌ってません?
「歌がアイデンティティ」であることは確かだろうけれど、井上氏本人は
それでいいと思ってるのかなぁ・・かえって彼の可能性を狭めてない?
等と、しみじみ考えてしまいました。
(「首切り王子と愚かな女」のような、歌が必然と思える場合はいいですし
こまつ座も歌ありきな作品だとは思いますけども。あれ、そうする別に
多くはないのかな?)

「日本文学シアター 」じゃないから大丈夫かな・・と思ったけど、やっぱり
ダメでしたねぇ。最後のあの大団円ぶりは拍子抜けで笑っちゃうほど。
これからは、ちゃんと学習しようと思った1本でした。