今月は金曜日に有給休暇を取って、金曜日から遠征。
感染拡大してきているし、寄り道せず、ホテルにチェックインして
荷物を置いて劇場へ。ホテルが本社のすぐ近くなものだから
(で、昼休みの時間帯にウロウロしてたから)誰かに会ったり
しないかとヒヤヒヤしましたよ。別に悪い事はしていないんだけど。

室温「室温〜夜の音楽」世田谷パブリックシアター J列
14:00開演、16:30終演
作:ケラリーノ・サンドロヴィッチ  演出:河原雅彦
出演:古川雄輝、平野綾、坪倉由幸、浜野謙太、長井短、堀部圭亮 他
【あらすじ】
田舎でふたり暮らしをしているホラー作家・海老沢十三(堀部圭亮)と娘・キオリ(平野綾)。12年前、拉致・監禁の末、集団暴行を受けて殺されたキオリの双子の妹・サオリの命日の日に、様々な人々が海老沢家に集まってくる。巡回中の近所の警察官・下平(坪倉由幸)、海老沢の熱心なファンだという女・赤井(長井短)。タクシー運転手・木村(浜野謙太)が腹痛を訴えて唐突に侵入し、そこへ加害者の少年のひとり、刑務所から出所したての間宮(古川雄輝)が焼香をしたいと訪ねてくる。偶然か…、必然か…、バラバラに集まってきたそれぞれの奇妙な関係は物語が進むに連れ、死者と生者、善と悪との境が曖昧になっていき、やがて過去の真相が浮かびあがってくる…。



2001年のケラさんの作品を河原さんが演出する・・というもの。
ケラさんの作品には興味はあるものの、キャストがどうも
そこまで惹かれなくて、殆どの先行をスルーしていたのですが
随分後の劇場先行のお知らせをたまたま目にしたのと、
ちょうどこの遠征時期に重なるという事で、チケットを取ってました。

1階席が85%ぐらいの埋まり具合。
2階席や3階席は数える程しか客が入っていなくて、世田谷パブリックシアター
でこんなに寂しい感じって、あまり目にしないなぁ・・と。






「少し前のケラさんの作品!」っていう感じの脚本でした。
よくもまあ、こんなに複雑な人間関係を考えるものだ、と(笑)。

・ホラー作家・海老沢十三(堀部圭亮)は田舎に籠って娘のキオリと
2人暮らし。事件によって娘の1人を殺されており、その時の心情を
本にしていたりもする。その娘のサオリに性的虐待を加えていた。
ホラー作家でスピリチュアルなものを書いているが、実はそういった
心霊現象は信じていない。
・娘・キオリ(平野綾)は父が妹のサオリに手を出していた事を
知っていて、密かに父を憎んでおり、父を亡きものにしようと密かに
何かをお茶に混ぜて飲ませていたりする。父に入院させられた母親を
退院させるべく、色仕掛けで金策に走っている。
・娘・サオリ(平野綾)は若い頃にレイプされ、熱湯をかけられ
切りつけられ、売春させられ、最後には建物に火をつけて焼死させられている。
犯行グループの1人が自首したことがきっかけで犯人は逮捕されている。
・近所の警察官・下平(坪倉由幸)は何故か海老沢家に入り浸って
いるが、キオリに迫られ、警察の経費を横領させられている。
最近妻の不倫を知り、自分の子だと思って育ててきた子供が他人の子
だった事を知る。不倫相手の子供を殺し、不倫相手に復讐をする。
・海老沢のファン・赤井(長井短)は、実は著者のファンではなく
海老沢の書いた書籍を読んで自殺を図った、被害者・サオリを殺した
主犯の親族。海老沢へ復讐しにやって来ていた。
・出所したての間宮(古川雄輝)はサオリ殺害の実行犯の1人だが
サオリの元カレでもある。サオリが焼死させられる前に父に電話をしたし
早々に自首しており、出所後すぐに線香をあげにやって来た。

・・・書き出してて訳分からなくなりそう(笑)。

出てくる人にはそれぞれ「表の顔」と「裏の顔」があるんですよね。
例えば海老沢家で言えば・・・

娘の死を悼む父という顔の裏には、性的虐待をし、間宮が放火を
知らせてきたにもかかわらず、助けに行かなかった醜い男の顔。
父と一緒に田舎で静かに暮らしている娘という顔の裏には、妹の
復讐をし、母を退院させるために何人もの男をたらしこんで破産
挿せる魔性の女の顔が。

1幕最後にはキオリが「ここは私の家ですよ、私とサオリの。」
と言っていて、その時には「なぜ父親が出てこない?」と思ったり
した、微妙な「?」が2幕でそれぞれの裏の顔とそれぞれの繋がりが
分かっていき、物語の全体像が見えるんですよね。

しかし、古川くんが加害者ってなんかピンとこないなあ。
確かに「純粋な悪役」って訳では無くて、付き合ってきたサオリが
理解出来なくなってきてしまい、その反動でそういう犯行に居合わせた
だけ、っていう感じでもあるので(厳密には、暴行をする事で
サオリから悪いものが出ていき、自分の知っているサオリに戻る
っていう、悪魔祓い的な受け止め方をしていたみたいだが)
「殺人犯」というよりは、恋人を信じられなかった、残念な男
という立ち位置ですね。

最後には誰もいなくなっちゃう・・っていう、残酷というかグロい
話ではあるんだけど、燃える海老沢家に現れたのは、キオリではなく
サオリで、生前約束即していた「いつまでも一緒」を叶えて終わる。

まあ何とも見ごたえのある話です。
しかし、平野綾さんが思ったよりもずっと良かったのが嬉しい誤算。
感情が全く無い話し方をしていて不気味だったんだけど、この方は本当に
歌っていたり、セリフを話しているときにはちゃんとした声で話せるのに
何故普段はあんなんなんでしょうね(笑)。
カーテンコールで歌ってくれて、彼女のハイトーンボイスが凄く良かった!

なかなか集客当面では厳しいキャストだったのかもねー・・と
思いますが、バランス良かったと思いますけどもね。

そう言えば最近ケラさん、こういう感じの話は書かなくなりましたね・・
と懐かしい気持ちで拝見致しました。
観ようかどうしようか迷いましたが、行っといてよかったです(笑)。