本当なら朝ランしてから行きたかったのですが、雨が降っており
朝ランは諦め、少しゆっくりめに新幹線乗車です。

奇跡の人「奇跡の人」東京劇術劇場プレイハウス D列
12:30開演、15:50終演
脚本:ウィリアム・ギブソン  演出:森 新太郎
出演:高畑充希、平祐奈、村川絵梨、井上祐貴、山野海、森山大輔、佐藤誓、増子倭文江、池田成志、倉澤雅美、中野歩、秋山みり、小林佑玖、荒井天吾、鈴木結和、石塚月雪
【あらすじ】
アラバマのケラー家。アーサー・ケラー大尉(池田成志)とその妻ケイト(村川絵梨)の1歳半の娘ヘレン・ケラー(平 祐奈)が熱を出して以降、ヘレンは見えない、聞こえない、しゃべれない世界を生きている。そして、それゆえ甘やかされて育てられたヘレンは、わがまま放題。まるで暴君のように振る舞うヘレンを、家族はどうすることもできない。そんな折、ボストン・パーキンス盲学校の生徒アニー・サリヴァン(高畑充希)の元に、ヘレンの家庭教師の話が舞い込んでくる。アーサー、そしてヘレンの義兄ジェイムズ(井上祐貴)は、余りにも若い家庭教師に疑念を抱くが、ケイトだけはアニーに望みを掛ける。そして、アニーとヘレンの初対面の時。ヘレンはアニーに近づき、その全身を手で探る。それはふたりの闘いのはじまりだった……

 

この演目を観るのはもう何回目かなぁ。
森さんの演出が3回目という事なのですが、鈴木裕美さんの演出も
2回ぐらい観ていたと思うので、5回目って事になるのかな?
高畑さんは初めて森さんが演出された時はヘレン役でしたね。
東京芸術劇場のプレイハウスとは相性が悪くて、いつも
中通路よりも後ろの席ばかりなんですが、今日は久しぶりに
前方席でしたね・・・。
(どちらかと言うと上手側なので、ポンプからは遠い)





窓やドアが幾つもついた、高い壁と、奥に行くほど高さが低くなっている
奥行きを感じられるセットは、森さんの演出になってからはずっと同じ。
犬をパペットにするのも、森演出になってからは同じです。
(本当にすごいんだよね、このパペットの動きが。)
きっと、脚本も同じでしょうから、そういう意味での新鮮さというより
キャストが変わる事で生まれるものを楽しむという事と、単純に
この作品を楽しむ、というのが目的で観に来ている感じです。

今回もサリバン先生は前回公演に続いて高畑充希さん。
実際のサリバン先生の年代に近く、苦悩しながらヘレンに対峙する、
弟を守れなかったトラウマを抱える、経験の浅い先生、というのは
イメージ通り、です。
もっとも、私がこの作品を何度も観ているからそう思うのであって、
一般的にはもっと年齢の上の、慈愛に満ちた先生・・のイメージが強い
のかもしれないな・・とは思いますが、これが実際のサリバン先生に近い
んだろうな・・・と思います。
前回は「おお、こういうサリバン先生か」と思う気持ちも強かったし
高畑さん自身も初めてのヘレンからサリバン先生に変わったという
事もあり、手探りだった部分もあったと思いますが(それはそれで
劇中のサリバン先生に重なる部分があって良かった)、今回は
サリバン先生の輪郭がしっかりしている!と感じましたね。
助けてあげられなかった弟に縛られていたサリバン先生。
弟を助けられなかったのに、先生としてヘレンを助けようとしている事や
ヘレンに「コトバ」の意味を分かってもらえた達成感を感じつつも
その喜びと反比例して弟に対する罪悪感が増し「また弟の声が聞こえるかも」
と脅えてしまう。けど、結局は何も聞こえなくて、やっと自分を許す事が
出来たんだな・・と思えるシーンが一番印象に残りました。

今回のヘレンは平祐奈さん。お名前とか、平愛梨さんのご姉妹だ、
という事ぐらいは知っていましたが、逆にそれぐらいしか存じ上げず
実年齢がどれぐらいの方かも分かっていませんでした(23歳だったらしい)。
・・・良かったですね、初舞台だという事に驚きました。
あの有名なテーブルマナーを教えるシーンは、すごい迫力(これは毎回だけど)
なんだけど、としても息が合っていて、ダンスと言ったら言い過ぎだけども、
凄く噛み合ってる、と思いました。
ちょっとヘレンの年齢(7歳)にしては、平さんのヘレンは
表情豊かというか、7歳には見えないなぁ・・(サリバン先生を閉じ込めた
部屋の鍵を口から取り出し捨てちゃう時の表情なんか、意地悪な
中学生みたいだった(笑))と思ったりはしましたけど、23歳であれだけ
7歳の演技に違和感が無いんだから、凄いよねって思います。
平さんのヘレン、歴代のヘレンの中でもかなり好きな方です。

後、特筆すべきは、池田成志さんのお父さんね。
私が成志さんが好きだから注目しちゃってた、ってことはあるかもしれない
けれども、歴代のお父さんの中でも、かなり好きな方でした。
ちょっとプライドが高い、伝統的な南部の男性。
悪気も無いけど、根本的に解決するのを諦めてしまって、易きに流れるし
自分が悪者にもなりたくない・・っていうね。

お母さんを演じられたのは、村川絵梨さん。何度も拝見しているんですが
この役でキャスティングされたのはちょっと意外だったなー。
(あんなに身長が高いと思わなかった)
前半はあまりインパクトもないし、印象弱いな・・としか思わなかった
んですけど、サリバン先生と一緒に成長していき、最初は感情的だったのに
最後の方では強い意志を表現出来ていて、家族の中では一番成長したんだな
と思える方でした。

お兄ちゃん役がねぇ・・・悪くは無いんだけどインパクト弱かったかな。
飛べなかった跳び箱が1回飛べた・・ぐらいの成長感、かな(笑)。

ちゃんと観てると、指文字も分かるんだよねぇ・・・。
「あ、今は「CAKE」だ」とか見てて分かりました。
そして最後はかなり派手に客席に水を飛ばしていらっしゃいましたね。
どうせなら、水かぶり席に行きたかったな(笑)。

同じ芝居を上演されるごとに観に行くと、毎回響く場所だったり、泣ける
ポイントが違ってて、それが面白いなぁ・・と思うんですが、今回は
割とノーマルに、最後の二人が手を携えて家の中に入っていくシーンで
じーんとしました。
何年か前にアブラクサスの舞台で、成人後のヘレンを扱った作品を
観ていた事もあって、「これから、この家は没落していくんだなぁ・・」
等と思いながら観たのも、また感慨深かった要因だと思います。

また何年かしたらきっと上演される作品なんじゃないかな、と思いますが
きっと観に行くと思いますし、それが楽しみな作品です。