何だか難しそうな作品だな・・・と思いつつも、この二人の舞台なら
やっぱりちょっと観てみたい。

建築家とアッシリア皇帝「建築家とアッシリア皇帝」シアタートラムE列
13:00開演、15:50終演
作:フェルナンド・アラバール  上演台本・演出:生田みゆき
出演:岡本健一、成河
【あらすじ】
 絶海の孤島に墜落した飛行機から現れた男は自らを皇帝(岡本健一)と名乗り、島に先住する一人の男を建築家(成河)と名付けて、近代文明の洗礼と教育を施そうとする。お互いの存在を求め合いながらも、ぶつかりあう二人。そのうち二人は、いろいろな人物の役を演じはじめ、心の底にある欲望、愛憎、そして罪の意識をあからさまに語り出す。その行為はやがて衝撃的な結末を生みだすきっかけになっていく……。



立ち見のお客様もかなり入っていて、話題作なんだろうな・・
とは思うものの、やっぱり「私に分かるかしら」とドキドキ(笑)。





まあ・・分からなかったよね(笑)。「難しい」っていうより「分からん」
っていう感想。色々と感想が書かれているサイトを巡回してみたけれど、
解説してくれているような所は無くて。

作者のフェルナンド・アラバールは父親が死刑宣告されるなど
かなり波乱に満ちた生涯を送られている方のようですが、作風としては
「ユーモアとサディズムと夢想を織り交ぜた作風」が特徴なのだとか。
「不条理とエロティシズム」と書かれている方もいらっしゃいますが
それらはどれも、この作品に当てはまります。
不条理かー、不条理だったらもう「理解しよう」と努力するのではなく
その場を楽しむというか、流れに任せて観るのが吉だな・・と
「理解しよう」という努力は途中から放棄しました(笑)。

孤島に先住民の男(成河)が一人住んでいて、太陽を操ったりできる
不思議な力を持っていたんだけど、そこに墜落した男(岡本健一)が
鞄一つを持って現れ、自らを「アッシリアの皇帝」と名乗る・・と言うお話。

皇帝は男に言葉を教え、男を「建築家」と呼び、様々な事を語って聞かせる
のだけど、この「皇帝」はどうやら自称らしい。
話の内容から、会社勤めをして居たっぽいくだりも出てきたりする。
圧倒的な上下関係があった序盤から、徐々に対等な会話が出来るようになり
ついには、男が皇帝の過去の過ちを芝居仕立てで暴いていく。
罪の意識に苛まれた皇帝は、自ら殺される事を願い、自分を「食べて欲しい」
(おえぇぇ)と願い、男はその願いを聞き届ける。
その頃には、男が持っていた不思議な力も無くなってしまっているのだけど。
見た目もすっかり皇帝になりきってしまった男の元に、また新たな
皇帝が表れて幕−みたいな話。(端折り過ぎだけども(笑))
「おお・・・・不条理劇だ・・」っていう終わり方ですかね。

ただ、人は孤独に弱いんだろうな、とか、誰かと話したりする事に
慣れた後で一人になるって、結構ダメージ大きいんだよな、と思ったり、
所々にチクチクとしたものが潜んでいる感じの作品。

だいたい2人芝居で3時間弱って長いですよ。
そして、皇帝の過去の罪を暴くという事で、仮面を被って様々な役を
演じ分けたりもするので、単純な二人芝居よりももっと難しい。

こういう、現実離れした内容をリアリティをもって演じるって、ある意味
演技で観客をねじ伏せていく、みたいな所があると思うんだけど、
それに加えて、二人芝居だから、二人のパワーバランスも大切でしょ。
今回はそれぞれの演技も、かつ二人のパワーバランスも絶妙、っていう感じ。
最初から妄想なんだか、法螺なんだか分からない言葉の応酬だったのが
どんどんと現実的な話に流されていく、っていうのも、見ものだったなー
と思います。(そして新たな皇帝が登場する事で、きっとまた同じことが
繰り返される=人の醜い側面というものは、誰にでもある抗えない
もののように感じたり・・・)

岡本さんがおまるにまたがったり、ブラをつけてガーターベルトしたり
なんてシーンもあったりするんだけど、何だか素直に受け入れられちゃ
ったなぁ、って言うのも驚いた所。

芝居の内容はよく分からなかったけど、役者のお2人は「さすが」で
このお2人が凄い、という事はよく分かりましたし「分からなかった」けど
眠くなったりする事は無くて、圧倒されたな・・という作品でした。
でも、こういう作品をきちんと理解できたら、面白いんだろうなあ。
何となく感じるところ、思う所はあっても、私ごときではそこが
言語化出来ない、という事に改めてもどかしさを感じた1本でもありました。